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INTERVIEW

Overseas

PALE WAVES

2024年09月号掲載

PALE WAVES

Member:Heather Baron-Gracie(Vo/Gt)

Interviewer:山本 真由 Translator:安江 幸子

私はただ、自分がなりたい自分になろうとしているだけ、 そのプロセスが他の人も心地よくできているのなら嬉しい


-今作『Smitten』は音の響きがかわいくていいですね。

(笑)

-"Smitten(夢中になる/惚れ込む)"というタイトルから、恋愛がテーマになっているのかなと思ったのですが、作品を通して描いているテーマやメッセージはどんな内容ですか?

全体的なテーマは"クィアの恋愛"、それから"クィアの恋愛が辿る旅"なんだと思う。しそうな経験とか、なりやすいシチュエーションとか。私たち......少なくとも私にとっては、ソングライターとして書いておくべき内容だと思うし、たくさんのクィアの人に共感してもらえる気がする。ある意味彼等を代弁しているような感じで。......音楽にできる素晴らしいことの1つはそういうことだと思ってるわ。こういう曲を書くことによって、世界中の本当にたくさんの人たちと繋がることができるから。

-ちなみに過去作からも、あなたが自身のセクシュアリティをオープンにしていることが分かるのですが、あなたが自然体で女性同士の恋愛を表現することは、LGBTQ+以外のファンにとっても共感できるものだと思います。

ええ、もちろん!

-そしてもちろん、LGBTQ+のコミュニティに属するファンにとってはエンパワメントになっているんじゃないかと感じます。そういったリアクションはリスナーから届いていますか?

100パーセントあるわ。クィアのファンがたくさんいると思う。PALE WAVESを大好きでいてくれるクィアの人が多いの。その人たちにとって安心できる場所を作っている気がする。自分らしくいられる場所をね。今までいろんな人たちに声を掛けられて、お礼を言われたわ。私が自分のセクシュアリティについてこんなにオープンでいることにありがとうって。私がそうすることによって、彼らも自分のセクシュアリティを心地よく感じられるようになったと言ってくれるの。励みになるし自信にもなるって。そういうメッセージもいつも届いているわ。といっても、私はただ私らしくいようとしているだけなんだけどね。自分が心地いいと思えることをして、自分がなりたい自分になろうとしているだけ。それだけだけど、そのプロセスが他の人も心地よくできているのであれば、私も嬉しい。

-自分も含め、そのコミュニティ外の人にとっても、あなたが曲の中で恋愛を表現するものが心地いいということは、セクシュアリティとは関係ないんだなと改めて思いました。

もちろんよ!

-聴いていて誰もが力を貰えるといいますか。恋愛は普遍的なものですしね。

そうよね!

-ということで、自分に正直且つオープンな曲を書いてくれていることに感謝しています。聴き手も自分らしくいられる力をくれる曲たちだと思います。

ありがとう。アーティストとしてもミュージシャンとしても、自分にできるベストなことは、何が自分にとって心地いいかについて、世の中に対してできるだけオープンでいることだと思うしね。それが、他の人にとっても自分らしくいることに心地よさを感じるきっかけになれば嬉しいわ。みんなでオープンになれればクールよね。

-そうして、あらゆる違いを乗り越えてみんなが心を通わせることができたら最高ですよね。

本当にそう!

-みんなのためにそういう場所を作ってくださってありがとうございます。ところですでにシングル曲がいくつかMVも含め公開されていますが、ブリットポップを思わせるポップで爽やかな曲調で、前作、前々作(2021年リリースのアルバム『Who Am I?』)にあったUSっぽさと比べると、少しUKっぽいアプローチになったようにも感じました。制作するなかでそういった狙いはありましたか。例えばブリティッシュである自分たちのルーツを見せたい、といったような。

そうね。『Smitten』ではブリティッシュ色の強いサウンドを作ることが本当に大切なことだったの。それが私たちの大好きなタイプの音楽だから。THE CRANBERRIESやTHE CURE、COCTEAU TWINSが大好きだし、素晴らしい音楽の中でもイギリスから来たものって多いと思う。ああいうバンドのサウンドが純粋に大好きだからね。私たち、過去にはいろんなタイプの曲を作ってきたし、PALE WAVESはトリックを1つしか持たないバンドじゃなくて、いろんなことができるんだってことを証明できたと思う。でも『Smitten』では、ブリティッシュなサウンドにすることが大事だったの。ヴィジュアル面も全部イングリッシュ(イングランド的)でヨーロッパ的なものにしようと考えて。だから音楽もそういうヴィジュアルに合ったものにしたかったの。自分たちのルーツに傾倒して戻っていったんだと思う。

-それがあなたにとって自然なことだったのかもしれませんね。その環境の中で育ってきたわけですから。と言いつつ、今作を制作する上で苦労したことや、新しく発見したこと等あれば教えてください。

そうね......今度のアルバムでは、今まで入れていなかったストリングスを取り入れてみたの。これまでそうしたこともなければ、そうしようなんて思ってもみなかったのよ。『Smitten』を作るまではね。私にとってストリングスというのは、ロマンチックでドリーミーで優美なイメージのもので、このアルバムはまさにそういうものに感じられたから、多くの曲でストリングスを試してみたわ。そうしたおかげで曲の良さがさらに高まって、新鮮な空気を纏った感じ。それが今回新しくトライしたことね。心から楽しめたから、またどこかの時点で取り入れることになると思う。

-先程ヴィジュアル面の統一という話が出ましたが、今作のMVは今のところ「Glasgow」、「Gravity」、「Perfume」の3本が出ていますね。もしかしたら同じ監督によるものかもしれませんが、どれも映像のトーンが合っていて3部作的といいますか、1つの繋がった物語のようにも見えますが、曲と曲を繋ぐストーリーはあるのでしょうか?

そうね......たしかに美的感覚のようなものには一貫性がある気がするし、MVも似た感じになっているわ。この後、2、3週間後にまた新しいMVを出すんだけど、それも先に出した3本に雰囲気が似ている気がする。一貫性を感じられる世界観を作って、全体として強力なアイデンティティを持つことが大切だと思ったからね。MVもそのあたりを強く意識して作ったの。ファッションとか美的感覚とか、共通しているアイディアも多いしね。キャンペーンや新しいアルバムの世界観を作るときは、その時々のテーマにコミットするようにしているし。だから、みんな似たように見えるとしても、それは意図的にやったことなの。