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INTERVIEW

Japanese

中島 愛

2017年02月号掲載

中島 愛

Interviewer:吉羽 さおり

TVアニメ"マクロスF"で声優・歌手デビューをし、数々のヒット作を生んできた中島 愛。2013年12月に中島 愛名義での音楽活動無期限休止を発表し、長らく歌の舞台からは遠ざかっていたが、今回のニュー・シングル『ワタシノセカイ』で本格復帰を果たす。TVアニメ"風夏"のエンディング・テーマでもあり、作品の爽やかな余韻を感じさせ、またこの先に繋げていく晴れやかなポジティヴさが凛としたヴォーカルに乗って駆け抜ける、爽快な1曲だ。復帰第1弾としてこの「ワタシノセカイ」に込めた思いや今日に重ねた心境、歌手として今思い描くものを訊いた。

-ニュー・シングル『ワタシノセカイ』は約3年ぶりのリリースとなります。音楽活動休止期間を経てこのタイミングで復帰するというのは、ご自身としても何かあったんですか。

2014年に、デビューしてから今までの自分の歩みや活動の方向性を一度考えたい、ということでお休みをしたんですけど、時間を重ねて、やっぱり歌いたいなという気持ちがすごく高まってきたんです。きっかけになるようなステージや、身近な方の言葉の後押しもあって、昨年の春くらいのタイミングで、もう一度踏み出そうと決めることができた、という流れです。

-こうして踏み出すのに、やはり力が必要だったなと思いますか。

もともと音楽はすごく好きなので、お休みしている期間もずっとライヴに行ったり、ミュージカルや舞台を観に行ったりしていました。根本的に歌から離れることはなかったんですけれど、自分自身がステージに立つということには、エネルギーや伝えたい気持ちとかがすごく必要なので。踏み出せるまでエネルギーをチャージするのに時間がかかったかなとは思います。

-そのなかで、どういう歌や想いを伝えたいという明確になったものはありますか。

CDデビューが19歳のときだったので、今まではわりと青春時代を描いた歌を歌ったりして、10代のフレッシュな気持ちの延長線上で歌を歌う心構えみたいなものができていたんですけど。復帰してからはもう少し等身大というか、27歳という今の自分の年齢に合った視点で歌を歌いたいなというのは、芯の部分にある気持ちですね。

-今回のシングル曲「ワタシノセカイ」(Track.1)はアニメのエンディング・テーマでもあります。作品ありきの曲ですが、この曲をどう捉えていきましたか。

今回の"風夏"というアニメーションがバンドものというか、主人公の子たちがバンドを組むストーリーなんです。なので、曲は作品に沿った形でバンド・サウンドで、というふうに制作がスタートしたんですが、今までの活動ではロック・テイストの曲はそんなにたくさんはなかったので、初めに曲をいただいたときは、本当に自分の中にあまりないものというか、新しいものという印象でした。大丈夫かな、ちゃんと歌えるかなっていう部分もありつつ、新しい挑戦ということでワクワクしましたね。

-今作は作詞が原作者でもある瀬尾公治さんですが、どんなふうに表現していくのかというお話もされたんですか。

作品のストーリーの中では、バンドを組むことで音楽を通して変わっていく自分や、対・自分みたいなストーリーもありつつ、恋愛関係や人間関係といった部分の複雑な絡み合いや、人と接するうえで変わっていく自分も描かれていて。私がこの曲で担うのは、どちらかというと後者かなと。熱くライヴ感を入れて歌うというよりは、繊細な感情の変化とか、恋愛に通じる部分とか、そういう人の気持ちが変化するグラデーションみたいなものが表現できればいいのかなと思いました。

-きっと10代で歌ったらまた違った歌になっていたでしょうし、今だからこその表現や、心の機微、歌の解釈が広がっている感覚はありますか。

まずディレクターさんからの歌い方の指示が、今までの自分の歌い方と結構違っていたんです。私はわりと語尾を抜いたり、強弱をつけたりするのがすごく好きだったんですが、今回は、語尾をふわっとさせずにできる限り一語一語をはっきりと強くして歌ってほしいというオーダーがあったんです。その歌い方をしたことで、だいぶ世界が広がったかなと思います。サウンドが、繊細な部分もありつつギターやドラムがどっしりしていて、男らしい部分もあるので。そこに負けないようにという歌い方は、今まであまりしたことがなかったんですよね。キラキラしたサウンドに乗せて明るく歌うというのが得意な方ではあったので、力強くというのは、以前だとなかなか掴みきれなかった部分だとも思うんですけど。今だからこそ、頑固に"私は違う!"ではなく、受け入れられたのかなとも思います。

-では新しいトライになった曲なんですね。

ここまでの挑戦になるとは想像してなかったですね(笑)。新しい世界が予期せず開けた感じで、その新鮮さに自分でも驚いているくらいです。


歌詞にすごく助けられました。自分が復帰を決めるまでの気持ちの流れにすごく沿っているものだったんです


-歌の世界が自分に返ってくる感触や、内容的に染み込んだ部分はありますか。

瀬尾先生の歌詞が"風夏"に寄り添っているものではありますが、全体を通して、自分が復帰を決めるまでの気持ちの流れにすごく沿っているものだったんです。特に歌詞にある"振り返ってばかりじゃ 躓いちゃうよ?"とかは、お休み期間はずっと振り返って振り返ってという毎日を過ごしていたので(笑)。そこでちょっとハッとしたり、背中を押されたり、歌詞にすごく助けられた部分が多くて。それによって、やっぱり歌うのが好きだなとか、歌っていていいんだよって肯定してもらった気分になりました。その言葉の力に感謝していますね。

-お休みを決めたときは、歌はもちろん大好きだけれども、そこに追いつけない思いなどもあったんですか。

そうですね。好きだっていう気持ちだけではやれないものがあるんだな、と言いますか。今までは"好きだー"っていう気持ちだけで、とにかく次々に現れるハードルに食らいついて飛び上がっていくような感じだったんです。でもそのやり方だと、息切れしてしまって。好きっていう気持ちをもう少し、自分をすり減らすものじゃなくて、自分を広げていく方向に変えて、この活動を続けていくのにはどうしたらいいのかなって。その答えを見つけるには、好きだった歌を披露する自信とか自覚とかが足りなかったなと思いますね。