Japanese
Aki
2026年01月号掲載
Interviewer:山口 哲生
-視聴数も増えていって、少しずつ自分の中での核だったり、自信みたいなものが付いてきたところもあったりとか?
でも、そこも同じですね。求められたからっていう。社会に溶け込めないのはもう分かったけど、それでもまだ足掻いて、人と繋がって、賛同してもらえたら嬉しい。あぁ、生きてるなって思ったところは確実にあったので。「秘密の」も、自分の中ではある意味社会からのドロップアウトみたいなことを題材に、本当に一節なんですけど書いてみたら、意外と反応があって。こういうことを考えてる人が他にもいるんだなと思いましたね。
-最後に出てくる"今はもう自由に歌えよ"は、お話を聞くにご自身に言い掛けているような感じがあって。
そうですね。「秘密の」は完全に私の思ったことをそのまま書いてました。正直、その頃は続くと思っていなかったんです。TikTokで見つけてもらえて、"1曲出してみないか?"と言われて、その1曲で終わると思っていたので。だからもう怖いものなしで、いろんなことを書いてみようと考えてました。ただ、「秘密の」は、いいほうにも悪いほうにもいけるような曲なので、いろんな解釈ができてしまう。特に最後の言葉はいろんな可能性を秘めてるような歌詞ですね。
-いつも曲を作るときは歌詞とかメロディとか、どんなところから始めますか?
ずっとメモを取っていて、思ったことをメロディに乗せる......というのはわりともうやってないか。私、昔から記憶力が悪くて、びっくりするぐらいすぐに忘れるんですけど、メモの機能としては、そのことを思い出すきっかけになるようなものとしてあって。ポイントになるメロディと歌詞がパッと浮かんだら、そこから一気に作っていくんですけど、そういう曲のほうが歌詞もちゃんとメロディに乗ってるし、バランスがいいものが仕上がるなと思います。
-Akiさんはミュージック・ビデオのディレクションもされていますけど、曲を作りながら、こういう映像にできたらいいなというのも浮かんだりするんですか?
作ってるときに映像が浮かびますね。音楽を聴き始めたのがテレビとかYouTubeだったので、(音楽が)耳と目から入ってきて。あとは昔からジブリ三昧でもあったので、それも耳と、目と、物語とっていう。その3つがあってこそ作品だと思っていたから、ミュージック・ビデオがあってこその曲でもある。私はそういうものが作りたいんだと思います。あと、最近は上口さん先導で、ドラムとベースから作ってもらう曲の作り方もし始めていて。そういう曲はわりと化学反応が起こったりしますね。
-いわゆるオケから作った曲というと?
最新曲の「これも愛としよう」はそうでした。ドラムのテンポから入れてもらったんですけど、この曲は1日で95パーセントぐらいできたんです。歌詞とメロディは、メモしていた"これも愛としよう"というワードからどんどん広げていくような感じでした。
-タイトルからしてすごく素敵だなと思いました。"これも愛としよう"という一言にものすごく奥行きがあって。どんなところから出てきたんですか?
細かいきっかけは覚えてないんですけど、"愛"というワードに私の中ですごく違和感があって。愛ってすごい素敵な響きで、すごく明るくて温かいものなんだけど、誰かに向けた愛で、他の知らない誰かや何かが必ず間接的に傷を負っている──そういう想像力がないと、人と関わることってとても危険だなと。でも、他の知らない誰かが不幸になってしまったからといって、誰かに向けた好意は間違いではないし、本当に人の数だけ考え方はあるので、それはしょうがないことなんですけど、そこだけ見るとすごい残酷なことですよね、という。それで歌詞にも"残酷"というワードを入れているんですけど。
-"気づかないで/残酷な/この世界が/全てなこと"という。
愛の裏表というか。愛こそ完璧であってほしいのに、愛は不完全。だけど、その不完全さに一人一人助けられているという、この矛盾の繰り返し。それが全ての世界かっていう。なんか、素直に愛だのなんだの歌える人間じゃないんだなって思いますね。それは他の曲もそうですけど。
-例えば、私はAさんに向けて話をしているんだけど、それを見ているBさんはどう思うんだろうという視点が常に存在しているような感じというか。
それを永遠に考えちゃうんですよね。それだと自分の人生がすごく窮屈だし、気付いていないのが一番幸せだし、気付いていないことが別に悪いわけでもないし。それは当たり前にあることなので、それに気付いて改善できる世界はもうないって考えちゃうんですよね。ダメなんですけど。
-気付いていない人を見たときに、自分は損しているなと思うのか、羨ましいなと思うのか、どんな感じなんです?
羨ましいって思います。だってなんの不幸にも気付かないから。それで生まれて死ぬまで生きていけたら、"あぁ、幸せだった"で終われるからいいですよね。
-ただ、気付いてしまうと一生気付き続けることというか。
そこと上手く向き合える人っているのかなと考えたりしますね。自分はそれをできていると思っている人は、本当はそのことに気付いてないのかなとか思ったりします。誰かがあなたの発言で傷付いているっていうことに。
-たしかに考え始めると答えのないところにどんどん入っていってしまうところがありますね。
そういう答えのないものばかり考え続けている。そこに心が向かっていくのが今の私だなと思います。
-その答えのないことを歌っているから、聴いていてグッとくるのは間違いなくあると思います。
明るい曲も大好きなんですよ。でも、それを歌うのは間違いなく私じゃないし、私じゃできないので。歌えるものを作って歌わせていただいている感じですね。
-ちなみに、もし明るい曲を作ってくださいって言われたら作ります?
なんか......頭打ったら出てくるんですかね(笑)。
-ははははは(笑)。
たぶん1行もないと思うんですよ、そういう歌詞。だからなんで私なんだろう? って思うと思います。
-ご自身で一度形にしてみようと思ったこともまだないですか?
精一杯明るくしたのが「これも愛としよう」なんですよ。でも、そういう曲にも暗い面みたいなのを入れてしまうし、そうじゃないと歌えないですね。
-なるほど。個人的には"これも愛としよう"という言葉から感じるちょっとした諦念みたいなものって、生きていく上で大事なことでもあるよなとは思うんです。"これが世の中だからな"って思うことも大事なのかなって考えたりもするんですけど。
そうですね。なるべくトラブルが起きないように、なるべく自分の嫌なアンテナを震わせないようにしていきたいと思って、あまり人を見ないように、関わりを持たないようにしてきたんですけど、最近は音楽関係者の方と関わる機会がありがたいことに増えてきて。新しい刺激を受けたり、扉を開かせてもらっているんですけど、まだ本当にその第一歩を踏み出せたかどうかなので、これから自分の心はどこに向かっていくのかなと思っています。
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