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Japanese

counterparts

2013年03月号掲載

counterparts

Writer 沖 さやこ

筆者がcounterpartsの音に触れたのは2010年。仕事の繋がりでデモ音源を頂いたのがキッカケだった。そのときから彼らはよくあるJ-ROCKとは一線を画していた。エレクトロ感のあるクラブ・ミュージックのテイストと、UKを彷彿させる物憂げなギター・サウンド。倦怠感と攻撃性――それは1989年にイギリス北部のマンチェスターで起こった“マッドチェスター”の再来のようであった。venus peterの沖野俊太郎(Vo/Gt)は“counterpartsは日本じゃ売れない、センスが良すぎる”と語っているが、そのコメント通り海の向こうのマンチェスターを日本で発信するようなバンドである。

counterpartsは2006年に始動。2008年3月には渋谷のApple Storeでのインストア・ライヴを行い、成功を収める。メンバー・チェンジや地道なライヴ活動を行い、OKAMOTO'SやMop Of Head、オワリカラなどとの対バン経験も持っている実力派。現在のメンバーはサワイノリヒロ(Vo/Gt)、モリダイキ(Ba)、コダマトモノリ(Gt)、カトウタダシ(Dr)の4人である。この1stフル・アルバム『edge curve square』はその活動7年間の集大成的内容と言って良い。サウンドは前述の通り、マッドチェスターを感じさせるグルーヴ。ギターはエフェクトを効かせ浮遊感を生み出したかと思えば、徐々に攻撃性を増すなど、多彩な表情を生み出す。クールかつしなやかに響くベースとドラムはクラブ・ミュージック的。ゆえにKASABIAN、FOALSやTHE RAPTUREといった、ダンス・ミュージックをスパイスに効かせるロック・バンドに通ずる楽曲世界を持つ。そこまでUKナイズドされているなら海外のバンドを聴けばいいじゃないか、と思われるかもしれない。だがcounterpartsはどっぷり海外的なサウンドを取り入れているにも関わらず、日本語を基調にした歌詞をシンプルなメロディに乗せて歌う。サワイノリヒロの湿り気のある歌声とそのメロディは前に出ているというより、音の一部として溶け込んでゆく。夢うつつの曖昧なサウンドスケープ、そこに聴こえてくる日本語は良い意味で異物感を残すのだ。何度もリフレインするフレーズが頭から離れないTrack.6「G2」、Track.7「Killers」は浮遊感のある楽曲に細い光のような筋道を立てる。日本語のアクセントでもって楽曲にハリを持たせるTrack.8「August You」など、日本語ならではのヴォーカル・アプローチも面白い。

アルバムの後半はディープな空間が広がり、そこに詰め込まれる巧妙なサウンドは圧巻である。それがバンドの十八番でありリスナーとしても感服する部分。その浮遊感が心地よいのも勿論なのだが、counterpartsならではのフラット感のあるサウンドにもこの先期待したい。例に挙げるならTrack.1「Star Anis」のようなストレートで堂々とした躍動感のあるサウンドや、キャッチーなギター・ロックであるTrack.2「Niro Walkx」がそれである。この方面の表現が広がると、バンドとしての器も大きく拡張されるのではないだろうか。

counterpartsは3月19日に高円寺HIGHにて“『edge curve square』Release Party”を開催。昨年FUJI ROCK FESTIVALのROOKIE A GO-GOステージに登場したヤセイ・コレクティブ と、MINAMI WHEELにも出演経験を持つメンバー5人 + VJでダンサブルなミクスチャー・サウンドを構築する日の毬をゲストに迎える。7年間培った楽曲を『edge curve square』という1つの作品にしたことでバンドが手にしたものが、この日ステージで見られるに違いない。

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