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LIVE REPORT

Japanese

ジョゼ

Skream! マガジン 2017年03月号掲載

2017.02.11 @渋谷TSUTAYA O-Crest

Writer 吉羽 さおり

ジョゼの4thミニ・アルバム『honeymoon』のリリース・ツアーのファイナル公演が、渋谷TSUTAYA O-Crestで行われた。昨年11月よりスタートし、年をまたいだツアー最終日は、ワンマンでのライヴ。『honeymoon』収録曲の他にも、これまでの作品からの曲をやったり、ワンマンだからこそのコーナーを設けたりと、スペシャルな内容の一夜となった。

ジョゼの4thミニ・アルバムライヴは『honeymoon』同様、「モラトリアム・ラヴ」でスタートした。作品のインタビュー時(※2016年11月号掲載)、このアルバムを作り上げた手応えを語った3人。鍛え上げてきた強靭なグルーヴや、3ピースによるガッチリと絡み合った濃厚なアンサンブルのリアリティをそのまま音源へと落とし込んだ『honeymoon』の曲は、ライヴでさらに大きく爆発する。その醍醐味を、のっけから存分に響かせた。"踊ろうか"という羽深創太(Vo/Gt)の呼び掛けから、妖艶で躍動感のある「Carnival end」へと突入し、じんじんこと中神伸允(Dr)と吉田春人(Ba)のしなやかなビートがフロアを駆け巡ると、観客の手が自然と上がっていった。会場のボルテージが高まったところで、フロアを見渡して羽深が"ただいま、ジョゼです"と声を上げる。"こんなにたくさん来てくれて嬉しいです。いろんなところをツアーで回って来たけど、やっぱり東京が一番いいです"と、無事にホームタウンに帰ってきた喜びを伝える。そして"たっぷりとやるので、見逃さないで観ていってください"と、前作『YOUNGSTER』収録の「パステルカラー」を聴かせる。キラキラとしたギターのカッティングと、繊細さが切なさを呼ぶメロディと歌に観客は身体を揺らす。続く「Gravity Sky」のエモーショナルな響きから、3人の呼吸がぴたりと合ったアンサンブルのダイナミズムで圧倒する「溺れる」や「獣」といった曲を連投する。ギター、ベース、ドラムという3つの楽器で、シンプルでいながらも3つの音以上の、重厚なロック・サウンドを聴かせるのがジョゼというバンド。その迫力もタフさも、観客を倒さんばかりにパワーアップしているのは、ツアーが充実していた成果でもあるんだろう。曲の終わりには熱い拍手が湧き、"ジョゼのお客さんは思慮深いから、フー! とかイエー! とか言わないのはわかってます。でも、(観客の思いは)伝わってます"と羽深は笑顔を見せる。「S・O・S」から、じんじんの力強いドラミングで「Friday」へと続き、躍動感のある前半戦を終えた。

ワンマンならではのスペシャルなコーナーとして設けられたのが、羽深の弾き語り。"ファイナルでワンマンなのでいろんなことをやってみようと──じゃあ、今から僕がコントをやるので"と冗談を飛ばしつつ、この弾き語りコーナーでのスペシャル・ゲストとして、ジョゼとは5、6年の付き合いになるというイラストレーターであるフクザワを呼び込んだ。羽深の弾き語りに合わせ、フクザワが絵を完成させていくという、音と絵のセッションで、「銀河飛行」、「雨邪鬼マーチ」、「GUILTY」を披露した。

再び3人が揃った後半は、「ハートソルジャー」で再度爆音を響かせ、スピードを上げていった。『honeymoon』から、「流星雨とアンブレラソング」と「名もなきBGM」、そしてこのワンマンの前に公開された羽深がミュージック・ビデオの初監督を務めた「サイダーは煌めいて」を披露。キャッチーでいて、繊細に切なさの琴線に触れるグッド・メロディ、景色が浮かび、風の香りや温度、湿度を感じる、五感に訴える「流星雨とアンブレラソング」や「サイダーは煌めいて」といった曲は、ライヴでも美しく繊細なタッチで、想像力を掻き立てる。また、"じんじん、大丈夫?"(羽深)という声に、ドラム・じんじんの"OK!"という声が大きく響きスタートした「ロクデナシ」の爆裂なロックンロールで、ガラリと空気を変え、分厚いアンサンブルの濃度をますます上げながら、観客の腕を上げさせていく。羽深はジョゼのお客さんについて、思慮深いと言っていたが、ライヴの最初の方こそ奥ゆかしく手拍子をしたり、手を振っていた観客も、その突き上げる腕に力がこもっているのがわかる。バンドの奏でるサウンドが、聴き手の背中を力強く押しているのだろう。勢いそのままに「ヤングパレード」で、シンガロングの声を上げさせた。
最後の曲に行く前に、羽深は"今日は本当に楽しかったです"と言い、たくさんの観客を眺めると"ジョゼをやっていてよかった。この景色が嘘じゃなくなるように、前に進みたい。ついてきてくれますか。約束だぞ"とつけ加えると、『honeymoon』同様に「バイタルサイン」でツアー・ファイナルの幕を閉じた。

アンコールでは、吉田&じんじんによるユニット(?)ハワイアンズがアロハ姿で登場し、ハネムーン・ソングで会場を沸かせたりとファイナルらしい遊びもふんだん。また今年結成7周年を迎え、5月には早くも東名阪でのワンマン・ツアーを行うことを発表した。東京での会場は下北沢のERA。彼らが最初にデモを送って舞台に立ったその場所で、そのころの自分たちに決着をつけるライヴになると、力強く語った。このツアーで得たものと、5月のツアーで、ジョゼがまた新たなる視野で物語を紡いでいこうとしている。これからへの、いい予感にも満ちたファイナル公演だった。


[Setlist]
1. モラトリアム・ラヴ
2. Carnival end
3. パステルカラー
4. Gravity Sky
5. 溺れる
6. 獣
7. S・O・S
8. Friday
9. 銀河飛行
10. GUILTY
11. 雨邪鬼マーチ
12. ハートソルジャー
13. 流星雨とアンブレラソング
14. 名もなきBGM
15. サイダーは煌めいて
16. ロクデナシ
17. ヤングパレード
18. バイタルサイン
en1. ハネムーン(カラオケ)
en2. ユートピアの生活
en3. Moment

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