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INTERVIEW

Overseas

SOUTH CENTRAL

2011年03月号掲載

SOUTH CENTRAL

Member:Rob  Keith

Interviewer:沖 さやこ

2005年結成、2008年にデビューした英国ブライトン発のSOUTH CENTRALから、3年振りとなるニュー・アルバムが届いた。全身黒のタイトなファッションに身を包み、年齢や素顔などは非公開という謎めいた彼ら。だが新作『Society Of The Spectacle』は音の隅々にまで感情が溢れた快作だ。エレクトロなの? ロックなの? いやいや、これは“ロックトロニカ”! 巧妙なテクニックによりジャンルを飛び越えた新感覚の問題作、メンバーがじっくり語ってくれました。

-前作のデビュー・アルバムから約3年、満を持してのニュー・アルバム発売ですが、この3年間は皆さんにとってどんな3年間でしたか?

Rob(以下R):この3年間はずっとツアーをして、それからアルバムの曲作りや制作に取り組んでいた。ダイナミックになるように自分たちのサウンドを調整したり、実験したりしていたけど、次のアルバムに3年はかからないと約束するよ(笑)。

-(笑)。新作は巧妙で激しいビート、張り詰めた緊張感のある生楽器、エレクトロ特有の浮遊感、キャッチーなメロディ、全ての事象が極上のアプローチをしていると感じました。

R:自分たちにとって、このアルバムは最善を尽くして生み出したアルバムなんだ。3年という年月を掛けて、様々な人や生き方、3ヶ月ごとに新しい音や音楽にインスピレーションを受けたよ。40、50曲くらい作ったけど、初日に「放り出した」曲もあった(笑)。アルバムにある曲は俺たちが一番いいと思ったものばかりなんだ。様々なジャンルやスタイルを合わせたりしたので、一貫性を作り出すのに苦労したけど、うまくまとめたと思っているよ。エレクトロ、エレクトロ・インディ、ダブ・ステップなどといった要素があっても、SOUTH CENTRALらしいサウンドにはなっている。今流行のものを取り入れるのではなく、息の長い作品が作りたいんだ。5年後に僕たちの音楽を聞いても「新しい」と思えるものが作りたいからね。

Keith(以下K):スタジオで使う機材にも拘って、情熱を注いでいるよ。コンプレッサーなど、作ったりもするんだ。

-本格的ですね! そういう事柄も含め、電子音が多い傍らとても肉体的で生々しい作品だと感じました。

K:例えば「The Moth」は“哀愁”がテーマなんだ。この曲はVirginia Woolfeという作家についての曲なんだけど、彼女の生き様をメランコリック、まるで彼女の夫が語っているかのように伝えたかった。誰かが死ぬと「もっと側にいてあげればよかった」とか「もっと話を聞いてあげればよかった」って思うだろうけど、この曲もその夫の立場から様々な後悔を伝えているんだ。もちろん実際に知っている人ではないから想像で作っているけどね(笑)。

-確かに「The Moth」はSOUTH CENTRAL独自の哀愁の解釈だと思います。他の曲はどんな風に作られたのですか?

K:例えばラスト・トラックの「Paris In The 20th Century」はRobが歌詞を作って、そこからアイディアをぶつけ合って作った。

R:フックが思いついて、曲になっていくことも多いよ。

K:バンドのメンバーも意見をくれたり貢献してくれるし、ツアーをしているとラップ・トップで曲作りをする。街が変わるだけでもインスピレーションになるから、常にレーダーを張って曲のことを考えているんだ。でもほとんどのインスピレーションは読書から来る。アルバム・タイトルの『The Society Of The Spectacle』はGuy Debourdという作家の本から取った。アルバムを作る前からコンセプト的なものがあったから、それに合うように作ったんだ。例えば「Nu Control」ではずっとこの“ニュー・コントロール”ってフレーズを繰り返すんだけど、メディアにコントロールされている人間のことを意味している。昔は武器によって傷付いたけど、今の社会は広告によって傷付いてる。

-マスメディアが日常生活と同化していることを批判的に論じた“スペクタクル社会”。確かに最近の我々はメディアによって操作されていたり、無意識のうちにメディアの影響を受けていると思います。

R:人間って、自分が住んでいる世界が“世の中”だと思っているけど、本当はもっと大きな世界があることに気付かない。「The Day I Die」には、その小さな世界から逃げ出し、大きな世界に入り込むという意味がこめられているんだ。どの曲もコンセプトに忠実なんだよ。

K:Guy Debourdが彼の本で言いたかったことはマス・メディアの融合だった。様々な本や映画もこうした内容を取り上げているので、自分たちはいろんな角度からこのマス・メディアを見て、調べて、音楽で伝えているんだ。