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FUJI ROCK FESTIVAL

2016年07月号掲載

FUJI ROCK FESTIVAL

Writer 石角 友香

今年20回目の開催を迎える"FUJI ROCK FESTIVAL"。今や伝説となった嵐の初年度、97年の模様などは当時の動画や関係者、出演アーティストのインタビューなどで見知った若いリスナーも多いだろう。中には両親からフジロックの面白さや楽しさを聞かされて育った読者もいるかもしれない。現在の日本における巨大野外ロック・フェスの先駆けであるフジロック20周年を記念して、このたび、10年ごとに区切ったコンピレーション・アルバムがリリースされる。収録されているのは、時代を代表するアーティストと楽曲ばかりだが、今回はそれらの曲がフジロックのどんな場面でオーディエンスを魅了したのかも含めて振り返ってみたい。

まず、"1997-2006"年盤にはFOO FIGHTERS、BECK、THE CHEMICAL BROTHERS、Jack Johnson、PRIMAL SCREAM、THE KILLERS、SONIC YOUTH、Elvis Costello、SCISSOR SISTERS、WEEZER、Elliott Smith、IGGY POP、KULA SHAKER、MASSIVE ATTACK、UNDERWORLD、OCEAN COLOUR SCENE、THE MUSIC、JOE STRUMMER & THE MESCALEROS(※デジタル版は収録内容が若干異なる)のナンバーが収録されている。ロックとダンス・ミュージックの融合によって、また、オルタナティヴ・ロックが枝分かれしつつ名盤を多数輩出していた時代感を映すラインナップだ。

例えば去年、Dave Grohl(Vo/Gt)が玉座に乗っての大熱演も記憶に新しいFOO FIGHTERSは、嵐となった富士天神山スキー場の初年度のステージに立った貴重なバンドなのだ。今回収録されているのは97年リリースの2ndアルバム『The Colour And The Shape』から「Everlong」。同アルバムには「Monkey Wrench」も収録されており、バンドが日本でも認知度を高め始めた時期だった。そして初年度は2日目の出演予定だったがご存じのとおり中止となり、翌年の豊洲に出演したBECK。収録されているのはソウルもファンクもヒップホップもカントリーもR&Bも投げ込んで"BECK鍋"で煮詰めたような名盤『Odelay』から「Where It's At」。真にオルタナティヴなアメリカの"キュートな天才"目当てに豊洲に足を運んだ人も少なくないはず。その後、05年にも出演して見事なアメリカ音楽の独自の物語を見せた彼が、今年2日目のヘッドライナーで何を見せるのか? 注目したい。

フジロックに頻繁に出演しているバンドは意外に多い。PRIMAL SCREAMは98年の豊洲での第2回を皮切りに、00年、03年、05年(※クロージング・アクト)、08年に至っては2日連続での出演である。コンピ収録曲はオールタイム・ベストな「Rocks」で、もはやリリースされた当時のルーツ回帰について当初、ファンの間でも賛否両論だったこともかなり懐かしい。また、フジロックを活動の重要な場所に位置づけるTHE MUSICは、デビュー前の02年に初出演。03年には自身の出番に加え、出演がキャンセルになったTHE CORALの代打、そして04年には"SUMMER SONIC"出演前に自腹でフジロックを堪能するという入れ込みっぷり。11年にはクロージング・アクトとして、バンドのキャリアをフジロックで閉じたほど。そんなTHE MUSICの代表曲「The People」がこのコンピには収録されているのだが、ループするダンス・ロックのエモーションを00年代の早くから体感させてくれたキーマンだった。

そしてフジロックのスタートと同時期に、ダンス・アクトが世界的にロック・ファンの間にも浸透したことは、従来のロック・フェスにバンドやシンガー・ソングライターしか登場していなかったことを考えると、音楽史的にも時代の転換点に日本のロック・フェスが重なっていたことがわかるだろう。もちろん、その代表格はTHE CHEMICAL BROTHERSやUNDERWORLDだ。今回、前半の10年盤にはTHE CHEMICAL BROTHERSの「Hey Boy Hey Girl」を収録。99年のアルバム『Surrender』に収録されたこの曲は、デジタル×ロックの、そしてフジロックのアンセムとなり苗場初開催の99年、ダンス・ロックを巨大会場で楽しむ経験を日本の音楽好きに根付かせたと言えるかもしれない。02年、04年、07年、11年と最多ヘッドライナー記録も持つ、苗場の顔役でもある。

