Overseas
COLDPLAY
2021年11月号掲載
Writer 石角 友香
デビューから21年を迎えた今年。新曲「Higher Power」を5月にドロップし、そのヴィジュアル・イメージからナチュラルに繋がる、国際宇宙ステーション搭乗中の宇宙飛行士との"地球圏外"チャットを行い、宇宙からの新曲初披露というサプライズでニュー・フェイズを示唆したCOLDPLAY。7月には通算9作目となるニュー・アルバムのリリースを発表し、そのタイトルが"Music Of The Spheres"であることが明かされた。同時にバンドのInstagramに"誰もがどこかでは宇宙人だ"というメッセージがアップされたことで、もう十二分なほどにCOLDPLAYの新作が宇宙をテーマにしているだけでなく、アフター・コロナの新しい世界のあり方を前向きに示唆していることは予感できた。
さらに10分を超える大曲「Coloratura」もドロップされ、宇宙的スケールの愛を歌うというより、ガリレオ・ガリレイや星間物質や惑星、古いラテン語のフレーズを引用し、天文学や生命の原点といった哲学を重層的なオペラのように綴っている。この時点でこのニュー・アルバムは大きなテーマを持ちつつ、決して薄っぺらいコンセプト・アルバムではなく、本気でいい未来について、高いアート性をポピュラーな音楽に落とし込んで全世界で評価されてきたバンドが、ポピュラリティを明るい表情で担い、瓦解寸前の世界に光を放とうとしている予感があった。
そしてとどめはBTSとのコラボレーション曲「My Universe」という、世界を驚かせ、同時に納得させたお互いの音楽性とメッセージの接地だった。かねてよりBTSから共作のラヴ・コールを受けていたCOLDPLAYが、2021年という全世界の困難の脱出口をようやく見いだす時代に、国境も言語も超えた音楽のコミュニケーションを互いに世界のトップを獲ったアーティスト同士が交わすということ。その意義がリンクした最高のタイミングだったのだ。「My Universe」はCOLDPLAYにとって、「Viva La Vida」(2008年)以来の米ビルボード・ソング・チャート"Hot 100"の首位を獲得。「My Universe」のMVはYouTubeの公式チャンネルで現在までに8,000万回を超える再生回数を記録し、今も更新中だ。このBTSとのコラボのインパクトは単にトップランカー同士の共演の意味を超え、"君が僕の宇宙"という、誰しもが決してひとりでは生まれ得ない生命の循環や、平たく言えば誰もが宇宙とコミットし、生かされているニュートラルな世界観も想起させる。
アルバムがリリースされてからの新たなアナウンスも新鮮で2021年らしいインフォメーションばかりで、バンドがキャリアのプロセスでギアチェンジしたことを窺わせる。ワールド・ツアーの発表とともに、その内容を環境に配慮したエコフレンドリーなものにする具体的な企画を紹介したことも、巨大ライヴ・パフォーマンスの新しいあり方も実際に目の当たりにさせてくれそうだ。
BTS、Selena Gomezらポップ・スターから、気鋭のポスト・ジャンル・アーティスト Jacob Collierら多様なコラボレーション
アルバムの前段が長くなってしまったが、彼らのように全世界で1億枚以上のフィジカルをセールスし、総トラック・ストリーミング再生回数が300億回以上を数える巨大なバンドが新たな提案を行うことは、ライヴ・エンターテイメントが再び本格的に動き出す2022年のひとつの指標であり、希望でもある。
肝心のアルバムの話をしよう。約42分、シームレスに連なる本作。「🪐(Music Of The Spheres I)」は宇宙船で惑星間を移動しているようなSF的なイントロダクションで幕を開け、第1弾シングル「Higher Power」の80年代エレポップを想起させるビートの質感やエレクトロニックなサビがレトロではなく、架空の宇宙空間を疑似体験させるのはやはり共同プロデューサーであるMax Martinの手腕が大きいように思う。スウェーデンのこの著名プロデューサーはTHE WEEKNDやTaylor Swiftら、バックボーンの異なるアーティストをコンテンポラリーなポップ・ミュージックにブラッシュアップしてきた名手だ。COLDPLAYならここまでスケール感を出してもOKだろうという、他のアーティストならオーバーに感じそうなサウンドスケープを大胆に取り入れて成功している。
続く「Humankind」は四つ打ちのバンドらしいダイナミズムを携え、部分的にはロックンロールのシンプルな楽しさを感じるコードストロークと空間を拡張するシンセ・サウンドが違和感なく同居している。"I know, I know, I know/We're only human"に溢れる幸福感。ライヴでオーディエンスがシンガロングしフロアでジャンプしている絵が浮かぶ。「✨(Alien Choir)」はタイトル通り、宇宙人たちのクワイアのよう。SF映画のOSTにも聴こえる。感覚としては地球人も宇宙人ももはや混在して音楽という言語で共振しているかのようだ。
