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INTERVIEW

Japanese

暴動クラブ

2024年08月号掲載

暴動クラブ

Member:釘屋 玄(Vo)

Interviewer:フジジュン

-今回のアルバムは釘屋さんの曲を軸に、ギターのマツシマライズさんの曲や、ベースの城戸"ROSIE"ヒナコさんの曲も収録されてますが、こういうふうにメンバーがやりたいことをできるようになって、バンドの色が出てきたのってどれくらいのタイミングだった?

5月に組んで、7月にU.F.O.CLUB(東高円寺 U.F.O.CLUB)に出ることになりました。U.F.O.CLUBって特別な感じがするんで、オリジナルを作ろうということになり、僕とマツシマが曲を持ち寄って、それぞれがアレンジするみたいなやり方で作りました。今も僕が1人で歌詞とメロディを作った曲や、メンバーが考えてきたコードに僕がメロディを付けた曲を、みんなでアレンジして仕上げています。暴動クラブは4人でひとつの個性となるというバンドではなく、4人の全く違う個性が混ざることなく、4つの色がそのまま出ているバンドなので、この作り方が合っていると思います。

-デビュー・シングルの「暴動クラブのテーマ」は、"暴動クラブはこんなバンドです!"という衝撃が一発で伝わる曲になりましたが、1stアルバムはそれをより分かりやすく解説してるというか、分析してるというか。"暴動クラブはこんな音楽が好きで、こんなメンバーがこんな音を出していて、こんな側面もあって、こういう仕組みでできてます"ってアルバム全体を通じて提示できているのが、すごくいいです。

そこはスタジオのおかげかも知れなくて。さっき話したみたいに、今回は曲もサウンドも意識的にシンプルにしたんですが、スタジオに合わせてシンプルめな曲を持って行ったという理由もあるし。やっぱり音がヴィンテージだから、隙間を多く取ってるんですよ。そこでより分かりやすくなったんじゃないかっていうのはあると思います。

-なるほど。そういった理由もあって、4人の音がくっきり見えてきたし、より伝わるものになったんですね。

できることが限られてて、下手にいじれなかったからこそ、いいものができたというのもあって、切り貼りも"ここから録り直したいです"みたいなこともできなかったので、全部一発録りみたいな感じで進めて、あとは歌とギター・ソロを重ねるだけみたいな。だから、曲によってテンポも途中で変わってたりするし、60年代くらいのいい適当さが出てるんじゃないか? と思うし。でも本来、こんなもんでいいでしょ? みたいな気持ちもあるんです。今はパソコンでどうにでもいじれて、それはそれでいいと思うし、僕も好きなんですが、隙間や適当な部分が多いからこそ人柄が出るじゃないですけど、昔の音楽を聴いてても"この人、ミスってない?"みたいなのがあって。そんなツッコミどころも含めて、面白いと思うんですよね。

-そうですね。0.01秒まで狂いのないビートで出せるノリもあると思うんだけど、人力で鳴らしてるからこそ出せるビートがあって、だからこそ生まれるリアルさや、伝わるものも絶対あって。それって歌もそうですよね?

歌はプロデュースをしてもらった、THE NEATBEATSの眞鍋(崇/Takashi "MR.PAN" Manabe/Gt/Vo)さんにめちゃくちゃしごかれました(笑)。眞鍋さんとの作業はすごく面白かったんですが、一番面白かったのは、入った瞬間にスタジオにめちゃくちゃデカいアメ車のダッシュボードが置かれていたり、昔の機材なんでデッカいつまみが2つくらいしか付いてなかったり、スタジオ自体が映画のセットみたいだったことです。そこでレコーディングできるっていうだけですごく嬉しかったんですけど、録り直しもできないんで、"勝手が違うで?"と最初から脅かされてて、でも録った音を聴いたら、"これじゃん!"って音が鳴ってるから、"やっぱりこの機材でしか出せない音もあるんだな"ってことが分かって、めちゃくちゃ勉強になりました。

-そこで生まれるヒリヒリした緊張感も伝わってくるし、ライヴ感もしっかり感じるし。このアルバムを聴いて"カッコいい!"と思ってライヴに来たら、期待通りのライヴが観られると思いますよ。

嬉しいですし、そういうアルバムになってればいいなと思います。"真鍋塾"みたいなレコーディングだったんで、レコーディングをやる前と比べて"僕ら、すっごく上手くなったな"と思います。

-その気持ちは2ndアルバムで存分に発散してください(笑)。曲はレコーディングに入るときには出揃ってたんですか?

