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INTERVIEW

Japanese

POETASTER

2021年09月号掲載

POETASTER

Member:高橋 大樹(Vo/Gt) Fuma-Z(Dr/Cho)

Interviewer:秦 理絵

-なるほど。新しい体制でのレコーディングは、いかがでしたか?

高橋:めちゃくちゃ楽しかったですね。

-やっぱりそれに尽きるんですね。

高橋:前回と環境を変えて、違うスタジオで、違うエンジニアさんとやらせてもらったんですけど。ずっとやってもらいたかったエンジニアさんだったんです。ANDREW(ANDREW FOULDS)さんっていう。僕はメロコアとかハードコアを聴いて育ったので、すごくリスペクトしている人なんですよ。というか、芸能人ぐらいの気持ちで接してたので。最初はすごく緊張したんですけど、すごく楽しかった。レコーディングって、こんなに楽しいんだって思いました。

-具体的に言うと、どういうときに楽しさを感じるんですか?

Fuma-Z:(ANDREWが)こっち側のノリでいてくれるというか。

高橋:そうだね。あと、サポートのふたりも上手だし、できあがっていくのを聴いてめちゃくちゃかっこいいなって。苦痛を感じた時間が1ミリもなかったです(笑)。以前だと、シビアになっちゃったりね。ブースには誰も入れない感じだったけど。

Fuma-Z:(今回は)みんなブースにいたもんね。

-最初のほうにできたのは、どのあたりの曲ですか?

高橋:「君に話があるんだ」は前からデモができてたので、それ以外だったら、最初は「望碧」(読み:ノア)か、「HEART OF GOLD」かな。

-「HEART OF GOLD」が最初のほうなのは納得ですね。このメンバーでやるのが楽しいっていう雰囲気が溢れてるというか。まるで冒険に出るようなワクワクする曲で。

高橋:それこそ"ONESHIP TOUR"みたいな感じの曲を作りたかったんですよ。"ONE PIECE"のオープニングみたいな(笑)。

Fuma-Z:最初にできあがったデモをみんなで聴かせてもらったときに、(高橋は)"これ、大丈夫?"みたいな、不安そうな感じだったんですよ。で、むしろ3人が"え、これいいじゃん! やろう!"って言ってて。

高橋:そうだね、言ってくれてたね。

Fuma-Z:今まで持ってきた曲の中でもかなりクオリティが高かったんです。

-嵐が来たって突き進む、という歌詞のテーマも前向きで清々しいです。

高橋:これは自分の現状をそのまま歌ってますね。

-1曲目の「GIFTSONG」は、"夢が夢で終わらないように"っていう想いを、まさにギフトのように、"君"に捧げるように歌っています。何か作るきっかけがあったんですか?

高橋:さっきも話に出ましたけど、この状況で活動が止まっちゃう友達とか、夢をあきらめちゃった友達もいっぱいいるんですよ。でも、夢をあきらめたところまでで自分の人生を終わらせてほしくなかったんですよ。そこで自分が不幸だなと思っちゃったら、今までの人生も全部否定することになっちゃう。そういうふうになってほしくないな、と思って書いたんです。レコーディング直前まで、うまく歌詞がハマらないなと思ってたんですけど。そいつらのことを考えながら書いたら、すごく書けたっていう曲です。

-この曲もそうですけど、今回のEPは、聴き手が見える曲が多いですよね。夢をあきらめかけた人、過去を否定してしまいそうな人に対して、そうじゃなくていいって歌ってる。

高橋:今思えば前作までは、もちろんみんなに聴いてほしいと思って作ってるけど、なんとなくぼやけてたかなっていう反省があったんです。"みんな"っていうのが明確じゃないっていうか。今回のほうが、"聴いてくれる君"へ歌ってるんだぜって、指さして歌ってる感じなんです。僕もライヴを観に行って思いますから。"この人、俺のために歌ってんじゃねぇかな"って。俺もそれをやらなきゃっていう感じですかね。

-なるほど。「望碧」は、今回のEPの中では初期っぽい曲だなと思いました。ポップで、ちょっと切ないメロディアスなディアム・テンポ。

高橋:あぁ、そうですね。この曲はサポートのYoshiさんが持ってきたんですよ。

-そんなふうに作ることもあるんですか。

高橋:"これにメロディ乗っけてみてくんない?"みたいな感じで、仮のメロディが入ってて。Yoshiさんは、僕が高校生のときに、ずっと見てたWords Weedsっていうバンドのギター・ヴォーカルなんですけど。そのバンドの感じを「望碧」からは感じたんです。もらって、20分ぐらいでメロディで歌詞をつけて返したんです。そしたら、"めちゃくちゃいいじゃん"って返ってきて、よかったって思いました。

-Yoshiさんには、"曲を作ってほしい"っていうようなお願いをしていたんですか?

高橋:言ってないですね。このギター・リフがかっこいいから、これで曲を作ってよっていうことはあったんすけど。ここまで、ちゃんとデータで送られてきたのはなくて。

-どうして急に作ってくれたんですか?

