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INTERVIEW

Overseas

G.LOVE

2011年03月号掲載

G.LOVE

Interviewer:沖 さやこ

約17年のキャリアを持つ、190cmの長身を持つ二枚目ヒップホップ・ブルースマンG.LOVEが9作目となるアルバム『Fixin’ To Die』をリリースする。今作は相棒バンドであるSPECIAL SAUCEの名前はなく、5年振りのソロ名義での発表となった。戦前のブルースのカバー曲や、WHITESTARRのCisco Adlerとの共作曲など、日本盤はボーナス・トラックを合わせて計19曲が収録されている。 G.LOVEの人生の歴史を網羅する、まさしく“原点回帰”というべき作品が誕生した。

-9作目となる今作『Fixin’ To Die』は相棒バンドであるSPECIAL SAUCEの名前はなく、5年振りのソロ名義“G.LOVE”としてのリリースですね。

最近出した3枚のアルバムはSPECIAL SAUCEのメンバーと僕とで“トリオ”って感じでね。ヒップホップ・ブルースっていう似たようなメッセージ性や特性があったから、今回は何か違うことをやりたかったんだ。自分がヒップホップや“G.LOVE”という表現者に出会う前、凄くブルースにハマってた高校生くらいのときの自分を思い出して作ったのが今回のアルバムさ。原点に戻った作品だから、ある意味自分にとっては初めてのアルバムを出す2回目のチャンスという感じかな。17年のキャリアを積んで、やっとここでそれが出来るんだろうなって思ったんだ。

-レコーディングはいつ頃行われたのですか?

去年の9月12日から22日までの間。2日間だけお休みをもらったから9日で作ったよ。

-敢えて短期間のレコーディングになさったのでしょうか。

意図的というより現実問題かな。今回AVETT BROTHERSがプロデュースしてくれてるんだけど、僕も彼らもお互いとっても忙しくて、合う日がこの時期しかなかったんだ。でも“9日間しかない”って意識があったから、凄く集中してレコーディングが出来たよ。その枠組みの中でやらなきゃいけないというプレッシャーがあったからね。それより長くやっていたら逆にいじりすぎちゃって、いいもの作ったのにバラバラにしてたかもしれない。だからこれでよかったと思うよ。

-原点に立ち戻るという意味合いのもと、戦前のブルースや、Paul Simonの楽曲など多数のカバー曲を収録されていますね。敢えてカバー・アルバムにせず、オリジナル・アルバムとしてリリースした理由は何でしょう。

今回のテーマはカバーではなく、あくまで“原点に戻る”ってことだったんだ。今まで作りためてた曲とか、高校時代にブルースに影響を受けて書いた曲とか、それから自分はどんな人間だろう? と振り返って作った曲とか……そういうもの全てが詰まった“音楽的なスタイル”を大事にしたんだよ。僕は完全にブルースがルーツになっているから、そのレパートリーのひとつに“昔からあるブルースの曲を自分なりに解釈して演奏する”っていうのがあったんだ。カバー曲は、元の曲を生かせてるものを選んだよ。

-あくまでメインは“原点に戻る”なんですね。先人の楽曲をカバーすることで、自身の曲に影響は出ましたか?

その通り! カバーをすると学ぶことが色々あったんだ。Paul Simonのカバー「50 Ways to Leave Your Lover」も凄くコード変更が面白いから、同じパターンを「Heaven」でも使ったよ。僕は音楽に関してはスポンジのようによく吸収するんだ。カバーすることによってヒントを得て、いい勉強になるよ。

-このアルバムのタイトルにもなっているBukka Whiteのカバー「Fixin’ To Die」。爽快なハンズ・クラップが入った軽やかなアレンジでありながらも、“死をフィックスする”というタイトルが個人的には衝撃的でした。

僕はこの曲を自分で表現しているから詞とタイトルを分けることはどうしても難しいんだけど、タイトル自体は物凄くパワフルだしインパクトも強いよね。でも別に「死にたい」とか凄く重くて暗いイメージではなくて、“死を意識することのかっこよさ”みたいなのをちょっと感じていたりするんだ。この曲のストーリーとしては、自分がもうそろそろ死ぬのを分かっていて、子供達を残していくのが寂しい、悲しいって話なんだけど。でもそういう悲しさっていうよりは、それに対するかっこいい目線という感覚で僕は見てるかな。人間っていうのはいつか必ず死んでしまうからね。