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INTERVIEW

Japanese

やけのはら

2010年08月号掲載

やけのはら

Interviewer:佐々木 健治


-あと、やはりパーティを愛しているからこそのリリックですよね。やけのはらさんにとって、パーティっていうのは何でしょう?

まあまず音楽が好きなので、人が集まり、会話し、お酒を飲み、音楽を楽しむというのは単純に楽しいですよね。楽しいものがたくさん集まったというレベルでも。そこから、演者の演奏を客が受け取るという直接的な構図でない分(勿論、そのような形式の催しや演者のやり方も好きですが)色々な膨らみやあいまいなものがあり、そこがさらに物事を複雑にしているというか、楽しいなと思います。

-DJ中、そしてライヴでもそうですけども、MCも含めて、パーティの場でのコミュニケーションを凄く大事にしていますよね。本当に、お客さんと一緒にパーティを作り上げていこうとしている。上の質問と被るのかもしれないですけれど、理想とするパーティはどういうものですか?ひいては、ライフ・スタイルや価値観にまで繋がるかと思いますが。

とくに、これが理想とかは考えたことないので分かりません。今考えてみても分からなかったです。その日の体調や出来事、気分、によっても求めているものが違うと思いますし、どんな状況でも受け取り方の気持ちで楽しくもつまらなくもなると思うので。むしろ、あまりコレがベストでコレを目指そうとか思うと、なんかあまり面白くなくなるかなとボンヤリ思いました。勿論、細かい所では、もっと出音を良くとか、その場にいる一人一人が楽しく過ごせるような環境をつくろうとか、DJの内容的にもエキサイティングなものに出来たら良いなとかはそのつど考えますが。

-今回、もちろんベースはHIP HOPですが、様々な音楽性のトラックが並んでいます。人選も含めて、トラック制作において、指針のようなものはありましたか?

落とし所としてこんなのにしようとかは何故かあまり考えなかったですね。その曲ごとに流れでというか、やっていくうちに自然と(というか良くなるように頑張るのですが)その曲にふさわしいと思える形になっていくので。ラップを入れるというのが大前提にあったのでラップから逆算して、その曲ごとにこういうのが合いそうだとか作っていきました。ゲストは基本友達や知り合いで、自分で直接電話で頼めるくらいのコミュニケーションをとりやすい人に頼みました。「HIPHOPっぽくしよう」とも「HIPHOPっぽくなくしよう」とも特に考えていなくて、その曲がただ良くなるように頑張ったので、あまりキーワードとしてHIPHOPとかはなかったですね。自分の頭の中の引き出しの分け方としては「サンプリング」、「シンセ」、とかそういう分け方です。で、サンプリングを使うと、まあ結果としてHIPHOPぽい方向の曲にはなります。

-「Rollin’Rollin’」の新しいミックスもそうですが、今回のアルバムの雰囲気を決める上で、ドリアンさんの存在は大きいですよね。ドリアンさんのどんなところに魅力を感じますか?

今回の色々頼んだ基準としては単純に自分の出来ないことをやってもらったということです。達者に鍵盤が弾けて私には作れない複雑なハーモニーを作れるので。あと、知り合いで頼みやすく、作業的には自分にはビジョンがあるのに作りきれないものなどを具体化してもらうのを助けてもらったような感じです。人間的にも誠実で、音楽的にも向上心をもった人物で、1ファンです。

-「Day Dreaming」は、BUSHMINDとやられていた曲で、この曲のリリックは本当に素晴らしいと思いますが、どういう時に書いた曲なんでしょう?

BUSHMINDのアルバムの中で一緒に「CASPER THE GHOST」というユニットで「DAYDREAM」という曲名で一度つくりました。今回のはそのニュー・バージョン的な曲です。2006年のRAWLIFEの後に、RAWLIFEの事を思い出して書きました。

-キミドリの「自己嫌悪」はライヴでもカヴァーされていますが、やけのはらさんにとってキミドリはどういう存在ですか?

とりあえずは普通にファンですね。中学生のときからずっと好きでした。音と言葉にオリジナリティーと普遍的なエネルギーを感じます。

-合わせて、やけのはらさんが考える日本のHIP HOPクラシックを3枚と言われたら、何を選びますか?

「やけのはらさんが考える日本のHIP HOPクラシックを3枚」というのは責任もてないので選びづらいですね。私が好きな3枚なら選べます。とりあえずクラシックという言葉もあるので、ある程度、年月を経たもので選ぶなら、キミドリ「キミドリ」、ECD「BIG YOUTH」、ブッダ・ブランド「人間発電所」。普通でスミマセン。

-「ロックとロール」を聴いて思い出したんですが、昨年REMIX誌で「ロックとは何か?」というお題で原稿を書かれていましたよね。そこでは、ロックをいかに聴いてこなかったか、ということにかなりの文字数をかけられていて。で、革ジャンに長髪・・・みたいなロックンローラー然とした人とは相容れないとも書かれていた。逆に、サマーオフラヴを通過した身体と、9.11を通過した心を持ったロックに対して、漠然とでも興味が湧いてきているみたいなことを書かれていましたよね。その原稿は凄く面白かったんですが、その頃からロックもしくはロックンロールに対する認識に変化はありますか?また、この曲のテーマが出てきたのでしょうか。

え~と、あまり変わってないかもしれないです。今はごちゃごちゃなので難しいですよね。ブルックリン勢のバンドは、完全にダンスミュージックを通過した頭と体でバンドをやっていたりするので、簡単にロック(ロック的メンタリティー、ロックを聞いている人)、テクノ(テクノ的メンタリティー、テクノを聞いている人)と分けられないというか。新しい発想、新しい肉体感覚で、何かをやろうとしている人たちには興味はあります。「ロックとロール」で「ロック」ではなく「ロックンロール」をテーマにしたのは、「&ロール」の時のロックが擦り切れていく前の何かが大事だと思ったからです。

-最後に、このアルバムは現代のどんな人に向けられ、どんなメッセージを届けようとしているアルバムだと思われていますか?

いや~自分では分からないというか、言えないというか、凄く普通であたり前ですが、どんな人でも聞いてもらえると嬉しいですね。そこで何かを感じてくれたり、その人にとって大事なものになってくれたらそれに勝る喜びはないです。逆にどのような人がどのように反応してくれるか、どのような人が気に入ってくれるのか興味があります。

-ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました!