Overseas
QUEENS OF THE STONE AGE
2010年12月号掲載
Writer 花塚 寿美礼
1998年に発表されたファースト・アルバム『Queens Of The Stone Age』はハードロックとポップさが絶妙なブレンドで共存している名盤。しかし長らく廃盤となりプレミア化していた。それがこの度リマスターされ日本盤がリリースされることに! このニュースはファンにとっては涙もの。いや、軽く事件かも?
QUEENS OF THE STONE AGE 特有の削ぎ落とされたソリッドなギターサウンドと変幻自在のメロディは、ハードロックに抵抗があるような人も聴きやすいはず。
まず、QUEENS OF THE STONE AGEを知るうえで欠かせないのは、バンドの核であり、Vo&GtのJoshua Hommeが以前在籍していたKYUSSのことだろう。ストナー・ロックというジャンルを広め、攻撃的で、試行錯誤が繰り返された重いサウンドで人気を集めるが1996年に解散。その後、カルフォルニア州バームデザートで結成されたのがQUEENS OF THE STONE AGEで、KYUSSの系譜を受け継ぎながらもより大衆に向けて発信している。メンバーチェンジを繰り返しながら今までに5枚のアルバムをリリース(現在、結成時のメンバーはフロントマン・Joshua Hommeのみ)。セカンド・アルバム『R指定』ではJoshua Hommeの人をびっくりさせたいという少年のような冒険心が爆発。なんせ、1曲目『Feel Good Hit Of The Summer』から「ニコチン、マリファナ、コカイン……」などなにやらヤバメなワードを連呼しまくり、それはもう規格外。一度ハマったらなかなか抜け出せない中毒性がある。
そのなかでも、このファーストはKYUSS色が一番色濃く、彼らの音楽に対するスタンスを感じ取れる1枚と言えるだろう。
そもそもリマスタリングされる音源って過去に聴いたことがあるものでも、今現在に蘇ったように新しく聴こえるから不思議だ。いつだっていつの時代も名曲は色褪せないと痛感する。ハードなサウンドの中に見え隠れするJoshua Hommeの色気のある歌声……これが見事に再現されている。歪んだギターにタンバリンの音がより怪しげな危険度を高める「You Would Know」に、音と音のぶつかり合いが総合格闘技のようなアグレッシヴさを見せるインスト曲「Hispanic Impressions」。実験的なサウンドが詰め込まれた「These Aren't the Droids You're Looking For」などJoshua Hommeの作り出す楽曲は、じりじりと追いつめられるような切迫感がある。常にギリギリのところに自分を追い込むかのようなストイックさを感じるのだ。ラストの「I Was a Teenage Hand Model」は甘美でドリーミーな世界観でアルバムは締めくくられ、壮大なフィナーレを迎える。そう、QUEENS OF THE STONE AGEの伝説はこのファーストから始まったのだ。
10年程前に発表されたものなのに、古くささを全く感じさせない。ARCTIC MONKEYSのサード・アルバム『Humbug』のプロデュース等でも発揮されていたがJoshua Hommの改めて1歩先、2歩先を行く楽曲センスを思い知らされた。シンプルでいてどこまでもポップに響く。これに勝るものはない。だって芯が通っていれば装飾なんていらないのだから。無駄な要素は省かれた純度100%で濃厚な彼らの音世界、体験してみませんか?
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