Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

レミオロメン

2010年03月号掲載

レミオロメン

Member:藤巻亮太(Vo&G) 前田啓介(Ba) 神宮司治(Dr)

Interviewer:伊藤 洋輔

バンド結成10周年を祝すように、そして新たなディケイドへの力強い1歩を示すように、レミオロメンが通算5枚目『花鳥風月』をリリースする。終わりと始まり――あらゆる感情が交錯するこの季節に、「3月9日」「茜空」「Sakura」と名曲を生み出してきたが、またひとつ、穏やかな春風の到来を告げるような、暖かくも輝かしい傑作の誕生だ。デビュー時から普遍の日常に根差した真摯な視線は、初のセルフ・プロデュースにより、さらなる幸福感を獲得した。インタビューはアルバムを中心に伺ったが、言葉を探す3人の姿勢は、音楽同様"裏のない"真っ直ぐな優しさに溢れ、とても印象的だった。

-アルバムが完成された現在、それぞれの心境から伺いたいんですが、どのようなものですか?

藤巻:どうだろう……アルバム・リリース前なのに、ぶっちゃけその先のモードに入っているのかなって思う瞬間もあるんだけど(笑)、結局目の前にある日常だったり、ホントこの一瞬に対して頑張らなくてはいけないという意識が大きいですね。それはアルバム制作を振り返って思ったものでもあるんだけど……、なんかいろんな事を頑張ろうと想像しても、一瞬に掛ける想いの強さで『花鳥風月』が完成されたと実感できたので、その余韻がいまでも続いている感じがしています。でもそれだけじゃなくて、日常の広がりにある人とのつながりみたいな……『花鳥風月』の先にある誰かとのつながりみたいなものも意識して生きている感じもあるんです。そこに発展した僕らがいるような感じがして、まだ見ぬ境地のような意識もぼんやりながらある状態なのかもしれませんね。

-お二人はどうですか?

神宮司:本当に心からいいアルバムできたなと思っているんです。なんか地に足の着いたアルバムというか、いい日常感も描けているし。それは僕らが音楽を始めた1stアルバムの頃の感覚っていうのを結成10年を経て成長した姿で描けたと感じているから、自信を持ってみなさんに聴いてもらいたいという気持ちでいっぱいですね。

前田:うんうん。アルバムは日常の見落としがちなものだったり、忘れてはいけないありがとうだったり、ホント小さな幸せで元気になってもらえるようなものが詰まっているんです。それをこれから始まるツアーで最高の形で届けたいと、今はそんな心境ですね。

-新作『花鳥風月』でまず驚いたのは、セルフ・プロデュースという形で制作された点です。このきっかけはなんだったのでしょうか?

藤巻:やっぱりこれまで多くの人と携わってきながらレミオロメンは形成されてきたと思うんです。そういった事がどんどん増えて膨らんでいく流れの中で、今、自分たちは何をしたいのかというのを見つめ直さないといけないと思ったんです。それは昨年ベスト盤をリリースしたことが節目となって生まれた想いでもあり、ある種ここで今までの流れを断ち切るような感じで、自分たちを追い込んでいかなくてはいけないと。もう1回リセットというか、新たな角度からレミオロメンを見つめないといけない、その結論として自分たちですべての責任を背負ったんです。

-それはブランクというか、創作に息詰まったような意識から出された結論ですか?

藤巻:いや、それは4枚目の『風のクロマ』の制作で感じていたものですね。なんかあの時はどこに向かったらいいんだろうっていう感じだったんですよ。1個のリアリティが違うリアリティに覆させられるというか、ひとつのテーマが予期せぬ形で膨らんでいってしまったんです。それで混乱するように方向を見失った感覚がありましたね。

-当時のインタビュー記事を読んでも混沌とした意識や、あらゆる葛藤があったと発言していましたね。

藤巻:ええ。なんか自分の中で答えを選べなかった時期だったんです。見方の問題であって、正しい答えなんて無限にあるし、結局自分がどう思うかっていう決断ができるかなんですけど……。

-その答えを引き出す上で、これまで小林武史さんの存在が大きかったと思うんですが、そこから離れセルフ・プロデュースを選択するのは恐れがあったんじゃないですか?

藤巻:うんうん、それはずっと考えていたことなんです。やっぱり小林さんの力から多くの部分を引き出してもらったし、たくさん影響も受けたと思います。でもだからこそ、ゼロから自分たちだけで積み上げていったら何ができるだろうって、挑戦する意識が強くなったんだと思います。それと『風のクロマ』での葛藤の前には『HORIZON』で新たな解放を掴めたし、そういったデビュー時からさまざまな経験を振り返ると、今回の選択は必然的なものとも思えますね。この経験を踏まえて次にまた小林さんと一緒にやったら、まったく新しい世界が作れるとは思いますよ。