ジョゼ
2015.04.04 @shibuya eggman
Writer 天野 史彬
この記事が世に出るころには、もうすっかり見る影もないだろうが、この日はまだ桜が咲いていた。4月4日、Shibuya eggman。1月に1stフル・アルバム『Sekirara』をリリースしたジョゼのリリース・ツアー"ONLY (Y)OURS TOUR 2015"の最終ワンマン公演である。
まるで春の木漏れ日のような、そのあたたかく穏やかなバンドの演奏に身を浸しながら、私は忘れかけていた何かを思い出すような感覚に襲われた。それは、"声にならなかった声"のようなものだった。20代も半ばをとうに過ぎて、いわゆる"大人"になり、いつの間にか自分の想いなど殺してしまう術を覚えた。自分や相手の本音なんて無視してしまえるほどの都合のいい鈍くささを身につけた。伝えることのできなかった想いは、そもそも必要のなかったものなのだと捨て去るための焼却炉を、いつだって心の中に用意していた。そのほうが、生きやすいから。そのはずだった。......はずだったのに、私はまたいつの間にか、自分の心の中の1番奥にある柔らかい部分に耳を当て、"声にならなかった声"が囁きかけるのを聞いていた。言えなかった言葉。なかったことにした想い。きっと針を一刺しでもすれば、傷口からとめどなく鮮血が溢れだすのであろう、心の奥底の柔らかくて繊細な塊の中でずっと生き続けていたその声を、この日、私はそっと抱きしめていた。眼前のステージ上で3人の男たちが奏でる音楽がまさに、"声にならなかった声"そのものだったから。
ライヴは「Moment」から始まり、この夜の間、どこまでも美しく優しげな景色を描き続けた。「Swimming in the universe」の水面を反射する日光のような粒子の細かいメロディの煌めきに耳を奪われ、「numberless polka dot」の躍動するリズムに胸を躍らせた。ヴォーカル/ギターの羽深が"この曲はみんなの力が必要です"と語りかけて始まった「Adolescence」では弾けるようなハンドクラップが会場のあちこちで巻き起こり、このバンドの音楽は、確実に、誰かにとってなくてはならいものなのだと実感した。「シルベスターズ・マーチ」~「銀河飛行」、そして「Friendless Friend」~「アンドロメダに願いを」の流れでは、彼らの音楽の中に一貫して存在し続ける、星に願いをかける少年の姿を見た。そう、ジョゼの音楽はいつだって、無垢な少年の祈りのようだ。誰かに触れたいと、誰かと繋がりたいと、夜空を仰ぐ少年の眼差し。ひとりで生きることの気高さと寂しさを知った少年の、その澄んだ瞳に映る無力さと哀しみの中で生まれた音楽は、今、こうして誰かの心を癒し、新たな祈りを産む。「Friendless Friend」で羽深が歌う、"分かり合えたらいいのにな"と"分かり合えるはずもないや"という2ライン。この2ラインの間に横たわる距離を横断できるのが祈りであり音楽であるのだとしたら、私は、このどうしようもなく無力で、しかし何よりも強い力をもつ音楽の存在を意地でも守り抜いてやろうと思う。
中盤には、彼らが全国のインストア・イベントで培ったアコースティック・セットも披露された。「ユートピアの生活」、「獣」、「雨邪鬼マーチ」の3曲。「ユートピアの生活」では羽深がドラムの中神にヴォーカルを振る場面も。「雨邪鬼マーチ」では途中、歌詞の間違えがありつつも、ステージもフロアも、すべてが緩く和やかな空気に満たされていた。音と笑顔と手拍子と。かつて、潔癖なまでの美意識と頑なさを持ってこの世に生まれ落ちてきたジョゼの音楽は、いつの間にか、その場にいる人々がみんなで作り上げる音楽へと変化していた。eggmanに集まった人々、その誰もが心の奥底に抱え続けた"声にならなかった声"が、この日のジョゼの音楽と、そして会場の美しい風景を形作っていたのだ。もちろん、オーディエンスの胸の内にある声をすくい上げ、外に導き出したのが、どこまでも素直に、正直に、そして赤裸々になったジョゼの音楽であることは、言うまでもない。
