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INTERVIEW

Japanese

u named (radica)

u named (radica)

Member:令(ハル/Vo/Gt) ヨシダ マサト(Ba)

Interviewer:高橋 美穂

宮城県石巻市出身のロック・バンド、u named (radica)が初の全国流通盤となる6曲入りのミニ・アルバム『Distance to you』を完成させた。東日本大震災をきっかけに2011年に結成した前身バンドから心機一転、u named (radica)と改名したのは今年10月のこと。今作には、それに伴う決意が感じられる丁寧なサウンド・プロダクションと、誰もが胸に抱え続けるノスタルジーの鍵となるような世界観が詰まっている。11月25日には、ライヴ活動の拠点である仙台にあるライヴハウス spaceZeroにてリリース記念イベント"星が出会う頃"が行われる。震災やコロナ禍を経験した彼らの切実な表現に、ぜひ触れてみてほしい。

-まずは、『Distance to you』ができあがった率直な感想、手応えから教えてください。

令:今回6曲入っているんですが、リード・トラックの「アルビレオ」以外もリードを張れると思うぐらい、僕らなりのポップさ、キャッチーさがあって。一曲一曲に僕らの想いが込められた、いい1枚になったと思います。今まで僕らの前身バンドを聴いてくださっていたリスナーさんも、これから出会ってくれるリスナーさんも大事に聴いてほしいです。

-わかりました。では、ヨシダさんいかがですか?

ヨシダ:えー......今までで一番楽しくて、一番つらかったですね(笑)。

令:ははははは!

-それはどういう意味で楽しくって、どういう意味で大変だったんですか?

ヨシダ:今までの自分らの作品の中で、収録曲も一番多くて。作るのはもちろん楽しくて、聴いてくれる方にどのように伝わるかなって思いながらアレンジを進めていくのも楽しかったんですが、それをパッケージすることになったときの作業が多くて、大変でした(笑)。

-具体的に、どのへんで時間がかかったんでしょう。

令:楽曲をひとつに仕上げるまでも、デモの段階からプリプロを重ねて、アレンジしてっていうので時間がかかっているんですが、たぶんヨシダの率直な感想に関しては、できあがった曲のミックスとか、ヨシダだけで進める作業もあるので。

-そもそも、どのへんまでヨシダさんが担っていらっしゃるんですか?

ヨシダ:ドラム以外のレコーディングは自分がエンジニアを務めていて。本来レコーディング・スタジオで行う部分を自分が仕切って、自分のパソコンの中で完結したデータを(マスタリング・エンジニアに)お渡しするという形をとっているので、仕事量としてはちょっと多いかなっていう。

令:ヨシダ以外のメンバーにとっては、RECできたデータの調整を担ってくれているので、柔軟にコミュニケーションがとれるっていう意味でもいいんですが、そのぶんヨシダ・マターなところがあるんで。ベースを弾くとか曲を作る以外にも仕事が多くて、頑張ってもらっている感じです。

-ヨシダさん的にも、できる限り最後まで楽曲の面倒を自分自身で見たい、みたいなところもあるんですか?

ヨシダ:そうですね。つらいとは言ったんですが、自分的に納得のいくところまで、自分の技術が及ぶ限界までは楽曲と一緒にいたいというか、曲に対してのこだわりもたくさんあるので、それがメンバー間だとスムーズにやりとりできますし、結果的にこのバンドにはこういうやり方が合っているというか。もっと自分も勉強して、っていうところもあるんですけど、このスタンスでやれるところまでやれればいいかなって思っていますね。

-前身バンドから数えると歴史もありますが、最初からヨシダさんががっつりやっていらっしゃるんですか?

ヨシダ:3枚目(2015年リリースの1stシングル『Birthday/Bygone Days』)からは、自分がレコーディングに関与しています。初めは単純にコストの問題とかだったと思うんですけど、でも自分ひとりでパッケージするっていうのが、バンドとは別に自分の音楽をやっていくうえでの目標だったので、自分にやらせてくれっていうところもありましたね。

-そういう作品を重ねてきたなかで、今回の『Distance to you』は理想的な仕上がりになったと思いますか?

