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Overseas

FRANZ FERDINAND

2013年08月号掲載

FRANZ FERDINAND

Writer 山口 智男

FRANZ FERDINANDが帰ってきた――。
すでにネット上に踊っているこの惹句は、彼らが実に4年ぶりに新作『Right Thoughts, Right Words, Right Action』をリリースすることだけに止まらず、実はいろいろな示唆に富んでいる。
2001年結成のグラスゴーの4人組が下積みを経て、2004年、セルフ・タイトルのアルバムとともにデビューしてきた時は、彼らが掲げる女の子が踊れるような音楽というスローガンに“へぇ~”なんて思ったものだけれど、トラディショナルなギター・ロックのスタイルに彼らが持ちこんだダンス・グルーヴはロック・シーンで大歓迎され、彼らはいわゆる踊れるロックのパイオニアとして、たちまちスターダムに昇りつめていった。
多くのロック・バンドに安易に4つ打ちのビートを叩かせた張本人なんて言ってみたい気持ちもあるけれど、踊れるロックという概念が現在、ロックの世界に浸透しているところに“ダンスとロックの垣根を取り払った”と謳われるFRANZ存在や彼らがシーンに現れた時の衝撃のデカさがある。逆に言えば、FRANZ以前のロック・シーンがどれだけ無粋だったかという話だ。
ともあれ、Alex Kapranos(Vo/Gt)率いる伊達男たちは踊れるロックのパイオニアというポジションに満足することなく、寡作ながらもアルバムをリリースするたびに新たな挑戦を続けてきた。もっとも、新しいサウンドを求めるあまり、前作『Tonight』は持ち前のキャッチーな魅力をボヤけさせるほど、こみいった作風がファンを戸惑わせる結果になってしまったわけだが、それから4年ぶりにリリースする今回のアルバムはファンキーなカッティングを刻む2本のギターが軽快に絡み合うオープニングの「Right Action」以下、ギター・サウンドを軸にしたシンプルかつダンサブルなアンサンブルが原点回帰を思わせるものになっている。
その意味ではファンが求めるFRANZが帰ってきたと言ってもいい。しかし、そこは常に新しいことに挑戦してきたFRANZだ。シンプルなアンサンブルに回帰したからって、単純に1stアルバムの作風をなぞるようなバンドではない。
タイトルで謳っているようにイーヴルな雰囲気を漂わせるディスコ・ナンバーの「Evil Eye」、歪ませたギター、ホーン、オルガンの音色がTHE BLACK KEYSを連想させるR&B調の「Love Illumination」、80年代のネアオコを思わせる「Stand On The Horizon」(ズンペズンペと鳴るベースがゴキゲンだ)と曲ごとに趣向を凝らしたアレンジを楽しませる前半こそ、踊れるFRANZの面目躍如と言えるものの、いかにもグラスゴーっぽいギター・ロックと思わせ、裏打ちのリズムで跳ねるギターのカッティングが心憎い「Fresh Strawberries」を境に流れは一転。Track.6「Bullet」以降、ダンサブルなリズムは影を潜め、ネオ・サイケ調のロック・ナンバーの数々がバンドの新たな挑戦を印象づける。
変形レゲエの「Brief Encounters」、エキゾチックなムードが漂う「Goodbye Lovers And Friends」という最後の2曲は前作からの延長とも言えそうだが、今回はシタールやファーフィサ風のオルガンが随所に加えられ、アルバム全体がガレージ/サイケ風のサウンドにまとめられているところが新境地を思わせ、おもしろい。そんなところも聴きどころだ。
どこかのダメなバンドが演じた理性と魂の闘い――Alexは新作についてそんなふうにコメントしているが、わかるようなわからないような……。ともあれ、11月には来日ツアーも決定。改めて、一筋縄では行かないバンドの姿をアピールした新作をひっさげ、FRANZがまた日本に帰ってくる!

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