Japanese
RYUSENKEI
2025年07月号掲載
Writer サイトウ マサヒロ
シティ・ポップ・リヴァイヴァルを00年代から牽引
ある時代の空気感や手触りを果てしなく未来まで運び続け、"今"と交わらせることができるのが、音楽の素晴らしさだと思う。クニモンド瀧口とSincereによる2人組ユニット、RYUSENKEIが6月25日にリリースする、初のオールタイム・ベスト『Time Machine Love 2003-25 RYUSENKEI』を聴いて、湧き出てきたのはそんなピュアな喜びだった。20年超に及ぶ彼等のキャリアを横断する初のベスト・アルバムとなる同作には、所属レーベルを跨いだ全16曲がコンパイルされている。出発点から現在地までを順番に辿る楽曲ラインナップをなぞりながら、その歴史を振り返ってみよう。
2001年に5人組のバンド、流線形として始動。その名はポップ・アルバムとして高い評価を得る松任谷由実の1978年作『流線形'80』から取られており、洒脱で都会的なポップスへの志向は当初から決定付けられていたようだ。2003年にクニモンド瀧口、押塚岳大、林 有三の3人組となると、今作のオープニング・トラックである初の公式音源「東京コースター feat.田岡美樹」を、人気コンピレーション・アルバム『TOKYO BOSSA NOVA ~primavera~』に書き下ろし(未配信のレア音源である)。さらに同年8月、代表曲として知られる「3号線」も収められた1stアルバム『CITY MUSIC』をリリースし、菊地成孔や須永辰緒等から絶賛を浴びる。
2006年に瀧口のソロ・プロジェクトとなると、10月に2ndアルバム『TOKYO SNIPER』を発表。ヴォーカルには江口ニカ("新人女子美大生ヴォーカリスト"の彼女だが、その正体は当時すでにメジャー・デビューを果たしていた一十三十一である)を迎えた。疾走感の中に滲む居場所のなさが切ない「タイムマシーン・ラヴ」、グルーヴ感たっぷりのアンサンブルが寂寞を際立たせる「スプリング・レイン」等、瀧口はサウンドの豊潤さをいっそう磨き上げながら、華美なシティスケープに影を落とす孤独を鋭く見つめた。同作は文化デリック(故川勝正幸+下井草 秀)等が選考する"ポップ・カルチャー・アワード2006"にて、音楽部門の1位に輝いている。
タイムマシーン・ラヴ
スプリング・レイン
以降も瀧口は多様なヴォーカリストをゲストに交え活動。2009年11月には、ライヴでの共演をきっかけに比屋定篤子とのコラボレーション・アルバム『NATURAL WOMAN』をリリースし、彼女のセルフカバーや大貫妙子、八神純子のカバーに加えて、「ムーンライト・イヴニング」、「ナチュラル・ウーマン」といった楽曲を制作する。"沖縄のサウダージ・ヴォイス"の異名を取る比屋定の歌声は、南国の太陽に照らされつつ郷愁を漂わせ、瀧口の紡ぐオーガニックな陰陽のコントラストと見事なマリアージュを奏でた。なお、この時期には比屋定、江口に加え、やくしまるえつこ(相対性理論)がゲスト・ヴォーカルとして出演した、ワンマン・ライヴ("パフォーマンス2009 NATURAL WOMAN")も開催している。
ムーンライト・イブニング
ナチュラル・ウーマン
そうして女性ヴォーカル・ポップスの名手としての立ち位置を確立しつつあった流線形だが、瀧口の関心は男性ヴォーカルへと向かっていたという。2014年には堀込泰行(ex-キリンジ)をヴォーカルに据えたニュー・アルバムの制作が決まり、実際にレコーディングを行うものの、アレンジが難航。2020年11月に、一十三十一と共に担当したNHKドラマ"タリオ 復讐代行の2人"のサウンドトラック『Talio』、2022年7月に、ナツ・サマーとのコラボ・アルバム『サン・キスド・レディー』といった作品を挟みつつ、同年8月に、件の堀込が参加した『インコンプリート』が世に放たれた頃には、最後の単独名義作品『TOKYO SNIPER』から約16年もの時が経っていた。長い時間をかけての熟成と洗練は、シンリズムがストリングス・アレンジを手掛けた「ふたりのシルエット」の流麗さから、存分に感じ取ることができるだろう。
ナツ・サマー & 流線形 / サン・キスド・レディー [Official Trailer]
RYUSENKEIが更新する令和のシティ・ミュージック
