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INTERVIEW

Japanese

レミオロメン

2010年03月号掲載

レミオロメン

Member:藤巻亮太(Vo&G) 前田啓介(Ba) 神宮司治(Dr)

Interviewer:伊藤 洋輔


-昨年末にリリースされたシングル「恋の予感から」のストリングス・アレンジは、Tore Johanssonを起用していましたが、彼との作業もレミオロメンに新たな何かを与えてくれましたか?

前田:サウンドに関してはそうですね。ホント一緒にやりたかった人なんですよ。Toreのスウェーディッシュっぽさを取り入れるんじゃなくて、なんか彼独自の陰影があるストリングスを導入したかったんです。で、彼との作業もセルフだからできる楽しみのひとつなんですよ。エンジニアさんにしてもそうなんだけど、僕たちがあらゆるタイプの人を決められる、選択できる、という楽しさですね。セルフだからこそ自由に選べるという、それはすごくスリリングな体験でしたね。

-今年はなにかと節目の年で、年齢でも3人共30代に突入します。ひとつの大台に乗ったことは音楽に変化をもたらしていると思いますか?

藤巻:なんか常に一期一会なんですよね。今日思っていることは明日どうなるかわからないし、もしかしたら10年後までも思い続けているかもしれないし。大切なのは今どう思うかっていうものだと感じているんです。それは20歳の時もそう思ったし、30歳の今でも思っているんで、当然だけど変わっていくものは変わっていくし変わらないものは変わらない。なんかウロウロしながら生きているなぁとは思いますけど、それでもいいのかなっていう、いい意味での開き直りをできるようになってきたとは思います(笑)。

-その影響なのか、アルバムは全編圧倒的なポジティヴさに満ちていますね。

藤巻:それが30代です!

-ハハハ、力強い言葉ですね。コンセプト・アルバムではないけど、ポジティヴなベクトルがひとつの塊になったアルバムだと感じましたが?

藤巻:この塊感って自然に生まれたんです。これは膨らんだものを整理できなかった『風のクロマ』とは真逆でしたね。前回は最後に辻褄を合わせるような感じで言葉を書いたんですけど、今回はまず最初に言葉ありきだったんです。だからサウンドもうまく言葉に寄り添うような形で作れたし、なんか無駄のない表現になった感じがしますね。その違いが塊あるアルバムになったんだと思います。

-まさにポジティヴな今のモードを象徴する1曲を選ぶとするならばどれでしょう?

藤巻:1曲は難しいけど、すべての曲に言えますね。「ありがとう」とか、「君は太陽」っていうタイトルからもすでに表れてるかな?ラストの「小さな幸せ」もそうです。日々日常、生きているというより……誰かとのささやかな関係で生かされているんだっていうことに気付いて、それに対し感謝する気持ちがアルバムのテーマにあったんです。それがポジティヴさになったんでしょうね。

前田:うん、生かされている感覚に気付いたって大きいんですよ。当たり前のことなんだけど、聴いてくれる人がいないと音楽は成立しない。そして聴いてくれる人が喜んでくれたら僕らとしては感無量じゃないですか。ホント当たり前なんだけど(笑)。例えばパン屋さんでもそうだけど、買ってくれた人がその味に喜んでくれる。パン屋さんにとってその過程にこそ幸福があり、生きる喜びにまでなる。そんなギブ・アンド・テイクのような関係が素晴らしいんだってことに、この10年間で深く理解できるようになったんです。

-日常を見つめてきたレミオロメンの視野を、新作でより再認識できたと?

前田:たぶん……誰もがこういう気持ちってあるんですよ、ささやかだから気付かないかもしれないけど。例えば大切と思える彼女と時には喧嘩しちゃったり、ぎくしゃくしちゃう瞬間も出てきて、そういった時は幸福が見えにくくなるじゃないですか。でも肩の力抜いてみて、もう1回冷静に見てみたら、やっぱり大切だなって理解できるんです。まぁそれが人生の振り幅みたいなものですけど、その流れってバンドでも同じで、見えなくなってきて、肩の力抜いてみたら見えてきたりね。そうして『花鳥風月』を見ると、「あぁ、あの時見えなかった時期も悪くなかったなぁ~」って思えるんです。またこの状態が続くとは思わないし、いろんな事を通過して今のレミオロメンが素晴らしいんだって思えれば最高ですよね。