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INTERVIEW

Japanese

あらいやかしこ

2024年12月号掲載

あらいやかしこ

Member:梨本 うい(Vo/Gt) なおた(Ba/Cho) taroO(Dr/Cho)

Interviewer:フジジュン

絶対にあらいやかしこの軸になるアルバム


-今作の収録曲で、鍵になった曲ってありました?

梨本:アルバム最後の曲の「ナイトサイダー」ですね。これは短いし、シンプルな構成なんですけど、録音するまでに結構モメて。

taroO:あんまり好きじゃなかったんです、この曲。でも録音して、最近ライヴでやってるなかで"こういう形で見えるんや"と思うようになってきて。

梨本:僕はレコーディング前、アルバムの軸になるだろうと思ってたから、taroOさんがしっくり来ないというのが悔しくて。どう噛み砕いて、出力しやすいようにできるか? ってところですごく悩んだのが「ナイトサイダー」だったんですが、結果、聴いてて一番いいなと思う曲になりました。

-ういさんの中では、最初に描いていた完成形に近いものになった? それとも最初のイメージとは違う良さが出た?

梨本:僕が思ってたよりいいものになりました。100点ではなく、90点+αみたいな感じですかね。最初は、シンプルにボカロ曲として作ったドラムがいまいちって話だったよね?

taroO:そう。でも最終的に、原曲に戻ってきたんです。原曲がいまいちだったから、違う形にしようと思って僕が作ったんだけど、ライヴを重ねて何回かやるうちに、原曲のドラム・パターンをフィジカルで再現するイメージが見えてきたというか。1周してシンプルなパターンの意味が分かって、ようやく腑に落ちたんです。

-面白いですね! で、そんな曲がアルバムを締めくくる大事な曲になったのもいいですね。

梨本:アルバムの1曲目は「わるつ」、最後は「リピート」から「ナイトサイダー」っていうのだけはなんとなく決めていて。その間はできあがった曲を聴きながら組み立てようと思って、作り進めていきました。

-僕は前半、激しい曲が続いて頭をかきむしる感じも好きだけど、7曲目「自由帳」から後半に掛けての心揺さぶられる感じも気持ちいいなと思って聴いてました。

taroO:全曲、1日でガーッと詰め込んで録っちゃったんで、僕は全般的に好きなんですけど。

-え、1日で11曲、全部録ったんですか!?

梨本:はい(笑)。6~7時間くらいで、全部一発録りで。

taroO:そういう地獄みたいな録り方をしています(笑)。

-わっはっは! すごいバンドだなぁ~。

taroO:その駆け込み感も音に出てるなっていうのは、できあがりを聴いて思いました。個人的にも、レコーディングでしっかり録ろうとすると自分の良さが出ないので、精神的に追い込んで、ライヴ感を出してやれたのが結果的に良かったなと。

-これまでもライヴでやってきた曲ですから、一発録りもライヴでやっているのに近い感じがありますしね。

taroO:そうですね。それが現場ごとにバンドとして積み上げてきたものだと思うし、そういうサウンド感になったと思います。......って、振り返るとそう感じますけど、録ってるときは"なんで1日で全部やらなあかんねん!?"と思ってました、内心は(笑)。

-わはは。さっき、ういさんが"あらいやかしこは音楽活動の核"と言ってましたが。DTMでは時間をかけて思い切り作り込むことができて、バンドでは一発録りの緊張感を持ってという、真逆のベクトルに触れていることが、すごくいいバランスなんでしょうね。

梨本:これまでのCDはクリックに合わせて録ってとか、DTM的にレコーディングしてたんですけど、それだときれいになりすぎるというか。"これじゃないな"というのがあったので、今回はその跳ね返りでこうなったというのはありますね。あらいやかしこも最初は一発録りで録ってたんですけど、だんだん色気付いてきちゃって(笑)。作品としては悪くないけど、どこかしっくり来ないというのはずっと抱えていたので、またこの形で作れて、すごく良かったです。

-最初の頃と比べたら、バンドの理解や知識もスキルも大きく成長してるから、同じ一発録りでも完成度は全く違うでしょうね。

taroO:まだ若かった頃の音源って、分かりやすく衝動が込められていたので。今聴き直すと、経験や理詰めでは出せない音が出せててすごいなと思うんですけど、今回もある種、衝動が詰め込まれてると思います。

-ここまでの話を聞くと、1曲挙げるのは難しいと思いますが、なおたさんの好きな曲や印象に残ってる曲って?

なおた:僕も「ナイトサイダー」ですね。すごく好きな曲で、ずっとやりたいと言っていたので。このアルバムでやっと録れてしっくり来たし、ライヴと同じ印象を与えられる音源になったと思うので、すごく満足しています。

-なるほど。ただ、このインタビューを読んで、サブスクで「ナイトサイダー」だけ聴くのはやめてほしいですよね。アルバムとして、ちゃんと「わるつ」から全曲聴いて、その流れで最後の「ナイトサイダー」を聴いてほしいですね。

梨本:ふふふ、そうですね。あと、「ナイトサイダー」はこれだけ言ってますけど、MVとかも作る予定はなくて。アルバムの中からは「ノンサイノ」のMVを出すんですけど(※取材は11月21日)、「ノンサイノ」もアルバムの軸になるというか、すごく情けない部分が出てる曲なので、そっちも聴いてほしいです。

-今回、リリース・ライヴは予定しているんですか?

梨本:全くないです(笑)。アルバムに気合は入れてますけど、リリースに向けて頑張ろう! という感じじゃなくて。絶対にあらいやかしこの軸になるアルバムなので、ゆっくり広がっていけばいいかなと思ってます。次の作品もいつになるか分からないですけど、今作ができて方向性が固まったし、ここから歳を重ねていくなかで、若い頃のまんまの活動はできないと思うので、今作を軸にしながら、また今後の活動も考えていければと思っています。