深い深い湖の底へと聴き手を誘うような、硬質なサイケデリアを描いた「湖とノクターン」や、力強い疾走感とポップネスをまとった未だ名もなき新曲など、色彩豊かな音の景色を経て、本編ラストを飾ったのは「Gravity Sky」~「Biographer」。演奏前に"赤裸々になることで、誰かと繋がるために作った"と羽深が語ったアルバム『Sekirara』の、キー・トラックと言うべきこの2曲が描いた、包み込むように雄大で、その実、とてもパーソナルな情景。その中で羽深は、強く生きる意志と、未来への想いを歌っていた。この情景が与えるフィーリングに名づけるとしたら、それは――短絡的な物言いと思われるかもしれないが――"勇気"だったと思う。夜空を見上げる少年の眼差しと、繋がりたいという祈りを胸に秘め、この先の人生を歩み続けるための勇気。それは、変わらずにいることと、変わりゆくこと、その両方を受け入れる勇気だとも言えるだろう。アンコールは「ネオンテトラ」と「36F View」。「36F View」は『Sekirara』収録曲だが、バンド最初期の曲なのだという。孤独で純粋な魂が世界に手を差し出し始める、その刹那が永遠をはらみ、力強く奏でられた。
- 1
LIVE INFO
- 2025.06.25
-
オレンジスパイニクラブ
ザ・シスターズハイ
SHE'S
星野源
TenTwenty
Czecho No Republic
PEDRO×詩羽
People In The Box
斉藤和義
岡崎体育
- 2025.06.26
-
Creepy Nuts
ザ・シスターズハイ
ヤングスキニー
怒髪天
ドミコ
TENDOUJI
the dadadadys
斉藤和義
WANIMA
岡崎体育
にしな
プルスタンス / Navy HERETIC / cherie / ライティライト
- 2025.06.27
-
四星球
Creepy Nuts
GOOD ON THE REEL
Subway Daydream
東京スカパラダイスオーケストラ
ビッケブランカ
the shes gone
The Slumbers
GLIM SPANKY
オレンジスパイニクラブ
女王蜂
ポルカドットスティングレイ
ドミコ
フリージアン
サイダーガール
TENDOUJI
Nothing's Carved In Stone
荒谷翔大
yama × 群馬交響楽団
chilldspot
WHISPER OUT LOUD / Good Grief / CrowsAlive / UNMASK aLIVE
Amber's × シズクノメ
空白ごっこ
WANIMA
岡崎体育
"LIVEHOLIC 10th Anniversary series~ナニカシラ presents sunriseeee!!!!〜"
- 2025.06.28
-
眉村ちあき
女王蜂
鶴
LOCAL CONNECT
竹内アンナ
GRAPEVINE
怒髪天
[Alexandros]
Lucky Kilimanjaro
Organic Call
浅井健一
"CRAFTLAND"
チリヌルヲワカ
the shes gone
CYNHN × タイトル未定 × fishbowl
OKAMOTO'S / w.o.d. / MONO NO AWARE / Laura day romance ほか
いゔどっと
いきものがかり
ASP
コレサワ
ドレスコーズ
神はサイコロを振らない
Laughing Hick
荒谷翔大
福永浩平(雨のパレード)
FINLANDS
the dadadadys
私立恵比寿中学
スカート
ゴキゲン帝国
礼賛
ORCALAND
"World DJ Festival Japan 2025"
ネクライトーキー
FIVE NEW OLD
斉藤和義
sumika
"TAKASAKI CITY ROCK FES.2025"
忘れらんねえよ / BLUE ENCOUNT / ヒトリエ / 打首獄門同好会 ほか
Halo at 四畳半
TGMX(FRONTIER BACKYARD etc.)