Selena Gomezがフロントマン Chris Martinとデュエットしていることでも話題の「Let Somebody Go」はどこかAORフレーバーもあるエレピが温かいスロー・ナンバー。Selenaのソフトで甘さもある声が実は彼女なりの失恋に関する気づきを歌っているというのは、本作の中にひとつ別の視点を持ち込んでいてフックになっている。本作でも最もユニークなコラボレーションは「❤(Human Heart)」。イギリスのミュージシャンで、グラミーにもノミネートされた気鋭 Jacob Collierが参加したこの曲は声のレイヤーと、息をするようなヴォーカル、うっすらとしたSEのみのアンビエンスなど、サウンド・プロダクションとアレンジにJacobが関与しているのではないだろうか。彼のほかにもブラックのフィーメイル・コーラス、WE ARE KINGのAmberとParis Strotherが参加し、リバーヴィなコーラスはまさに銀河系。ちなみにトリオ時代にはROBERT GLASPER EXPERIMENTの「Move Love」に抜擢されている存在と言えば、この曲の多様性がより理解できる。
「People Of The Pride」は本作中で異色のナンバー。ハンマー・ビートやブルータルなサウンドのギターに、RAMMSTEINやMUSEの影響も語られているが、アルバムのナラティヴを考慮すると、ここでハードなナンバーが存在することで後半の喚起の爆発がより効果的に響く。まるで大気圏外のチルなヒップホップを宇宙人ヴォーカルが歌うような「Biutyful」(だからスペルを意図的に間違えているのか?)を経て、インタールード「🌎(Music Of The Spheres II)」を挟む。まるで地球のステージに帰還するイメージだ。そして、アルバムのハイライトであり、地球でのステージを想像させるBTSとの「My Universe」。現代のサウンドにアップデートされているが、Nile Rodgers以降の洗練されたファンク/R&Bギターがフックになったアップリフティングなナンバーだ。何より英語と韓国語が混じり合うこと、BTSが書いた韓国語のラップと英語の"We are made of each other"というパンチラインが泣けるのだ。さらに疾走するテクノ・テイストの「♾(Infinity Sign)」を経て、クローザーの「Coloratura」へ。シンセ・オーケストラのつづれ織りからピアノに移行するイントロはディズニー音楽的な普遍性をたたえ、THE BEATLESもQUEENも通ってきた物語調の展開を見せる壮大な叙事詩はバンドの演奏も存分に楽しめる。狂った世界で変わらないこと、それはただ君が必要だということだけ――そんなふうに受け取ったエンディングが、壮大な本作を最終的には地に足のついたものに収斂しているのではないか。
ここまで突き抜けたテーマ性と大きなサウンドを持ったアルバムは逆に今、COLDPLAYにしか似合わないのかもしれない。リスナーの嗜好で細かくセグメントされる時代に、少し大味ではあるけれど、希望的なヴィジョンが灯された。それは間違いない。
▼リリース情報
COLDPLAY
ニュー・アルバム
『Music Of The Spheres』
NOW ON SALE
WPCR-18453/¥2,860(税込)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
1. 🪐
2. Higher Power
3. Humankind
4. ✨
5. Let Somebody Go
6. ❤
7. People Of The Pride
8. Biutyful
9. 🌎
10. My Universe
11. ♾
12. Coloratura
13. Higher Power (Acoustic) ※ボーナス・トラック
14. Higher Power (TIËSTO Remix) ※ボーナス・トラック
COLDPLAY, BTS
配信シングル
「My Universe」
NOW ON SALE
詳細はこちら
- 1
LIVE INFO
- 2024.11.17
-
FIVE NEW OLD
Kroi
NANIMONO
にしな
Hakubi
吉澤嘉代子
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
ヤングスキニー
リアクション ザ ブッタ
ストレイテナー
DeNeel
BLUE ENCOUNT
Keishi Tanaka
シノダ(ヒトリエ)
OKAMOTO'S
LiSA
SpecialThanks
Dios
9mm Parabellum Bullet
JYOCHO
ドレスコーズ
BRADIO
打首獄門同好会
浅井健一
ズーカラデル
Hello Hello
CNBLUE
tacica
アーバンギャルド
Lucky Kilimanjaro
竹内アンナ
Conton Candy
THE ORAL CIGARETTES ※開催延期
眉村ちあき
終活クラブ
Half time Old
ビレッジマンズストア
the quiet room
岡崎体育
Cody・Lee(李)
Awesome City Club
moon drop
あいみょん
back number
原因は自分にある。
- 2024.11.18
-
DeNeel
Thom Yorke
Age Factory
ずっと真夜中でいいのに。
PEDRO
フレデリック × Lucky Kilimanjaro
BUMP OF CHICKEN
The Ravens
DYGL
ラックライフ
- 2024.11.19
-
VOI SQUARE CAT
Maki
Age Factory
Thom Yorke
ずっと真夜中でいいのに。
PEDRO
Official髭男dism
BUMP OF CHICKEN
ヨルシカ
詩羽(水曜日のカンパネラ)