いや、3曲くらいはあったんですが、スケジュールの都合もあってレコーディングが2ヶ月のうちの10日くらいだったので、レコーディングに入ったときにはできていなかった曲もあって、1曲目の「とめられない」とかは最後の日にできた感じでした。

-そうだったんですね! 「とめられない」がいい導入になって、アルバムにすごい勢いをつけてくれるし、1つ象徴する曲にもなっています。

「とめられない」は最初にドラム(鈴木壱歩)の叫びが入ってて、CDデッキに入れたときに叫びから始まるのも面白いかな? と思ったのもあって、1曲目にしました。この曲は本当に歌も楽器も1テイクで録って、すごく雑なんですけど、これ録れて良かったなと思えた曲でしたね。

-客観的には難しいと思いますが、アルバムの楽曲が出揃っての感想はいかがですか?

例えば、僕がレコード屋さんに行って流れてたとしたら、"面白いな"となるアルバムになったと思います。あとは、ロックンロール・バンドのたしなみじゃないですけど、6曲目にBO DIDDLEYの「Road Runner」のカバーが入ってるんですが、60年代のバンドって、みんなこの曲をやってて。今回はTHE PRETTY THINGSってバンドの歌詞と構成でやったんですが、これが入ってるのが、1stアルバムっぽいなと思います。

-そういうロックンロール・マナーも押さえた上で、新しいことをやってるのが面白いです。

例えば初期のTHE BEATLESみたいな制服があるバンドとか、またはカテゴリによる再現性を重視してるバンドもいるんですが、僕たちは衣装も好きなものを着てるし、ロックンロールってくくりではあるけどその中でのくくりのないバンドだからこそ、逆にマナーを踏襲することにより、自由度が上がるので、ロックンロールのテンプレートではなくなる。

-SNSを見ると、暴動クラブを見た人たちが"NEW YORK DOLLSみたい"とか、"初期のTHE YELLOW MONKEYみたい"とか、"毛皮のマリーズみたい"とか、すごく好き勝手言ってますけど、それってすごくいいなと思って。そうやって自分の好きだったバンドと重ねることで興奮したり、喜びを感じたりするのもすごくいいですし、それがそれを知らない若い子たちにとっては新鮮に聞こえるし、ロックへの興味を深めるきっかけにもなるし。暴動クラブって、広い世代に響くロックンロール・バンドだと思います。

ありがとうございます。

-さらにそんなロックンロールの系譜を踏襲しつつ、わざと抜いたり崩したり、そのままストレートにはいかないよっていうひねた部分が見えるのもロックだなと思って。例えば、「カリフォルニアガール」とか、アレンジ次第ではもっと爽快なサーフ・ロックになりそうな曲だけど、そうはしていないじゃないですか?

僕が曲を持っていったときは、まさに"アメリカン・グラフィティ"のサントラに入ってるような、オールディーズ的なサーフ・ロックみたいなものを作ろうと思ってたんですけど、みんなでアレンジして、何回か歌ってとしているうちに、僕たちのいる現代のムードになった。

-僕は"あえてしてない"だと思ったんですけど、"できない"だった?

ドラムの壱歩は、"あえてしない"みたいなところもあるかも知れないですけど、僕は面白ければどっちでもいいんじゃない? って感じです(笑)。言われてみると、時代性が暴れているほうが面白いのかなっていうのは思いますけど。