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INTERVIEW

Japanese

モノノケノノモ

2022年09月号掲載

モノノケノノモ

Member:YM(Vo/Gt) 梨本 うい(Ba)

Interviewer:フジジュン

-アルバムの1曲目とラストを飾る2曲ですが、すごく対局的な曲でもあって、ふたりの色がハッキリ出てますね。

梨本:そうですね。僕らの曲は新曲作るたびにライヴでやって、"どっちが作った曲だと思う?"ってお客さんに聞くんですけど、だいたいバレます(笑)。

YM:ただ、今でこそ思わないですけど、最初に1曲持ち寄るってなるときは俺、梨本さんらしさをめちゃくちゃ意識してて。"俺が考える梨本ういの曲はこれだ!"って作ったのが、「なんにもない子ちゃん」でした。

梨本:それは逆もしかりで、"一緒にバンドをやるなら相手に寄せたい"みたいな気持ちは僕もあったんですけどね。

YM:お互いあったはずなんだけど、だんだんなくなってきて。"ま、いいか"って(笑)。"これをモノノケノノモでやったらどうなるか?"くらいは考えますけど、基本的には好きなことをやらせてもらってますね。

-僕はアルバムを聴いて、モノノケノノモがどんなバンドなのか? が少し見えてきたとき、他の曲と印象の異なるダークな「不和り」を聴いて、こんな一面もあるんだと驚いたんですが。この曲が最初にできたと聞いて、さらに驚きました。

梨本:そうなんです。どうやってこの曲ができたかも覚えてないんですが......。

YM:梨本さん、それたまにあるよね。デモが送られてきて、"いい曲じゃん!"って聴くんだけど、次の日になると"これ誰が作った曲?"って。酔っ払って記憶をなくしてて、自分が作ったことを覚えてないんですよ(笑)。

梨本:ひとり酒をしながら曲を作ってて、朝起きたらデモができてるときがあるんです(笑)。

YM:今回でいうと、「負けロック」がそうですね。"これってYMさん作ったんですか?"って聞かれて、"いやいやいや!"って(笑)。

-"バンドやろう!"って最初にふたりが作った曲が、入り口と締めの曲になっていて。振り返ってみると、このバンドでふたりがやりたかったことや方向性って、最初から見えてたんじゃないか? とも取れますよね。

梨本:そうかもしれないですね、ライヴのときもその曲順は変わらなくて。

YM:"最初に「なんにもない子ちゃん」やって、最後は「不和り」だよね"みたいなね。だから、CDを聴く人もライヴ感あっていいのかな? って。

-あと僕がいいなと思った曲が、「ラブソングが響いている」。言葉にできない君への想いを歌ってますが、それってバンドや曲作りの根幹にあるものだと思って。言葉にできないから言葉を綴り続けるし、叫び続けるし、爆音を鳴らし続けるんだろうなと。

YM:あ~、そう言われると恥ずかしくなってきました(笑)。

梨本:でも、それがさっきも言った、"自分では絶対に歌いたくないこと"なんですよね。

YM:その話をしたときに浮かんでたのは、まさに「ラブソングが響いている」だと思います。

梨本:そう、ラヴ・ソングも好きなんだけど、自分で歌うのは恥ずかしいし。創作物だから、嘘も出てくるんだけど、ラヴ・ソングの嘘はあまり歌いたくなくて。歌わせるぶんには、"嘘ついちゃってくださいよ"みたいな感じで。

YM:俺は俺で"人が作った曲だし"って割り切って歌えるし。

梨本:だから、それこそ今のバンドだから作れた曲だと思ってますし。僕の作った7曲の内、半分以上は自分では歌えない曲です。

YM:「ラブソングが響いている」はライヴハウスの店長さんからも評判良くて、"いい曲だよね"って褒められたのが印象的で。バンド好きには結構刺さりがちなのかなと思ってます。今褒めていただいてまた確信に近づいたし、自分でもいい曲だと思うので歌うのが楽しいです。

-この想いが根幹にあってと考えると、「なんにもない子ちゃん」とかも情けなくて惨めで無様な自分を吐き出してるんだけど、決してそれで終わっていなくて。言葉にできない言葉を吐き出したところから生まれる、仄かな希望みたいなものを感じるんですよね。

梨本&YM:ありがとうございます。

-YMさんは曲を作るとき、歌詞を書くときに大事にしてるところはどこですか?