岡崎体育
Novelbright
- 2025.06.29
-
眉村ちあき
アルコサイト
ヤングスキニー
ブランデー戦記
鶴
竹内アンナ
GRAPEVINE
[Alexandros]
HEP BURN
GLIM SPANKY
怒髪天
FINLANDS
Lucky Kilimanjaro
ネクライトーキー
東京スカパラダイスオーケストラ
浅井健一
Chimothy→
SVEN(fox capture plan)
いゔどっと
大原櫻子
荒谷翔大
reGretGirl
ドレスコーズ
VOI SQUARE CAT
終活クラブ
サイダーガール
ポルカドットスティングレイ
いきものがかり
ASP
コレサワ
清 竜人25
私立恵比寿中学
"World DJ Festival Japan 2025"
おいしくるメロンパン
斉藤和義
sumika
"TAKASAKI CITY ROCK FES.2025"
yutori
岡崎体育
Nothing's Carved In Stone
Novelbright
- 2025.06.30
-
Dear Chambers
清 竜人TOWN
浜崎容子(アーバンギャルド)
Hump Back
岡崎体育
- 2025.07.01
-
ビレッジマンズストア
Mirror,Mirror
岡崎体育
- 2025.07.02
-
ヤングスキニー
キュウソネコカミ
SHE'S
Saucy Dog
Hump Back
Laura day romance × Billyrrom
Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)/ 寺中友将(KEYTALK)/ 谷口 鮪(KANA-BOON)/ アユニ・D(PEDRO)
ドミコ
岡崎体育
- 2025.07.03
-
ヤングスキニー
キュウソネコカミ
斉藤和義
go!go!vanillas
蒼山幸子
kobore × プッシュプルポット × Brown Basket
PK shampoo
TenTwenty
Saucy Dog
ビレッジマンズストア
クジラ夜の街
KALMA
the dadadadys
神聖かまってちゃん
サカナクション
フィロソフィーのダンス×清 竜人25
岡崎体育
- 2025.07.04
-
Nothing's Carved In Stone
MAN WITH A MISSION
斉藤和義
ExWHYZ
GRAPEVINE
SAKANAMON
LOCAL CONNECT
the shes gone
ビレッジマンズストア
蒼山幸子
kobore × プッシュプルポット × Brown Basket
女王蜂
ザ・シスターズハイ
DOLL PARTS
カナタタケヒロ(LEGO BIG MORL)
GANG PARADE
佐々木亮介(a flood of circle)
大原櫻子
緑黄色社会
ポルカドットスティングレイ
リーガルリリー
浅井健一
サカナクション
Mom
- 2025.07.05
-
Nothing's Carved In Stone
SAKANAMON
鶴
THE ORAL CIGARETTES / ヤングスキニー / 水曜日のカンパネラ ほか
reGretGirl
GLIM SPANKY
チリヌルヲワカ
キュウソネコカミ
ART-SCHOOL
コレサワ
[Alexandros]
フラワーカンパニーズ
shallm
go!go!vanillas
アーバンギャルド
ExWHYZ
FINLANDS
"見放題大阪2025"
GRAPEVINE
片平里菜
HY
SCOOBIE DO
the shes gone
怒髪天
荒谷翔大
the dadadadys
envy
サイダーガール
緑黄色社会
め組
Helsinki Lambda Club
androp
WtB
ASP
Conton Candy
The Slumbers
有村竜太朗
- 2025.07.06
-
PEDRO
Creepy Nuts
UVERworld
鶴
ビッケブランカ
sumika / Novelbright / Omoinotake ほか
荒谷翔大
reGretGirl
[Alexandros]
竹内アンナ
go!go!vanillas
ネクライトーキー
FIVE NEW OLD
DYGL × Newspeak × ANORAK!
片平里菜
PK shampoo
GLIM SPANKY
"見放題名古屋2025"
女王蜂
SCOOBIE DO
怒髪天
チリヌルヲワカ
ART-SCHOOL
Bimi
jizue
クレナズム
halca
HY
SIX LOUNGE
ドレスコーズ
LEGO BIG MORL
有村竜太朗
フラワーカンパニーズ
- 2025.07.07
-
ビレッジマンズストア
NakamuraEmi
浅井健一
- 2025.07.08
-
TENDOUJI
Hump Back
go!go!vanillas
ビレッジマンズストア
the dadadadys
kobore × プッシュプルポット × Brown Basket
銀杏BOYZ
- 2025.07.09
-
SHE'S
いきものがかり
Maki
山内総一郎(フジファブリック)
RELEASE INFO
- 2025.06.25
- 2025.06.27
- 2025.06.28
- 2025.07.02
- 2025.07.03
- 2025.07.04
- 2025.07.05
- 2025.07.06
- 2025.07.07
- 2025.07.08
- 2025.07.09
- 2025.07.11
- 2025.07.13
- 2025.07.15
- 2025.07.16
- 2025.07.20
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
音ノ乃のの
Skream! 2025年06月号