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LIVE REPORT

Japanese

いきものがかり

Skream! マガジン 2024年07月号掲載

2024.05.26 @ぴあアリーナMM

Writer : 藤坂 綾 Photographer:岸田哲平/深野輝美

いきものがかりが、ふたり体制後初、12年ぶりとなる全国ホール・ツアーの追加公演"いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2024 ~あなたと!わたしと!みんなで!歌いまSHOW!!~ 横浜にじゅうまる公演"を横浜 ぴあアリーナMMにて開催。アルバム『○』を引っ提げ、全国各地を回ってきた素晴らしい数々の日々を、この日、この場所で締めくくった。

メンバーが登場すると会場から大きな拍手が。吉岡聖恵(Vo)がステージ中央に立ち、深々と頭を下げると、「誰か」でスタートする。繊細なピアノの音色と優しく、力強い歌声が、ステージを見つめるすべての人たちを包み込む。ほど良い緊張感が心地よい。そのまま「ありがとう」へと続き、"横浜のみなさん、楽しんでいきましょー"と「きっと愛になる」を披露。ステージの隅から隅まで移動し、時にしゃがんで目線を合わせるかのような姿勢で手を振る吉岡。水野良樹(Gt/Pf)の笑顔がスクリーンに映し出され、会場には手拍子が響き渡り、温かな空気が流れる。

唯一無二の会場――老若男女がこんなにも楽しそうに集まるライヴはきっといきものがかりだけなんじゃないか、というほどに会場へ向かうときからその光景には何か特別なものを感じていた。その全員へ心からの敬意と感謝を込めたMCのあとは「青のなかで」。全国ツアーの公式グッズ"超光るイッキーモンキーライト"が青く輝き、「KIRA★KIRA★TRAIN」では大きな風船が現れ、子供のように目をキラキラさせる人たち。愛があり、夢がある。なんて幸せな光景だろう。その幸せを抱きしめたまま「ときめき」、「うれしくて」と続き、キラキラはマックスへ。

"最後ということもあり一曲一曲が愛おしい。そういう気持ちで演奏している"と途中水野が言っていたが、その想いは音からも仕草からも表情からも感じられ、一音一音、ひと言ひと言が胸の深いところを突く。どれだけ会場が大きくなっても、どれだけ月日を積み重ねても、変わらぬふたりの想いが心を揺さぶる。路上で歌い始めたときから、きっとその想いは変わらない。何も変わっていないのだろう。だからこそこんなにも純度が高い音楽をいつまでも奏でることができ、なおかつその音は誰の心にも平等に丁寧に届くのだ。

みんなの歌声で一緒に作り上げた「笑顔」、ペンライトの魔法が掛かった「月とあたしと冷蔵庫」、MV出演のあばれる君と"横浜にじゅうまるダンサーズ"で盛大なパフォーマンスを観せた「運命ちゃん」、"みんないけるかー、声出していけるかー"と吉岡の声で始まった「気まぐれロマンティック」、色とりどりのタオルが宙を舞った「じょいふる」と一気に飛ばし、熱気がピークになったところで「ブルーバード」へ。これでもかと会場を煽る。そしてサポート・メンバーを紹介したあと、"いろんな思い出のある横浜で、また新しいステージをみなさんと一緒に踏めて嬉しく思ってます。ふたり体制になって、ふたり体制だから届けられる曲が今また生まれてるので、心を込めて届けていきたいと思います。これからもよろしくお願いします。今日はありがとう"と吉岡。続けて水野が"最後に、僕らの始まりの曲を聴いてもらいたいと思います"と言うと「SAKURA」。桜色のペンライトが光輝くなかメジャー・デビュー曲を披露し、本編を終える。

アンコールで登場したふたりは、ピアノの弾き語りで「風が吹いている」を披露。スクリーンに歌詞が映し出され、吉岡の声に全員の声が重なる。いきものがかりが歩いてきた道とみんなが歩いてきた道がまるで重なったかのようで、とても美しい。「帰りたくなったよ」、「○」を歌いステージを去るものの、アンコールの声は止まず再びステージに現れたふたりは、新曲「会いたい」を初披露。曲の途中でスクリーンに曲名が表示されたとき、温かな拍手が会場を包み、その温かい想いに包まれたまま、ライヴは幕を閉じた。

ふたり体制となり、様々な変化があり、きっといろんな想いがあっただろうこのツアー。それでもそんなところは微塵も見せず、これまで以上に互いを信頼し、集まった人たちのことを信頼し、素晴らしいファイナルを作り上げたいきものがかり。普遍的なポップ・ミュージックがこんなにも人々を魅了する理由をこの日改めて教えてもらった。いつまでも、どんなときも色褪せない音を鳴らし続けるふたりを、これからも見続けていきたい。

なお、このライヴの模様はU-NEXTにて見逃し配信中。6月2日23時59分まで観ることができる。

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