Overseas
THE MARS VOLTA
2012年03月号掲載
Writer 沖 さやこ
昨年のSUMMER SONICで新曲を多数披露し、日本のオーディエンスを大いに沸かせたTHE MARS VOLTA。とうとうその新曲たちが収められた移籍第一弾ともなる6thオリジナル・アルバム『Noctourniquet』が3月28日にリリースされる。ギタリストでありプロデューサーのOmar Rodriguez-Lopezはこのアルバムをもって“THE MARS VOLTAを締めくくる”と話しているそう。AT THE DRIVE-INの再結成が決定し、そちらの活動が本格化するということだろうか。だがOmarは2月中旬の時点で“ATDIで新作をリリースする予定は無い”と話しているし……どう推察しても所詮推測の域で、具体的にバンドがどうなるかは定かではない。ただ“締めくくる”という覚悟が詰まった作品になっていることは確かだ。だがそこにも貪欲にまで追い求める“変化”が存在するのだから脱帽である。
本作は13曲入りのフル・アルバムで、大体の楽曲が5分前後。どんなに長尺の楽曲でも8分を超えるものはない。彼らの特徴でもあるスリリングで壮大な楽曲展開が、今作は削ぎ落とされているのだ。とは言え緊張感の漂うサウンド・メイクは勿論健在。Omarは“俺たちが今までにやってきた全てをよりシンプルな形で表現した作品になる”とコメントを残しているが、その言葉の通りである。
それゆえにこの『Noctourniquet』というアルバムは、美しい感情の起伏を堪能出来る作品に仕上がっている。1曲目「The Whip Hand」はいきなりOmarの歪んだギターと変拍子が襲い掛かり、湿度のあるCedric Bixler Zavalaのハイトーン・ヴォイスが頭の中を旋回する。メタル・テイストなサウンドとマイナー・コードが怪しげなムードが漂う「Aegis」。しっとりと歌い上げられるミディアム・テンポ・ナンバーの「Empty Vessels Make The Loudest Sound」は1輪の花がゆっくり開いていくのを凝視するような緊張感と繊細さに溢れている。柔らかさと鋭さを使い分けるCedricのヴォーカルは巧みに空間を泳いでゆく。ファンク風の「The Malkin Jewel」でもユーモア溢れるアグレッシヴなヴォーカルを披露しており、今作はかなり彼個人の持つ声の力が際立っている。 “歌”が以前よりもより一層一線を画す存在感を示しているのだ。そして、何かに不満を抱えるような殺気立った音像に一際輝くのは、刃を突きつけるように咆えるギター。相反するような2人の色が重なったときに発せられる途轍もないパワーが、THE MARS VOLTAならではのグルーヴとでも言おうか。殺伐な空気と多幸感、全てをひっくるめた混沌の渦に聴き手を誘うのだ。「Imago」から「Molochwalker」への静と動の鮮やかな移り変わりは鳥肌モノ。
ここまで書くと、プログレ要素は消えてしまったの? と思われるかもしれないが、そこはTHE MARS VOLTAなのでご安心を。確かにシンプルに研ぎ澄まされ、歌がより際立つ作品になっているが、1小節に溢れる音の情報量は膨大だし、複雑なアンサンブルはより鋭利になっている。それでありながらも音の隙間やシンプルさを感じられるのは、音のひとつひとつがよりタイトにまとまっているからだろう。
AT THE DRIVE-INの再結成とフェスへの出演もアナウンスされ、『Noctourniquet』でTHE MARS VOLTAというバンドがひとつの区切りを迎えることは間違いないと言える。ただ、ここまで変貌を遂げたTHE MARS VOLTAがここで終わるわけがない。更なる進化をこれからも見せてくれるに違いない、そう強く確信できるニュー・アルバムだ。
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