高橋:"こういう曲が合うと思うんだよね"みたいに言われて。

Fuma-Z:聴いたとき"わ、すげぇ曲きたな"って思いました。で、最初昔の大樹さんが好きだったようなバンドの感じを挟んでみようかな、と思ったんですよ。フジファブリックの「若者のすべて」みたいな。そこから、今のかたちに落ち着いていって。

高橋:ああいう歌詞とメロディを大事にした曲がいいよねって。

Fuma-Z:そうそう。

高橋:今回のアルバムは全体的に初期の感じに戻した感じがありますね。初期衝動って大事じゃないですか。自分の中で1st(2017年リリースのミニ・アルバム『声命力』)の曲に自信があったんです。めっちゃかっこいいと思ってて。そこからいろいろな変化があったけど、今回はあのときの気持ちを思い出して作りたいなと思ったので。こういう感じになったのかなと思います。

-この曲の"望碧"というタイトルは造語ですよね。

高橋:キラキラネームみたいですね(笑)。これは、最後に"絶望に HOPE 秘めて/どこまでも行こうよ"って歌ってるところからですね。絶望の中に希望をどう見いだすか。最初、仮タイトルで"絶望"だったんですよ。でも、どっちかというと一筋の光みたいなイメージの曲にしたかったから、"碧(みどり)"って、うつっぽい意味を色にたとえたっていう。その絶望の中の希望みたいな。で、"ノア"って付けたら、Yoshiさんが乗ってる車がノアだったので。これ、ちょっと説明するのが面倒くさいときは、あの人の車がノアだからですって言ってます(笑)。

-はははは(笑)、あとは、ノアの方舟にかけてるようにも受け取れますよね。大洪水から人間を救ったものという意味でも、何か一筋の希望を表しているような。

高橋:そうそうそう。

Fuma-Z:俺、最初はそっちの意味かなと思ってた。

-「君に話があるんだ」は、ラストを締めくくるのに相応しい曲ですね。"君"の存在をすべて肯定して、語り掛けるような曲になっていて。

高橋:どんどん大事な曲になっていったっていう曲なんですよね。(2019年に会場限定シングル『君に話があるんだ』で)出してから、ライヴでもやっていて。自分は裸の心でステージに上がってるんですけど、観てる人たちって、最初は心にすごい厚着をしてるんですよ。そのなかで、いかに心まで辿り着くか、みたいなところがあるんですけど。この曲をライヴで最後に歌ってるときに、すごく近い距離になれたなって感じることが多いんです。ちゃんと届いてる感じがするというか。自分もまっすぐに歌える曲だなと思いますね。

Fuma-Z:できたのは3年前だったけど、ほとんど変えてないんです。

-当時、どんな想いで作った曲だったんですか?

高橋:この曲を収録する予定だったアルバムをトラブルで出せなくなっちゃったんですよ。で、ツアーは決まってたから、やろうってなって。何も持っていかないのもなと思ってそのときの事務所に、"自分たちでお金を払ってCDを作るので、CDを持ってってもいいですか?"って言って。初日からゲリラ発売したんです。そのときに、ちょうどPaddy fieldと出会ったのかな。この曲も聴いてくれてて。今でも、あのときのライヴは良かったよなって言ってくれるんですよ。だから、僕らにとっては(今のレーベルとの)出会いの曲というか。聴く人には関係ないかもしれないですけど。

-バンドのストーリーとして大事な曲だったんですね。

高橋:そうですね。ようやく(このレーベルの)2作目で入れられて良かったです。

Fuma-Z:もっと聴いてほしいなっていう曲ですね。

-今作は、「GIFTSONG」で幕を開けて、最後の「君に話があるんだ」に至るまで、まさに"君"に向かっての想いを詰め込んだ作品だから、"The Gift of Sound e.p."というタイトルがぴったりだなと思いました。

高橋:贈り物みたいな感じですよね。どう捉えられてもいいんですけど。これを聴いて元気になってほしいなって思うんですよ。なかなか会えない人にも届いてほしいし、自分たちが元気だっていうことも伝えられたらな、と考えてます。

-このEPを引っ提げた全国ツアー"君に話があるんだTOUR2021"が9月からは始まります。全14本、どんなツアーになりそうですか?

Fuma-Z:今までよりも大事なツアーになるような気がしてます。......今までが大事じゃなかったわけじゃないんですけど(笑)。今の4人になって初めてのツアーなんですよね。紆余曲折もあったけど、ちゃんとステップアップしてるところを見せたいです。

-強いメッセージを込めた作品を引っ提げたツアーでもあるから、これをいかに届けるか、という意味でも大事なツアーになりそうですね。

高橋:そうですね。曲って、ツアーで育つじゃないですか。なので、最後のクアトロ(渋谷CLUB QUATTRO)で、自分がどんな気持ちで、どんな想いを乗せてこのEPの曲を歌ってるのかがすごく楽しみなんです。一本一本、ライヴの空間を大切にできたらと思ってます。

-最後に言い残したことはありますか?

高橋:なんかある?

Fuma-Z:今の俺らはめちゃくちゃいい感じです!

高橋:うん、いいね。そういうのはどんどん言っていこう(笑)。