Japanese
モウソウキリン
Skream! マガジン 2024年07月号掲載
2024.06.05 @渋谷La.mama
Writer : 藤坂 綾 Photographer:阿刀 “DA” 大志
5月15日に1stアルバム『JUST SIZE』をリリースしたモウソウキリンが、初の自主企画ライヴ"DresSing rooooooom"を渋谷La.mamaにて開催した。まずは青空が登場。アコースティック・ギターの弾き語りで時に鋭く、時に優しく、堂々とした歌声で会場を包み込むかのように温めていく。続くはGriev fib。圧倒的なパフォーマンスとテンションで一気にフロアを熱くする。容赦なく繰り広げられる自由度が高く迫力あるプレイからは、本人たちの自信はもちろんこの企画ライヴへの信頼をも感じられる。そしてその熱い空気のなか、いよいよモウソウキリンが登場。
ステージ上でインスト曲を演奏する成瀬夢衣(Gt)、Asano(Ba)、へむ(Dr)の3人。それぞれがソロを披露すると、ヒグラシユウナ(Vo/Gt)が走って現れ、ギターを担ぎ「今日は絶対KISSしたい」を始めた。身体を揺らし、一緒に歌うオーディエンス。一気に彼らの色に染まるフロア。"モウソウキリン初自主企画「DresSing rooooooom」、みんな来てくれてありがとう! 最後まで楽しんで行ってね"と言うと、「ダイブ」、「ブラックコーヒーは飲めない」でノスタルジックな世界へと誘う。ヒグラシが"初自主企画「DresSing rooooooom」、青空ちゃんとGriev fibのおかげで素晴らしいイベントになったと思います。ありがとう!"と改めて感謝を述べると、フロアからは温かな拍手が。そして「遠くへ行きたい」へ。静まり返った会場に響く、まっすぐで曇りのない歌声と、ギター・ソロが心地よい。
"楽しめてます? もう結構終盤なんで、好きに踊って帰ってください"とAsanoが言うと「身の程知らず」を奏でる。それぞれのアレンジに耳を傾け聴き入る人、想いのままに身体を揺らす人、ステージをじっと見つめる人――このバンドの楽曲の幅広さ、つまりは音楽に対する貪欲さと自由な姿勢に惹き込まれながら、それぞれのリズムを刻む。曲が終わったあとの歓声までもがまるで曲の一部かのようで、かっこいい。"次の曲で最後になります"とヒグラシが言うと、フロアには残念がる声が。"武道館に早く行って!"という声には"頑張っちゃうよ!"とたくましく応えアットホームな雰囲気の中「生活」を披露。"ありがとうございました!"と言い、本編を終える。
アンコールの声に応え再びステージに登場した4人。ヒグラシの口から、初のワンマン・ライヴ("雨上がりの朝に")を、9月23日にこの渋谷La.mamaで開催することが発表されると、大きな拍手が。そして「人が恋に落ちるのは重力のせいらしい」、そして"次の曲でほんとに最後!"と言うと「ばんど。」で終了した。
初の自主企画であったこの日のライヴ"DresSing rooooooom"。このイベント・タイトルの由来は、"「音の試着室」でイベントを楽しんでほしい"といった意味が込められていたという。三者三様という言葉があるが、その言葉のようにそのままの姿で、全身全霊で挑んだ3組の出演者たち。慣れ合いなんて微塵もなければ、手加減なんて一切ない。それはきっとお互いにリスペクトの気持ちがあってこそ。そんな真剣勝負な音たちを、"試着"という感覚で受け取るなんて、そんなのおこがましいのでは......と思ってしまったりもしたのだけど、きっとそこがモウソウキリンの"らしさ"なのかもしれない。いろいろな音楽を、それぞれのスタイルで楽しめばいい、モウソウキリンの幅広い音楽同様に。近い未来でまた会いたいと思うような、そんな素晴らしいライヴを惜しみなく見せてくれた3組に改めて拍手を贈るとともに、モウソウキリンのこれからが非常に楽しみになってしまったあの日の夜に、心から感謝する。
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