Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

LIVE REPORT

Japanese

あゆみくりかまき

Skream! マガジン 2021年07月号掲載

2021.06.19 @EX THEATER ROPPONGI

Writer 吉羽 さおり Photo by mao

6月19日、東京EX THEATER ROPPONGIであゆみくりかまき最後のライヴ、"ボクらの熊魂 THE LAST LIVE~これが あゆみくりかまき だ~"が開催された。歌うたいのあゆみ、DJのくりか、盛り上げ役のまきの3人から成り、あゆみくりかまきとして7年、くりかまき時代から数えると9年、グループとして様々な経験とたくさんの喜怒哀楽の時間を、ファンである"またぎ"とともに重ねてきたが、この日がその集大成となる。思い入れのある会場で迎えた一夜限りのライヴは、涙ももちろん、あゆみくりかまきが掲げる"HAPPY ROCK"のスピリットに則って笑顔と眩しいほどのパワーで会場を照らしていくようなステージになった。

SEに乗せてまず登場をしたのは、大きなフラッグを掲げたくりか。そして、あゆみ、まきが登場してこの日一発目の曲に選んだのは、5月にリリースしたラスト・シングル『サチアレ!!!』に収録された「HAPPY ROCK」だ。グループとしての活動が終わっても、彼女たちの音楽は終わることなく、いつだってみんなの遊び場であることが、アグレッシヴなサウンドとアンセミックな歌で紡がれる「HAPPY ROCK」。この曲でライヴを幕開ける3人の想いが、グッと胸に迫る。2階席まで会場を埋め尽くしたまたぎの熱量も高い。「ジェットクマスター」、「HAVE A NICE DAY,世界」と新旧のパワーチューンを連投して、ヘッドバングやジャンプを巻き起こしながら、"またぎ、踊れますか!"(まき)の声で「Amagami Days」へと賑やかな祭りのエネルギーを炸裂させた。最初のMCでは、来場してくれたことに感謝の気持ちを述べつつ、あゆみは"正直(解散する)実感がわかないけど、アンコールくらいではわいてくるかもしれない"と語り、くりかは"登場したときに涙を流している人が見えた"と自身もグッと堪えるように話し出し、"みんなとハッピーな時間を過ごしたい"と宣言する。まきは"寂しい気持ちはあるけれど、何よりあなたたちと会えて嬉しい。今日は惜しみなくすべてを出したい"と笑顔を見せた。また、今回のライヴはコロナ禍ということで観客は歓声をあげたり、シンガロングしたりすることはできないが、その代わりに、マネージャーが過去のライヴ映像からまたぎの"オイ! オイ!"というコールやハンド・クラップを録音、曲に合わせて分厚いシンガロングを添えているという。またぎがコブシをふるったり両手を掲げたりする光景に、そのシンガロングが重なる。冒頭からボルテージの高いこれまでのような"ライヴ感"が味わえたのはそれゆえだろう。

中盤に向かってその勢いは加速する。「ゴマスリッパー」でフロアが一体となって、ごますりポーズで盛り上がり、「蜜蜜蜜」からエモーショナルな「夢の続き」、あゆくま(あゆみくりかまき)始まりの歌である「春色ディスカバリー」と続く。惜しみなくすべてを出したいという言葉どおりに、「クマトナデシコ」や「心友フォーエヴァー」など6曲をメドレーにして、華麗なツーステやエアギターなども披露しながらフロアの温度を上昇させたあとは、コントを交えながら「ビリーでGO!」に繋いでいくなど、内容盛りだくさんで後半へと折り返していく。このあとも、声が出せないなど制限があるのがもどかしくなってしまうような曲の乱れ打ち。またぎは、大きくタオルを振り、ヘッドバングし、コールに合わせるようにコブシを掲げる。「KILLLA TUNE」で、"これがあゆみくりかまきだー!"と叫びを上げると、またぎはぐわんと会場が揺れるようなジャンプで返していった。

後半のMCで改めて、それぞれであゆみくりかまきとして活動してきた7年、9年への想いを語った3人。悔しい思いや叶わなかった夢もあったが、大切な人に出会えたこと、歌手になる夢を叶え、たくさんの支えがあってここまできたことが語られ、まきは"ふたりと出会えたことは幸せです。あゆみくりかまきは私にとって青春でした"という。大きな拍手が湧くなかで、"私たちの背中を押してくれた曲を、心を込めて歌います。あなたも心の中で歌ってください"(まき)と言って歌ったのは「ぼくらのうた」。事務所の先輩であるファンキー加藤が作詞を手掛け、BUZZ THE BEARSの桑原 智(Dr/Vo)が作曲したこの曲は、ライヴでみんなで歌える曲が欲しいという3人の想いが汲まれた曲であり、また悔し涙を流しながらもがむしゃらに前を向いて進んでいく3人の姿を晴れやかな歌に乗せた曲だ。3人がステージ中央で肩を組んで、その声を重ねる姿に会場は歓喜と同時にどこか感傷的な雰囲気が入り混じる。まばゆい光の中で「旅立ちの唄」ときて、いよいよライヴが終盤に近づいていることが肌で感じられる。「アナログマガール'18」から昨年の緊急事態宣言中に急遽リリースした「Grateful」では、ソカのビートに合わせ、フロアも、ステージ袖の大勢のスタッフも大きくタオルを振る姿が見える。会場には、たくさんの人の愛が満ち満ちている。3人には、この光景がどんなふうに映っていたのだろう。喜びも切なさもないまぜのなか、3人がラストに贈ったのは「未来トレイル」。"最後はみんなの明るい未来を願って歌いたい"と告げられ、心の声での大合唱と大きなジャンプで会場を揺らし続けた。

アンコールを求める大きな手拍子の中、「素敵な世界」で改めてステージに登場した3人。その姿は気負うことなくいつもの3人のまま、丁寧に、一生懸命に心の内を語る。あゆみは不器用だがとても真摯に言葉を選びメンバーやまたぎ、スタッフへ大好きという思いを伝え、くりかは活動を通して人生で大事なこと、楽しむことを気づかせてくれたと話す。まきは紆余曲折あった活動のなか、暗闇の中で見えたのはあなたの笑顔だったと、みんなと出会えた幸せを語る。"私たちを好きになってくれて本当にありがとう"(まき)と言って3人がお辞儀をすると、大きな大きな拍手が会場に響く。そして「絆ミックス」、「MILLION」、最後にラスト・シングルであるはなむけの曲「サチアレ!!!」で最高のフィナーレを迎えた。さらに、このあともアンコールに応えた3人は、「ナキムシヒーロー」を置き土産に、あゆみくりかまきとしての活動を終えた。ナキムシの3人だが、この日は最後の最後までこの時とこの光景を噛みしめるようにステージを動き回り、笑顔を見せていたのはとても印象的だった。ここに集った人たちにもその笑顔が刻まれた、素敵なライヴになったと思う。

  • 1