そしてもう1枚、直近の10年"2007-2016"年盤にはRED HOT CHILI PEPPERS、JET、FUN.、Jason Mraz、COLDPLAY、TWENTY ONE PILOTS、JOHN BUTLER TRIO、Lily Allen、MUTEMATH、FOALS、THE STONE ROSES、RIDE、ASH、(またまた)PRIMAL SCREAM、MY BLOODY VALENTINE、JUSTICE、SKRILLEX、MGMT、THE FLAMING LIPS、THE POGUESのナンバーが収録されている。ポスト・パンク~USインディーの台頭、EDM前夜のエレクトロ・ダンス・ミュージック(※頭文字は同じだが今のそれとはちょっとニュアンスが違う)など、よりシーンが細分化されていくプロセスもリアルに見てとれた10年だ。

その中で、なんと言っても初年度に嵐の中、しかもヴォーカルのAnthony Kiedisが腕を骨折しつつも熱演したRED HOT CHILI PEPPERSは、今年のヘッドライナー。そんな彼らの今回のコンピ収録曲は、バンドの音楽性の集大成的な9thアルバム『Stadium Arcadium』収録の「Dani California」。ブラッシュアップしつつもファンク/パンクなレッチリがやはり好きだという人には外せない作品だろう。そして待望の新作『The Getaway』もリリースされたばかりの今、20年目のレッチリに苗場で再会すると思うと感慨深い。また、近年の"2007-2016"年盤に収録されているが初出演は03年だったCOLDPLAY。2ndアルバム『A Rush Of Blood To The Head』への高評価でスタジアム・バンドにのし上がっていった彼らだが、当時はフジロックのトリ前ですらなかったのは意外。そして05年も出演、11年についにヘッドライナーを務めた。ちなみに収録曲は1stアルバム『Parachutes』収録の「Yellow」で、美メロのモダン・ロックでインテリジェントも感じさせる彼らの音楽性は一気に時代の音になっていった。

また、復活ライヴを往年の人気バンドが行うのもフジロックならではで、THE STONE ROSESの12年のヘッドライナーも記憶に新しい。このコンピには「She Bangs The Drums」を収録。今年21年ぶりの新曲「All For One」も発表され、伝説のまま終わらないでいてほしいと切に願う。ベテランといえば二度の出演を果たしたMY BLOODY VALENTINEは轟音シューゲイズの名曲「Only Shallow」を収録。正直、13年より08年のヘッドライナーの方が出音の凄まじさもバランスも良かったと記憶している。また、13年にWHITE STAGEのトリに登場したSKRILLEXは「Bangarang(feat. Sirah)」。DJ新世代がワールドワイドに活躍している事実を見た思いだった。

過去20年の重要なファクトやヒントもこのコンピには確実に存在している。

公式コンピレーション盤リリースに寄せて
国内アーティストよりコメントが到着

Elvis Costello 「Alison」

2012年のフジロックで観ました。正直Elvis Costelloに詳しいわけではないのですが、生であの歌声を聴いた瞬間、完全に圧倒されました。ちなみに飯田くん(Vo/Gt)のジャズマスターはElvis Costelloモデルです。

cinema staff 辻 友貴(Gt)

PRIMAL SCREAM 「Rocks」

今ではプライマルの音楽の大ファンなのですが、知った当時(2011年頃)のブルースロックやハードロック大好き野郎だった僕にはなかなか良さが分からず、そんな時にたまたま聴いた「Rocks」はブルースロック野郎の僕でもすんなり聴けて他の楽曲にも興味を持てるようになりました。プライマルをきっかけに聴くようになった音楽もあってその入り口になった「Rocks」はとても思い出深い曲です。いつか生で、フジロックで聴きたいです!

GLIM SPANKY 亀本 寛貴(Gt)

JOHN BUTLER TRIO 「Better Than」

JOHN BUTLER TRIOを聴くとフジロックのオーガニックで自由な空気を思い出してふわーって安らいじゃいますな。ほろ酔いで芝生に寝っころがりながら体も心も解放されちゃう~!そんな感じ!フジいきたーーい!!!

KEYTALK 小野 武正(Gt/MC/Cho)

MGMT 「Kids」

大好きなMGMT!日本に来てくれるだけで嬉しい!呼べちゃうフジロックは凄い。60'sのサイケロックが大好きだった私に現代のサイケポップロックミュージックの衝撃を与えてくれたバンド。その中でも皆が知ってるこの曲は、やっぱりキャッチーでマジカルでポップでロックでサイケで素晴らしい!

GLIM SPANKY 松尾 レミ(Vo/Gt)

HARD-FI 「Cash Machine」

イギリス労働者階級の日常を綴った歌詞がかなり赤裸々でこういうの日本人がそっくりマネしても恥ずかしい感じになるしそもそもリアルじゃない。本当にそういう環境で生活してきた彼らだから吐き出せる言葉でしょう。それをスローテンポなダンスミュージックに乗せて哀愁バリバリに演奏している所が最高です。哀しいけど本気で踊っちゃいます。(※デジタル版のみ収録)

夜の本気ダンス 米田 貴紀(Vo/Gt)


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