ヨシダ:やれるところまではとことんやったかなと。どの作品でも自分的にはそうなんですけど、まだ客観視できていないというか。もうちょっと時間が経つと改善点が見えたり、より愛情も深くなっていくだろうなとは思います。

-そもそも『Distance to you』を作る際に、テーマはあったんでしょうか?

令:"Distance to you"というタイトル自体が、リード・トラックの「アルビレオ」から派生していて。今作は、収録曲をひとつにまとめたという流れではなく、僕らがu named (radica)として初めて出すCDのリードが「アルビレオ」になって、ほかの楽曲たちも加わっていったっていう流れというか。あと、タイトルとリード・トラックの関係性についてはヨシダ君お願いします(笑)。

ヨシダ:(笑)令も言っていたように、ミニ・アルバムとしてコンセプトがあったわけではなく、そもそもu named (radica)に改名して1枚目だし、新しいことを始めるときに名刺代わりになるというか、1枚聴いてどれも曲調も違うし、どういうバンドか興味を持ってもらえるような作品であるべきだなとは思っていたので。だから、1枚を通しての流れよりはベスト的というか、u named (radica)のできることを全部詰め込むことを考えたっていう。"Distance to you"というタイトルは直訳すると"あなたまでの距離"なんですけど、改名して自分たちのことを初めて知る人もいると思うんですね。その、今見えない誰かとの距離を思うというか、あなたに出会いたいというか、そういう想いを込めたいと思いました。「アルビレオ」のテーマにもあるところなんですけど、それが新しい1歩を踏み出す僕らの作品のタイトルに相応しいと思って、こうなりました。

-先ほどから話に出てきていますが、バンド名が変わったところが、今のみなさんに大きな影響をもたらしていますよね。そもそも、改名に至った理由とはなんなんでしょうか?

令:前身バンドは僕が高校生の頃に結成して、そこからメンバーの入れ替えもあって今の体制になったのと、そこに加えて、コロナ禍は地方から東名阪とかにライヴに行くことに対して、僕らの住んでいる地域的にもビットが立ってしまうような状況で、音楽活動もうだつが上がらない感じになってしまって。そこから大きく僕らなりに1歩を踏み出したい、音楽に対して覚悟を持ってひたむきに取り組みたいっていうタイミングと、これまでメンバー・チェンジをするなかで改名っていう話も挙がることはあったので、今回全国リリースに合わせて新しくこの名前になったという感じです。

-しかも今はギターの平(達彦)さんが活動休止中なんですよね。バンドにとって、いろんな節目を迎えたなかでの新作になりましたね。

ヨシダ:そうですね。

-だからこそ、決意や想いが音と歌詞にこもっているんだと思います。ここからは、1曲ずつ詳しくうかがっていきたいんですが、今作の核となった2曲目の「アルビレオ」、ヨシダさんが作詞作曲ですが、楽曲が生まれたきっかけは何かあったんでしょうか?

ヨシダ:1曲目の「アンファ」は数年前からあって、ライヴでもやる機会が多いんですが、その対になる曲というか。「アンファ」も「アルビレオ」も同じふたりの登場人物がいて、それぞれの視点からの曲を作りたくって。いろんなサウンドのアプローチだったりが「アンファ」とクロスオーバーするようなものを。できたときに、シンプルにいいって思えて、みんなに聴いてもらったときも"いい"っていう反応が返ってきたので、これをリードとして軸にして(ミニ・アルバムを)進めていこうかっていうきっかけになりました。

-「アルビレオ」は白鳥座のアルビレオという3等星で、「アンファ」にも"月"という歌詞が出てきます。そこも関連性がありますが、そもそも星や月って、ヨシダさんの創作のインスピレーションの源になるものなんでしょうか?

ヨシダ:そうですね。風景や絵、自分の頭の中にある思い出、心象風景からインスピレーションを受けて曲を作ることが多いので、星や夜空はその中のひとつにはありますね。