Japanese
さめざめ
2014年10月号掲載
Member:笛田 さおり
Interviewer:沖 さやこ
-中には"こんなことを歌うなんて"と言う人もいるかもしれないけど、そんなこと言ったら80年代のアイドルが歌う歌謡曲もなかなか際どいですし。
そうですよね。いつの時代もそう言われる音楽はあるのかなと思いますし。私の場合は若干特化した言葉を使いながらも、歌謡曲を意識しているのもあって、どこかで懐かしさみたいなものを――昔、自分の歌声のことを"懐かしい歌声"と言われたことがあったんですよね。それが前は嫌だったんですけど、今はそういう歌声や楽曲で、80年代や90年代の匂いがしたらいいなと思います。今の曲ももちろん大好きなんですけど、やっぱり自分が育ってきた年代なので、あの時代の曲が落ち着くというか。まったく新しい音楽を作るというよりは、あの時代の香りを残した曲を作りたいと心がけています。
-さめざめの特色である歌謡曲のテイストはありつつも、音楽性も広がっていますよね。ソロ・プロジェクトの強みのひとつはそこだと思うので。
そうですね。ソロ・プロジェクトなので、バンド・サウンドもできるし、アコースティック・サウンドもできるし、ひとりでいろんな世界に入り込むことができるので。音楽性が広がったと言っていただきましたけど、今回は今までとは違う作りかたをしない、今まで通りに作るというのもあえてのこだわりだったりもするんです。ここで変えてしまうと自分のイメージしていたものと違うものができてしまうかも、今はそういうことをするべき時期じゃないな......と思ったんですよね。なので今まで通りあまり深く考えずにやりたいように、メロディと詞を吐き出すように書いて。それでも今回の「それでも生きなくちゃ」みたいな、今までとは違ったさめざめの空気感を作り出せることは新発見でもあるので。そういう意味では多種多様な音楽が作れたのかなと思います。さめざめをやればやるほどいろんな楽曲が作りたいなと思うようになっているので。
-これだけバリエーションが豊富な内容になったのは全曲A面のつもりでお作りになったのも理由のひとつでしょうか。
もしコンセプトがあるアルバムだったら、もう少し箸休め的であったり、マニアックな曲を作ってたと思います(笑)。いろんなさめざめがありますよ、こんなさめざめもありますよ、という1番をどんどんどんどん入れていったら、濃厚なものになってしまいました。"あ、さめざめこういう曲もあるんだ""こんな女の子の気持ちも歌うんだ"みたいなところで意外性を持っていただければいいですし、特化した表現以外の切ない表現でもさめざめは楽しんでもらえる楽曲がいっぱいあるので。そういう意味でもいろんな面のさめざめを今回のアルバムで知ってもらえたらなと思います。
-たとえば、Track.3「テレフォンナンバー」はなかなか粘着質な女の子が主人公です。
"テレフォンナンバー"なんていまどき言わない言葉だと思うんですけど、その懐かしさだったりとか。あと、携帯とかメールという言葉を使わずに現代で電話が繋がらないつらさを表現したいなと思って。これは私の経験上、好きな人の電話番号は覚えてしまうという恐ろしさが......(笑)。それを女子会をしたときに話したら"わかるわかる!"みたいな子がいたので、あ、これはわたしだけじゃないと思って歌詞にしました(笑)。
-そういう、恋愛に悩む人たちを助けたい、という想いもおありなのでしょうか。
そうですね。聴いてくださった人たちから頂く、すごく嬉しい一言というのが......"自分のことかと思いました"という言葉で。自分以外の人が自分に言ってほしいと思う言葉をさめざめでは表現していきたかったので。Twitterやインターネット上ではひとりで恋愛に悩んでいる子がたくさんいて。特に深夜12時以降はそういう書き込みが多いんです。だからそういう子たちがその時間帯に聴くような曲になればいいなって。あとは"全然恋愛しないんですけど、恋愛をしている気分になります"と言っていただけることもあって(笑)。そういう意味では、一途でちょっと駄目な恋愛をしている女の子の教科書にはなっているのかな?なんて思います(笑)。
-(笑)笛田さんの思う"いい恋愛"とはどういうものでしょう?
幸せ自体が人それぞれだと思うので、それを言うのは結構難しいですよね。もしお相手がいる人を好きになってしまっても、その人のことを好きでいる限りは幸せなのかもしれないですし。そういう意味で"いい恋愛"というのは、自分が恋愛していることによって刺激されて、綺麗になろうとか、仕事頑張ろうとか、違うことにプラスになるようなことかなと思います。女の子って、好きな人がいるだけで"つらい日も頑張ろう"と思える子が多いと思うので。それに、つらい恋愛をすることで女の子は綺麗になっていくと思いますし。
-人がやっていない表現方法を選んださめざめが、共感性を呼んでいるというのは面白いですよね。
ははは、そうですね。性に対して赤裸々に歌っている人がいない、けど歌いたい。でもいない。......それを表現して大丈夫なのかな?という不安はあったりはしたんですけど、曲を作って人に聴いてもらわない限り、この想いは伝わらないなと思ったので。自分もたくさんの恋愛をしてきて、そういう気持ちをより自分自身で表現して、恋や人生に悩んでいる人に対して何か少しでも刺激になる曲ができたらな......というのはさめざめには最初からありました。さめざめは本当に、歌詞やメロディを含めてたくさんの人に聴いてもらえるものだという気持ちがあるので。
-さめざめは笛田さんの世界だけではなく、いろんな人の想いと笛田さんの気持ちが入っていて、『さめざめ白書』は笛田さんがその表現方法をより楽しめているのかなと思いました。だからすごく夢がある10曲だと思います。
切ない曲も苦しい曲もあるんですけど、最後は"わたしらしく頑張ればいいや"と思えるような気持ちになれる締めくくりかたをしています。最後の曲の「清く正しく美しく」は病気で休養しているときに作った曲で、自分の人生を少し振り返るというか、お休みしている間に自分のやってきたことを思い出したりして"これで良かったのかな""あのときこうすれば良かったな"という思いがありつつも......さめざめとしてたくさんの人たちに聴いてもらって、この歌はまっすぐで純粋な曲だ、さめざめは清く正しく美しい生きかたを描いていますということを最後に伝えたいなと思って。この曲ができたときに必ずアルバムの最後に入れようと思って。
-こう言い切れたというのは大きいですよね。
言い切っちゃいましたね(笑)。どんなにつらくても自分の生きかたに後悔をしないような生きかたができれば結果オーライなのかなと思うので、そういった女の子の後押しができたらいいなと思います。
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