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THEM CROOKED VULTURES

2010年01月号掲載

THEM CROOKED VULTURES

Writer 佐々木 健治

スーパースターを集めれば、凄いバンドができる。そんな安易なものではないだろうが、突如結成されるスーパー・バンドにファンが興奮するのは、昔から変わらない。そこには、確かにどんな化学反応が起きるのかという、夢があるからだ。

THEM CROOKED VULTURES=貪欲なハゲワシと名づけられたこのバンドが、2009年最大のスーパー・バンドだ。メンバーは、FOO FIGHTERSのDave Grohl(Dr)、QUEEN OF THE STONE AGE(以下、QOTSA)のJoshua Homme(Gt)、LED ZEPPELINのJohn Paul Jones(Ba)という、世代を超えた鉄壁のロックンロール・トリオ。
もともと、Dave GrohlがQOTSAにドラマーとして参加したり、John Paul JonesがFOO FIGHTERSに参加するなど、交流があったこの3人。
名前を聞いただけで、ある程度の音は想像できるように、その音は一言で言えば、ハード・ドライヴィンなオルタナティヴ・ロックだが、THEM CROOKED VALTURESは、一曲目「No One Loves Me & Neither Do I」から予想を軽く飛び越えたクリエイティヴィティを見せ付ける。
ヘヴィなサウンドと高度に練られたアレンジの楽曲の中で、まず耳が行くのはやはり切れ味抜群、リフ満載のJoshuaのギターである。
だが、例えば「Elephants」でJoshuaのソリッドで創造性に富んだギターの存在感に耳を奪われていると、DaveのドラムとJohnのベースという、超一流のリズム隊も、ギターを乗り越えんばかりの迫力を見せ付けてくる。
「Scumbag Blues」では、Daveの図太くもグルーヴ感満点のドラムとファンキーなベース・ライン、サイケデリックな鍵盤の音色とブルージーなギターが絡み合う。
Daveの跳ねるドラミングを前面に出した「Interlude With Ludes」は軽やかなサイケデリック・ナンバーだし、「Warsaw Or The First Breath You Take After Give Up」はT-REXのようなブギだ。
そう、このスーパー・バンドの楽曲には、60’s~70’sのロックを紐解き、現代の音として再構築してみせるような曲が多くある。ただの焼き直しではない、アップデイトされたロックの姿で蘇ってくる。だからこそ、CREAMが、DOORSが、T-REXが、Jimi Hendrixが、そしてもちろんLED ZEPPELINの姿が楽曲の後ろに見えたとしても、何も古臭くなく、むしろ新鮮に響いてくる。
そして、どの楽曲も、驚くほどグルーヴに満ちている。このグルーヴは、ロックの歴史の生き証人の一人であるJohnの生き生きとしたベースがあればこそだ。現在に至るまで、様々なセッションに参加しているとは言え、Johnが弾く超絶ベースが全く他の2人に負けることなく、若々しくうねっていることには驚かされた。
LED ZEPPELINにおいても、Johnはベーシストという枠に収まらない創造性を発揮していたことは有名な話だが、それを改めて実感させられた思いだ。

それぞれが一流のクリエイティヴィティを備えたアーティストであり、相性も抜群だからこそ、この驚くべきアルバムが出来上がった。ただの寄せ集めの名前ばかりのスーパー・バンドでないことは、誰の目にも明らかだ。THEM CROOKED VALUTURESがこの3人であることは、相性、コンセプト、クリエイティヴィティあらゆる面で必然だ。
聴けば聴くほど新しい発見のある素晴らしいロック・アルバムだ。出来れば、ライヴも観てみたい。

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