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INTERVIEW

Overseas

THE TING TINGS

 

THE TING TINGS

Member:山口 智男

Interviewer:Katie White (Vo/Gt/Ba/Dr) Jules De Martino (Dr/Vo)

-ドラム台が前に出ているステージのセッティングもおもしろいですよね?

J:スタッフ泣かせではあるんだけどね(笑)。ドラムをあれだけ前に持ってきちゃうと、ドラムのマイクがスピーカーの音を拾っちゃってハウってしまうことが結構あるんだ。でも、ドラムを前に持ってこないと、Katieとアイ・コンタクトが取れないからね。あの形がふたりにとって1番やりやすいんだよ。ドラムもギターもどちらもデカい音が出るだろ。その2つを縦に並べちゃ迫力が出ない。その2つをステージ前面に並べることで、俺たちの掛け合いをお客さんの目の前で見せることができる。見てるほうもそのほうがきっと面白いと思うんだ。

K:前に一度あったんだけど、大きなステージの端と端にドラムとギターをセッティングされちゃうと、ドラムが動かない分、空間を埋めるために私がひとりで走り回らないといけないでしょ? ライヴの途中で"もう無理!"ってなったことがあってから、ステージの中央にセッティングするようにしたんだけど、そのほうが見ているほうも集中できるし、大きなステージでもふたりが近いほうが断然うまくいくのよね。

J:俺が単に目立ちたがり屋で前に出てるって話もあるけどね(笑)。

-ドラム台をレールに乗せて可動式にしたらどうですか?

J:それいいね! 歌舞伎町のロボット・レストランに行ったんだよ。ロボットをリモコンで動かせるんだから、ドラム台を動かすことなんてたやすいんじゃないかな。ループをコントロールするペダルが足下にあるんだけど、逆側にドラム台を動かすペダルを置いたらいいかもね(笑)。

-ところで、3rdアルバムの『Super Critical』は前の2枚とはまた違う作品でしたけど、リリースから2ヶ月、ライヴで曲をお客さんにぶつけてみて、どんな手応えを感じていますか?

K:今回のアルバムはPrince、FLEETWOOD MAC、Chaka Khanといった自分たちの基本にあるアーティストやバンドの影響が出ている作品という意味で、とても誇りに思える作品よ。前作は作るのにかなり苦労したけど、今回はとても満足してる。実際、ライヴで新曲をやってもお客さんの反応もすごくいいわ。

J:リリースしてからクラブ中心にツアーしてきたけど、来年1月にアメリカでアルバムがリリースされたらアメリカ、ヨーロッパを本格的にツアーする。新作からはまだ4、5曲しかやってないけど、もっと増やしていこうと思ってるんだ。今はまだ、新曲をライヴでやることに慣れてる最中なんだ。これからもっともっと良くなっていくと思うよ。

-『Super Critical』はメジャー・レーベルを離れ、新たに立ち上げた自分たちのレーベルからのリリースでしたね。自分たちのレーベルということで、クリエイティヴな部分での自由を手に入れることはできたと思うんですけど、その反面、それ以外の部分で、自分たちでやらなきゃいけないことも増えたんじゃないですか?

K:そうね。でも、ヴァンにCDを乗せて、自分たちで手売りしてるわけじゃないから(笑)。それに前作でつらい思いをしたことを考えるとね。もちろん、メジャー・レーベルからリリースしたことはいい経験だったと思うし、メジャーが嫌いだと言ってるわけではない。誰からも期待されてない状況で、自分たちが作りたいように作った1stアルバムがメジャー・レーベルに拾われて、たまたま成功したときはとても嬉しかったわ。でも、おかげで周囲の期待が高まってしまい、いきなり20人のスタッフが"2ndアルバムは、どんな曲を作ったらいいだろう?"ってミーティングを始めたときは、その期待に応えなきゃいけないという状況が本当につらかった。しかも、その20人全員の意見がバラバラなんだから、どうしたらいいのって途方に暮れたわ(笑)。それを思えば、やらなきゃいけないことが多少増えたからって、苦でも何でもないわよ。

-その20人の期待に応える必要は全然ないと思うんですけど、今回、新作を作るとき、ファンの期待に応えるという意味ではどんなことを考えたんですか?

J:まったく考えなかったと言ったらウソになるけど、でも、そこを考えちゃいけないと思うんだ。1stアルバムのときは、そんなことは一切考えずに作りたいものを作って、それを自分たちが主催するパーティーで演奏したら、いいねって言ってくれる人たちが徐々に増えていったんだ。人気とか成功とかって、やっぱりそういう自然発生的なものであるべきだと思うんだよね。1stアルバムのときも「That's Not My Name」なんて、人気に火がつくまでに作ってから1年ぐらいかかったけど、2ndアルバムのときはそういう過程が一切ないまま、"そら作れ! そらリリースだ! ラジオでかけて大ヒットさせようぜ!"ってやりかただった。それってどうなのかな。それにファンだって変わるだろ? 1stアルバムのとき聴いていたファンが今もファンでいつづけているかどうかはわからないし、逆に新しいファンだっているだろう。もちろん、ファンを大事にしなきゃいけないとは思うけど、ファンの期待に応えようとしすぎると、バンドは進化できないんじゃないかな。俺は進化したいからね。ファンをないがしろにするつもりはないよ。大切に思ってる。だって、バンドをやっていくうえで何が1番嬉しいって、朝起きたとき"アルバムよかった"ってツイートを見たときだったりするからね。そういうメッセージをもらうことが励みになってるんだ。実は今回もニューヨークでアルバムを完成させたとき、とあるメジャー・レーベルから契約したいとアプローチがあったんだけど、話を聞いてみたら、2ndアルバムのときと同じようなことを言われたから断ったよ。俺たちは一度成功を収めて、世界を見てるからね。今、俺たちが求めるものはそこじゃない。さっきも言ったようにアルバムの良さが人づてに伝わっていくような成功なんだ。だから、マーケティング・パワーはメジャー・レーベルほどないかもしれないけど、俺たちだけでやっていこうって決めた。日本のソニーはアルバムを聴いて、気に入ったから出したいと言ってくれた。そういうふうに言われるのはうれしいし、そうあるべきだと思うんだ。

K:2年ぐらいガッとやって、その後、音楽を作るのが嫌になっちゃうのではなく、20年後も音楽を作っていたいと思ったからこそ、私たちはこういうやりかたを選んだのよ。