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INTERVIEW

Overseas

Johnny Marr

2014年10月号掲載

Johnny Marr

Interviewer:山口 智男

THE SMITHSの解散から26年を経て、昨年、ついにソロ名義としては初めてのアルバム『The Messenger』をリリースしたUKロックが誇るカリスマ・ギタリスト、Johnny Marr。その彼が前作から1年。早くもソロ第2弾アルバムとなる『Playland』を完成させた。前作リリース後に行ったツアーの熱気をそのまま反映させたという新作にはベテランという言葉が似つかわしくないほどアグレッシヴなMarr流のロックンロールが目一杯詰まっている。溌剌としたMarrの歌声からもバンドのフロントに立つ並々ならぬ自信が窺える。

-前作『The Messenger』に続いてまた素晴らしいアルバムが完成しましたね!

ものすごくワクワクしているよ。自分では思い通りのものができたと思っているし、出来栄えに満足しているけどね。『The Messenger』は自分の楽しみのために作ったけど、世界中であれほどの人気が出て驚いたんだ。今回も同じくらい気に入ってもらえるといいね。

-前作のツアーが終わるとすぐレコーディングに取り掛かったそうですね。

曲のアイデアが早い時期に浮かんだからね。ツアー中、頭の中で、オーディエンスの拍手までひっくるめた音が浮かんだから、ライヴのあとで曲を書いていたよ。普段はなかなかないことだ。だから、曲や歌詞にはエネルギーとアドレナリンがふんだんに注入されている。バンドのライヴやツアーのときの雰囲気をとらえた曲を作るというのが、今回はとても重要なことだった。だから例えば『Playland』での俺の歌いかたは、ライヴと同じような歌いかたをしているところが多いんだ。特にタイトル曲の「Playland」と、「25 Hours」がそうだね。あれはステージ上と同じようにガンガン歌っている。

-前作と新作、そこで奏でている音楽......あえて言葉にするならポスト・パンクなギター・ロックは、あなたがやっと見つけた――ソロ・アーティストとして自分が奏でるべき音楽だという感じなんでしょうか? それとも自分が奏でることができる数ある音楽の内の1つなんでしょうか?

俺は自分が一員になりたくなるようなバンドを作った。俺が今やっているバンドは、俺が観に行きたくなるようなバンドなんだ。ポスト・パンクなギター・ロックという表現は合っていると思うよ(笑)。最近、映画のサントラをやる機会がいくつかあっただろ? Christopher Nolan監督の"Inceprion"にも参加したし、去年は"The Amazing Spider-Man2"をやった。あの経験から、自分のバンドでポスト・パンクなギター・ロックをやりたいと思うようになったんだ。あのときは映画に合うようなシンプルな曲を作っていたからね。まあ将来的には何か別のものに発展していくかもしれないけど、現時点ではこれが理想の音というか、こういう作品を作れてとてもハッピーなんだ。ソングライターとしては、日中聴いてもらえるような音楽を作りたかった。学校に行く途中や仕事からの帰り道、コンサートに出かけていく途中なんかに聴いてもらえるものを作りたかった。新鮮な空気が必要な時間帯にね。電車の中でもいい。日常生活で聴けて、そうだな、電車の中で踊りだしたくなるような音楽かな。

-たしかに(リード・シングルの)「Easy Money」ひとつ取ってみても、ビートが気分を上げてくれるような感じがありますね。

だろ? そういうものが作れてとてもハッピーなんだ。今は午前2時とか3時とかに聴きたくなるようなタイプの音楽を書くことには興味がないんだ。他の人がやる分にはいいと思うけど、観に行きたいとは思わないな。それから、コンサートがエキサイティングなものになるような曲を書きたいという気持ちが強い。今話したようなのを全部ひっくるめたのが、俺がソロ・アルバムで今やりたいことなんだ。ソロ・アルバムを実験的なものにしたがる奴らもいる。でも俺はその逆で、ソロ・アルバムでは実験的にしたくないんだ。俺たちはロックンロール・バンドなんだからさ。

-あなたが素晴らしいギタリストであると同時に素晴らしいヴォーカリストでもあることも、新作を聴いて、改めて感じました。

俺は14歳のころから本格的なバンド活動をやっていて、ギターと歌をやってきた。THE SMITHSに入って名前が知られるようになる前から、フロントマンをやってきたんだ。だからフロントマンのやりかたは分かっているし、歌詞も昔から書いていた。ただ、MODEST MOUSE他、いろいろなバンドをやってきて、ギタリストとして知られるようになったけどね。ギターを弾いているだけでハッピーだったから、それでいいと思っていたんだ。ところが、1988年ごろだったかな、THE PRETENDERSのChrissie Hyndeに"いい声しているわね"って言われたんだ。"ロックンロール向きの声なのにチキン(臆病)になって歌わないだけじゃないの?"みたいにね(笑)。Bryan Ferryにも、君は歌うべきだって言われた。あれほどすごい人たちにいいシンガーだねなんて言われたら、その言葉は気に留めておくべきだよ。

-お手本としているシンガーはいますか?

BUZZCOCKSのPete Shelly、THE KINKSのRay Davis、WIREのColin Newman、MAGAZINEのHoward Devote、それからDavid Bowie。みんなユニークで稀なスタイルを持っていると思う。もちろん、THE ISLEY BROTHERSやSmokey Robinsonみたいな素晴らしいシンガーも大好きだけど、俺が好きなのはニュー・ウェイヴのシンガーが多いんだよね。70年代後半くらいに出てきたような。

-ソロ名義の作品ですが、ツアーを一緒に回ったメンバーとレコーディングしていますよね。このままパーマネントなバンドにしようという気持ちはない?

うーん。俺自身は、PJ Harveyみたいなつもりなんだ。ソロ名義で出ているけど、完全にひとりではなくて、フル・タイムのメンバーがいる。でも曲を書いて、物事を固めていってるのは俺っていうね。この体制を変える理由はないね。いろいろな意味で、PATTI SMITH GROUPにも似ていると思う。俺の名前を冠してやった方が道理に適う気がするし。曲作りもメンバーから離れてひとりでやった部分が大きいからね。だからソロ名義にしているんだ。HEALERSというバンド名を使ったこともあるけどね。実は、このバンドをソロ名義にした方がいいと説得してきたのはJames Doviak(Key/Vo)だったんだ。俺はHEALERSの名前を使うつもりだったけどね。今はこれが気に入っているよ。

-新作は明らかにライヴで演奏することを意識したアルバムですよね。来日の予定や可能性はありますか?

日本でプレイするのは俺にとって重要なことだから、日本でプレイしたいね。毎回とてもスペシャルな時間を過ごせたよ。日本の音楽ファンは好きなバンドに対して情熱的だしね。それをコンサートにドレス・アップして来たり、昔の音源や輸入盤をコレクションしたりすることで表現している。すごく印象に残っているよ。俺自身も同じような感じだからね。

-ぜひ来てくださいよ。

ホントだよ。アメリカでもライヴをやったけど、2時間もやったあとはみんな疲れきっているんだ。それほど神経が張りつめた激しいライヴなんだ。スローな曲でも神経を張りつめてやっている。バンドだけでなく、オーディエンスも体調がよくないといけない。でないと救急車を呼ぶ羽目になってしまうからね(笑)。早く日本のいろいろな都市でもプレイする機会をもらえるといいんだけどね!

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