THE ORAL CIGARETTES ※開催延期
Dios
Mrs. GREEN APPLE
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
- 2024.11.20
-
LONGMAN
ネクライトーキー×ポップしなないで
SIX LOUNGE
VOI SQUARE CAT
PEDRO
ハンブレッダーズ
Official髭男dism
シノダ(ヒトリエ)
詩羽(水曜日のカンパネラ)
DYGL
ヨルシカ
大橋ちっぽけ
ASIAN KUNG-FU GENERATION
SUPER BEAVER
CNBLUE
The Ravens
Mrs. GREEN APPLE
mouse on the keys
REAL ESTATE
ONIGAWARA / ザ・チャレンジ / Pororoca / ホシアイ
- 2024.11.21
-
ザ50回転ズ
KANA-BOON
Maki × PRAY FOR ME
ヤングスキニー
THE YELLOW MONKEY
ASIAN KUNG-FU GENERATION
THE ORAL CIGARETTES ※開催延期
ラックライフ
シノダ(ヒトリエ)
(sic)boy
Thom Yorke
CVLTE
eastern youth / People In The Box
CNBLUE
Ivy to Fraudulent Game
離婚伝説
ドレスコーズ
椎名林檎
This is LAST
KEYTALK ※公演中止
- 2024.11.22
-
ヤングスキニー
マルシィ
オレンジスパイニクラブ
フラワーカンパニーズ / 斉藤和義
ズーカラデル
u named (radica)
TK from 凛として時雨
SUPER BEAVER
コレサワ
LONGMAN
セックスマシーン!!
終活クラブ
(sic)boy
the shes gone
ドミコ
点染テンセイ少女。
CVLTE
BREIMEN
SIX LOUNGE
秋山黄色
Newspeak
w.o.d.
BLUE ENCOUNT
超☆社会的サンダル
武瑠
ヤユヨ
浅井健一
YAJICO GIRL
緑黄色社会
あたらよ
- 2024.11.23
-
NANIMONO
打首獄門同好会
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
ザ50回転ズ
Conton Candy
四星球
Lucky Kilimanjaro
Maki × PRAY FOR ME
back number
I Don't Like Mondays.
9mm Parabellum Bullet
ビッケブランカ
新しい学校のリーダーズ
ねぐせ。
Vaundy
Hakubi
HERE
小山田壮平
KNOCK OUT MONKEY
オレンジスパイニクラブ
ASIAN KUNG-FU GENERATION
WANIMA
chilldspot
Ivy to Fraudulent Game
People In The Box
NEE
秋山黄色
ADAM at
ポルカドットスティングレイ
竹内アンナ
the shes gone
HY
あいみょん
まなつ
POP ART TOWN
優里
アーバンギャルド
Amber's
緑黄色社会
Thom Yorke
椎名林檎
怒髪天
- 2024.11.24
-
NANIMONO
打首獄門同好会
DENIMS
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
ザ50回転ズ
キュウソネコカミ
LONGMAN
四星球
安藤裕子
Conton Candy
back number
ウソツキ
9mm Parabellum Bullet
新しい学校のリーダーズ
リュックと添い寝ごはん
FIVE NEW OLD
SHE'S
Vaundy
Umisaya
fhána
シノダ(ヒトリエ)
People In The Box
HERE
大森靖子
AIRFLIP
ASIAN KUNG-FU GENERATION
WANIMA
ずっと真夜中でいいのに。
Mega Shinnosuke
リアクション ザ ブッタ
SpecialThanks
Half time Old
HY
あいみょん
YOUR ADVISORY BOARD
泣き虫☔︎
優里
フレンズ
the quiet room
Thom Yorke
椎名林檎
- 2024.11.25
-
Age Factory
安藤裕子
シノダ(ヒトリエ)
KANA-BOON
フレデリック
BUMP OF CHICKEN
- 2024.11.26
-
Age Factory
SUPER BEAVER
PEDRO
SIX LOUNGE
神はサイコロを振らない
煮ル果実
Thom Yorke
BUMP OF CHICKEN
ハンブレッダーズ
The Novembers
(sic)boy
ストレイテナー
ヤングスキニー
THE YELLOW MONKEY
にしな
- 2024.11.27
-
新しい学校のリーダーズ
PEDRO
LAST DINOSAURS / ego apartment
ハンブレッダーズ
まなつ
Jamie xx
雨のパレード
詩羽(水曜日のカンパネラ)
go!go!vanillas
ヤングスキニー
にしな
- 2024.11.28
-
MOROHA
Age Factory
新しい学校のリーダーズ
DYGL
煮ル果実
SIX LOUNGE
まなつ
アンと私
挫・人間
秋山黄色
w.o.d.