梨本:YMさんが以前言ってたのは、"人のためみたいな曲は作れない"って。

YM:そうですね。あんまり人間に興味ないし、一番知ってるのは自分のことだから。結局、自分の葛藤なり、内面のことしか曲にできないなというのは感じてて。歌詞に関して意識してるのはそれくらいですね。メロディに乗せる言葉のリズムとか、歌い終わりをどの母音で伸ばせば映えるかな? とか、楽曲の形式的な部分を意識してしまうし。だからなかなか歌詞が書けなくて、歌いたいことがあんまりないんです(笑)。

-それでなんとか書き出したら、リズムや母音にこだわりすぎて進まなかったり?

YM:そうですね。一応、歌のテーマや体裁は保たなきゃいけないから、形だけ追っていって、"これをどうまとめるんだろう?"って悩んだり。だから、メロだったりオケだったり、側の部分を作るのは得意なんですけど、歌詞が苦手なんですよね。

-梨本さんが曲や歌詞で大事にしてるところはどこですか?

梨本:僕は基本的にキラーフレーズをひとつ決めて、それを軸に作るんです。僕の中でレミオロメンの「粉雪」理論って言ってるんですけど、タイトルをサビの一番強いところに持ってくるっていう(笑)。ライヴハウスベースで考えたとき、知らないバンドを観たときに曲ってほとんど覚えてないし、歌詞も9割5分聴こえないと思うんですけど、レミオロメンの「粉雪」を聴いたら、"粉雪"ってワードだけは残るだろうなと思うんです。だから、キラーフレーズを定めて、そこに肉づけしていくという曲作りが僕の中では9割5分です。

YM:あ、そんなに? そんなに多いんだ。

梨本:そうそう。歌詞が先、メロディが先とかじゃなくて、キラーフレーズが先。だから基本的にはタイトルから作って、それをどう聴かせるかですね。で、残りの5分は酔っ払って考えてるんで、何を考えてたか覚えてません(笑)。

YM:たしかに「不和り」もまんまそうだもんね。それでいうと俺、最初にギターやベースのリフとかから考えちゃうから、歌詞が出てこないのかもしれない。

-演奏面はあまり音数も重ねず、リフが耳に残るシンプルなアレンジになってますよね。

梨本:ギターも多くて2本くらいしか重ねてないですしね。

YM:音源良くて、ライヴでがっかりされるのも嫌だしね。ライヴと音源は別モノだけど、あまり乖離しすぎないようには考えてます。

-3ピースならではの骨太さや痛快さもあります。

梨本:サウンド面のこだわりは他のバンドと比べて、著しく低いと思うんですけどね。

YM:"こだわりがある"って言ったら、怒られるレベルだよね(笑)。俺、未だにギター・アンプの使い方ちゃんとわからないですから。ただ本来、大事にしなきゃいけないところはどこなのか? ってところは見えてて、"音質にこだわるよりも、気持ちを込めて曲をやったほうが好きだな"と僕は思ってます。バンドを十何年やってきて、音質に興味を持ったりこだわったりできないから、俺はそういうタイプじゃないんだろうなという諦めでもありますけど(笑)。

-1stアルバム・リリース後の目標はいかがですか?

梨本:今作の収録曲以外にも新曲を3、4曲くらい作ってて、ライヴでももうやってたりして。ここからはまたパッケージ化できるくらい、曲を作っていきたいですね。

YM:もともと、"来年またアルバムを作ろう"って話してたもんね?

梨本:そう。だからここからさらに頑張って制作して、曲を作り溜めて、今までとは違った、新しいこともやっていけたらいいなと思っています。