心地よく揺らぐ海辺の景色を想起させる「遠い水平線 feat. 児玉奈央」のリリース後、バンドに新たな展開が訪れる。契機となったのは、荒井由実(松任谷由実)やYELLOW MAGIC ORCHESTRA、吉田美奈子等を輩出した伝説的レーベル、アルファミュージックが2024年の創立55周年にあたって再始動するという報せだった。瀧口も多大な影響を受けた同レーベルからの再始動第1弾リリースに際し、活動を加速させるため正式ヴォーカリストを加えることを決断。2021年にキャリアを本格化させたシンガー・ソングライターのSincereに白羽の矢が立った。ちなみに、2人の出会いはSNSで、偶然Sincereの歌声を聴いた瀧口が、DMにて加入を打診するといういかにも現代的な流れである。こうして生まれ変わった流線形は、シティ・ポップの世界的なリヴァイヴァルに呼応して"RYUSENKEI"へと改名。バイリンガルのSincereと共に、グローバルなニュー・チャプターへと歩みを進める。
遠い水平線 (feat. 児玉奈央)
新たな世代へと希望を繋ぐ「スーパー・ジェネレイション」から幕を開ける、2024年4月の最新オリジナル・アルバム『イリュージョン』は、現行RYUSENKEIのヴィジョンが端的に示された一作だ。多彩なミュージシャンとのセッションを重ね、あくまでも生演奏でのレコーディングにこだわったサウンドメイクは、その音像にシティ・ポップ黄金期へのリスペクトが溢れている。一方で、戦火によって分かたれる2人を描いた「もしかしたら2人」は、もはやかつての享楽的な時代へと後戻りできない"今"の我々のための切実さを持って胸に迫る。在りし日への憧憬を原動力にしながら、リアルタイムな歪みや闇から目を背けない。そのハイブリッドなアティテュードが最新型のRYUSENKEIの要であり、彼等が更新せんとする令和のシティ・ミュージックの姿なのだ。なお、今回のベストには未収録だが、Sincereは「月のパルス」、「静かな恋のメロディ」の2曲で作詞を担当。全編英詞楽曲で、ディスコグラフィに新たな息吹をもたらした。
RYUSENKEI - スーパー・ジェネレイション (Official Music Video)
月のパルス
さて、ここまで書き連ねてきた流線形からRYUSENKEIに至るまでのヒストリーを、音で追体験できるのが『Time Machine Love 2003-25 RYUSENKEI』である。本作は、前述の初音源「東京コースター feat.田岡美樹」から、今年5月にリリースされた最新楽曲「真夏の瞬間」までを網羅。とはいえその内容は、ただ単にリリースされたアイテムをディスプレイしただけにとどまらない。『TOKYO SNIPER』、『NATURAL WOMAN』の収録曲、および『イリュージョン』収録の「タイム・トラベラー」は本作のためにリエディット。また、選曲のみならずライナー・ノーツやデザインまで瀧口自身が担当しており、自身の手で残すアーカイヴとしてのこだわりが細部に詰まった一作となった。
RYUSENKEI - 真夏の瞬間 (Official Music Video)
80年代前後のシティ・ポップを00年代に蘇らせたクニモンド瀧口の楽曲が、Sincereの歌声と佇まいによってフレッシュな20年代のムードを纏う。そうして作品全体に深く刻み込まれた年輪は、都市と音楽の蜜月を浮かび上がらせると共に、時代と手を取り合った音楽が逆説的にエヴァーグリーンな魅力を帯びることを示している。初期からのファンにとっては懐かしくも新しい再発見の場であり、これからRYUSENKEIに出会う人にとってはまさに格好の入り口となるだろう。都市と感情の交差点を見つめ続けた22年の結晶を、ぜひ堪能してほしい。
RELEASE INFORMATION
RYUSENKEI
BEST ALBUM
『Time Machine Love 2003-25 RYUSENKEI』
MHCL-31089/¥3,850(税込)
[Sony Music Labels/ALDELIGHT]
NOW ON SALE
1.東京コースター feat.田岡美樹
2. 3号線
3. 恋のサイダー
4. フライデーナイト
5. タイムマシーン・ラヴ (2025 re-edit)
6. 花びら (2025 re-edit)
7. スプリング・レイン (2025 re-edit)
8. ムーンライト・イブニング (2025 re-edit)
9. ナチュラル・ウーマン (2025 re-edit)
10. ふたりのシルエット feat.堀込泰行
11. 遠い水平線 feat.児玉奈央
12. スーパー・ジェネレイション
13. あなたはトリコ
14. もしかしたら2人
15. 真夏の瞬間
16. タイム・トラベラー (2025 re-edit)
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