マルシィ
終活クラブ
BURNOUT SYNDROMES
Cö shu Nie
フィルフリーク
シノダ(ヒトリエ)
go!go!vanillas
a flood of circle
KANA-BOON
- 2024.11.29
-
離婚伝説
CVLTE
Age Factory
SHE'S
ずっと真夜中でいいのに。
BLUE ENCOUNT
フィロソフィーのダンス
OKAMOTO'S
DYGL
NEE
Lucky Kilimanjaro
神聖かまってちゃん
Ivy to Fraudulent Game
小山田壮平
tacica
秋山黄色
w.o.d.
ねぐせ。
Dear Chambers
アンと私
the dadadadys
挫・人間
ASIAN KUNG-FU GENERATION
NANIMONO
にしな
Hello Hello
吉澤嘉代子
PIGGS
パピプペポは難しい
TK from 凛として時雨
a flood of circle
BREIMEN
ヤユヨ
CIVILIAN
DOES
East Of Eden
シド
岸田教団&THE明星ロケッツ
ANABANTFULLS
三浦透子
- 2024.11.30
-
back number
NEE
ポルカドットスティングレイ
大森靖子
SHE'S
ずっと真夜中でいいのに。
OKAMOTO'S
tacica
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
フィロソフィーのダンス
SWANKY DOGS
the shes gone
ヤングスキニー
Aimer
リアクション ザ ブッタ
ストレイテナー
ズーカラデル
ウソツキ
Newspeak
9mm Parabellum Bullet
ねぐせ。
BLUE ENCOUNT
moon drop
Cö shu Nie
ASIAN KUNG-FU GENERATION
Conton Candy
椎名林檎
Vaundy
MYTH & ROID
Hakubi
This is LAST
崎山蒼志 / MONO NO AWARE / 荒谷翔大 / 家主 ほか
GANG PARADE
BiS / KNOCK OUT MONKEY / パピプペポは難しい / LEEVELLES ほか
須田景凪
フラワーカンパニーズ
フレデリック
LiSA
なきごと
Machico
"ビクターロック祭り2024"
- 2024.12.01
-
back number
reGretGirl
Lucky Kilimanjaro
大森靖子
OKAMOTO'S
SIX LOUNGE
SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
フィロソフィーのダンス
Ivy to Fraudulent Game
Aimer
MOROHA
Helsinki Lambda Club
リアクション ザ ブッタ
ストレイテナー
THE YELLOW MONKEY
DENIMS
LACCO TOWER
9mm Parabellum Bullet
NANIMONO
ハク。
fhána
オレンジスパイニクラブ
the shes gone
Vaundy
Hakubi
さめざめ
ベランダ
GOOD ON THE REEL
秋山黄色
須田景凪
I Don't Like Mondays.
the quiet room
Laughing Hick
PEDRO
LiSA
indigo la End
- 2024.12.02
-
Saucy Dog
挫・人間
chilldspot
RAY×BELLRING少女ハート
RELEASE INFO
- 2024.11.18
- 2024.11.19
- 2024.11.20
- 2024.11.22
- 2024.11.27
- 2024.12.04
- 2024.12.06
- 2024.12.11
- 2024.12.13
- 2024.12.18
- 2024.12.20
- 2024.12.25
- 2024.12.27
- 2024.12.28
- 2025.01.08
- 2025.01.10
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
PEDRO
Skream! 2024年11月号