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INTERVIEW

Overseas

G.LOVE

2011年03月号掲載

G.LOVE

Interviewer:沖 さやこ


-なるほど。ところで伝統的なブルース・ロック・バラードの中にあるラップのようなポエム・リーディングも特徴的な「Just Fine」はWhitestarrのCisco Adlerとの共作ということで。

このアルバムを作るにあたって、ナッシュビルとNYとLAでセッションみたいなのをやっていたんだ。そのときに「一緒に何か曲を書かないか」って話を彼としてね。彼の父親でもあるLou AdlerはTHE MAMAS & THE PAPASなどウエスト・コースト・サウンドの本当に有名なプロデューサーで、彼は今もその家に住んでいるんだ。物凄く綺麗なマリブの海が見えるスタジオでね。彼がもう既にキャッチ・フレーズとして「Just Fine」を考えていたんだ。

-じゃあ彼があなたのために作った曲をもとに、お二人でお作りになったんですね。

もともと彼が、勿論僕が歌うってことで考えて作ってくれたんだけど、コラボレーション段階では彼はもうちょっとこれをヒップホップ風にプロダクションしたいって言ってたんだ。だけどデモを持ち帰ってもう1回ちゃんと聴き込んでいるうちに「これはどっちかというと、コードの細かい部分や曲の雰囲気はTHE ROLLING STONESのバラードのような雰囲気のほうが曲調としてはいいんじゃないか」って思ったんだ。それでこんなアレンジになったよ。

-ソロでアルバムを制作して、バンドの良いところや悪いところも改めて感じるところがあったのではないでしょうか。

そうだね、僕がずっと一緒にツアーを回っていた仲間達は20年間一緒にやってきてるからね。自分の人生を削ってエネルギーを注いで、本当に心から好きというか、成功したいって気持ちがみんなあるんだ。昔からみんな同じ方向を向いて旅に出たわけだから、それがとても気持ちがいいし、“仲間”って感じがするよ。一体になって一緒に何かやる仲間がいるのは本当に素晴らしいことだと思う。だけど同時に悪い部分もあるよね。アメリカは全てバスでツアーを回るんだ。一緒に住んで、炊事洗濯も一緒にする。そういう生活を毎日やってると、家族や兄弟みたいになってくる。そうするとお互い喧嘩もするし、甘えが生まれたり、生活においての相手のクセが癪に障ったり……そういうのがあると、その人のミュージシャンとしての本質や創造性とかが見えなくなっちゃうんだ。それでイライラが続いて衝突したり、凄くそこが難しいんだよね。僕はいつも言うんだけど、ミュージシャンって普通の生活が出来ないからミュージシャンをやっているわけで(笑)。

-(笑)。

僕はその中でも本当に変な人をよく選ぶんだ(笑)。4年くらい前に『Year & A Night』っていう、ツアー中のバンド生活のドキュメントを収録したDVDをリリースしたんだけど、それを見ると本当に、いろんな人たちがちっちゃいバスに乗って24時間一緒にいるっていうのがどんなに大変かっていうのが分かると思うんだ。そういうところがやっぱり難しいよね、仲間でありながらも。

-原点回帰なさったG.LOVEさんは今年どんな新しいことに挑戦していくのでしょう?

さっきラーメン食べたらすごく美味しかったんだ! ラーメンをもっと食べたいな(笑)。

-はははは(笑)。美味しいですよね、ラーメン。

あとは世界一大きい葉っぱのジョイントを吸いたいし、世界一美味しいワインも飲みたいし……っていうのもあるけど(笑)、音楽的に言えばCDをいっぱい売りたいな。あと、ここ最近バンドがヒップホップの方向だったから、僕がブルースの方向に行ってしまったことをバンド・メンバーがビックリしてるんだ。ステージ上でブルースの演奏を冒険して広げていきたいな。ブルースをただのカバーじゃなくて自分達なりの解釈で自分達のオリジナルのものにしてるから、それが凄くいいと思うんだよね。このアルバムを作って目指す方向がやっと見えたから、それをどんどんどんどん伸ばしていきたいと思ってるよ。

【G.LOVE バイオグラフィー】
米フィラデルフィア出身。未婚の父で、190cmの長身を持つ二枚目ヒップホップ・ブルースマン。好きな物は音楽(ソウル、ヒップホップ、ブルース、ジャズなど)、ギター、ハーモニカ、サーフィン、寿司、レモネードなど。自らのバンドG.LOVE & SPECIAL SAUCEを率いて、1994年にアルバム『G. Love & Special Sauce』でメジャー・デビュー。フォーク、ヒップホップ、ファンク、カントリー、ジャズなどを複合的に取り入れたサウンドが話題になり、ラップとブルースを融合させたこの新しいスタイルは“ラグ・モップ”と呼ばれるようになる。BECK、Ben Harper、JON SPENCER BLUES EXPLOSIONと共に“新世代ブルース四天王”と位置づけられ、レジェンド的存在にもなっている。元プロ・サーファーであるJack Johnsonが彼に多大なる影響を受けたのも有名な話で、コラボレーションを行ったり、6thアルバム『Hustle』以降はJackのレーベルから作品をリリースしたりと、公私ともに交流が深い。サーフ・ミュージックを牽引する第一人者のひとりとしても脚光を浴び続ける。
これまでに8作のオリジナル・アルバムとベストなど10作品をリリース(今作『Fixin’ To Die』が9作目のオリジナル・アルバムとなる)。95年にリリースされた2ndアルバム『Coast To Coast Motel』では、気だるさが漂うアーバン・ソウルが話題に。7thアルバム『Lemonade』にはBen Harper、Jack Johnson、Tristan Prettyman、BLACKALICIOUSなど数多くの著名ミュージシャンが無償で友情ゲスト参加をしている。1999年にはウッドストック30周年イベントに出演し、約35万人の観衆の前でプレイ。2005年にアメリカ全土で放映されたコカ・コーラのTVCMに登場と、音楽以外の活動も行っている。