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INTERVIEW

Japanese

ヤなことそっとミュート

2021年01月号掲載

ヤなことそっとミュート

Member:なでしこ 間宮まに 南一花 凛つかさ

Interviewer:宮﨑 大樹

「遮塔の東」は、ヤナミューというものを体現しているような曲


-「結晶世界」は、厳しい冬景色が情景として浮かび上がってくる曲でした。

まに:ヤナミューの初期の曲は、ヴォーカルが小さくて後ろのバンドの音が大きめだったんですけど、最近は歌のボリュームも上がってきたなと思ってたんです。でも「結晶世界」を聴いたとき、"ギターの音がでかい!"と感じて。

なでしこ:インディーズ時代に「AWAKE」や「HOLY GRAiL」(2018年リリースのアルバム『MIRRORS』収録曲)を作詞してくださったニイマリコさんが久々に作詞をしてくださった曲で。それもすごく嬉しかったですし、一人称が"私"だったりして、女性ならではの歌詞だなと思っています。アルバムの中でバリエーションを増やす意味でもすごく素敵だなと。仮歌を初めて聴いたときに、最後の"私じゃ 悔しい"というところは絶対まにさんがいいなと思っていたんです。そうしたら本当にまにさんになっていて"やったー!"と(笑)。完成版を聴いたら、想像以上にまにさんの"私じゃ 悔しい"が良くて。

まに:悔しそうだった(笑)?

なでしこ:聴いたとき"これこれ!"って(笑)。私は仮歌を聴くときに、ここは誰が合いそう、誰が歌ったら素敵だろうなとか考えるんですけど、それがかっちりはまって嬉しくなりました。

一花:私も、ここを歌うのはまにさんだろうなと思ってました(笑)。

-そういう共通見解があるんですね。

まに:レコーディングのときに、ハッピーな感じに歌ってほしい曲でも、ちょっと悲壮感が入っちゃってるみたいなことをよく指摘されるので......(笑)。

一花:音も少ないところなので、まにさんの声が際立っていて、いいなという感じでした。

-音と歌詞がすごくマッチしていますよね。"この歌詞しかないんじゃないか?"と思えるくらい。

一花:和風っぽい印象もあって。それも歌詞にマッチしてる要因なのかなと思います。「結晶世界」は今インストで一番聴いている曲です。改めて聴いていくと、ギターやベースなどのいろんな音が聴こえてきて。「結晶世界」は特にギターがカッコいいなと思っている曲で、好きですね。

-"この世界"を契機に始まる2番から、サウンドのイメージがガラッと変わって盛り上がっていきますよね。ベースがうねうねしたり、裏を取ったり、後半の畳み掛ける感じも良くて。曲の展開がすごく好きです。

つかさ:私は"身悶えしては"からの流れが特に好きですね。

-「D.O.A」は以前からライヴで披露している曲です。

つかさ:最初はなんて不穏なタイトル(※"D.O.A"="到着時死亡確定")なんだと思ったんですけど、意外と明るい曲なんですよね。

なでしこ:応援してくださっている方がずっと音源化を待っていたので、実現できて嬉しいです。ヤナミューの曲の中では珍しく、いい意味で気軽にみんなで楽しめる曲。ファンの方も振付や手の動きを真似してくださったりするんですけど、そういうポジションなのかなと思います。

-サビのメロディが明るいのが特徴的で。ヤナミューの中で、こういう明るいメロディは珍しい気もしました。

つかさ:メロディや歌詞がアイドルっぽいなと。サビの"I will break your heart"という歌詞から"ライヴでは心を閉ざさずに開いていいんだよ"みたいなお客さんへのメッセージ性を感じました。アイドル曲だなと思います。

まに:私はむしろバンド曲だと思っていて。アイドルらしさというよりも、どちらかというと「Sing It Out」に近い、バンドで歌っている印象がお披露目のときからある曲なんです。

-ちなみに、このタイミングで音源化されたのはなぜだと思います?

一同:タイミングかぁ......。

-入れるタイミングは常に見定めていたわけですよね。

プロデューサー:これまでに出したタイミングの音源とは若干毛色が違ったので、温存していました。制作当初は"思ったよりかわいくなっちゃった"と感じたんですけど、今回はそういうポップさも欲しかったので今回だなと。

なでしこ:ずっと前からライヴで披露してた曲だったので、ライヴで歌い慣れた、いい意味でのクセやノリが音源に出たんじゃないかなと思います。普段だったら披露する前にレコーディングするので、そういう意味ではヤナミューの音源としても新鮮だなって。すごくライヴ感を感じました。

-そしてアルバムの最後は「遮塔の東」です。アルバムとして壮大という面があると思うんですけど、それを象徴するような曲で。ライヴハウスよりかはホールとか――

まに:わかります(笑)! ホールとか、大きい野外フェスで歌いたい印象がありました。

なでしこ:山の山頂で歌ったらめちゃくちゃ気持ちいいんだろうなと。今回一番好きな曲です。前にMCで話した、アルバムをひと言で表すなら"青い炎"というのを特に表していると感じていて。見た目は静かで、クールな青い炎だけど、実は赤い炎より熱いじゃないですか? 実はめちゃくちゃ熱く燃えている、というのがこの曲に合っているなと。

-見た目は静かだけど熱く燃えているって、私がイメージするヤナミュー自身でもあります。みなさんって見た目的にはいわゆる少年漫画的な、熱血系な方々ではないじゃないですか。でもこの活動に対して確固たる意志を持ってやっているイメージがあって。だからこそ、この曲のイメージに合っているというか。

まに:音楽を聴いていると"この曲は私のために書かれた曲だ!"とか、"私のことを歌った曲だ!"と感じることって、人生で1回はあると思うんですよね。私はそれを「遮塔の東」で感じた部分があって。すごく歌詞に共感したんです。自分が今やっているアイドルって、儚いものだという印象があるので"一瞬の光 それしかいらない/燃え尽きた後も 忘れられないように"とか、アイドルとして4年間やってきている自分と重なって、うるうるしました。

一花:まにさんと一緒で、歌詞を見たときにアイドルのことだなと思って。メンバーの共通認識とマッチしているところがすごくあります。"高く手を伸ばすには/満たされてちゃいけないし"という歌詞があるんですけど、そこもかなり共感していて。自分の気持ちとマッチしているというか、ヤナミューというものを体現しているような曲なのかなと。

つかさ:最初の仮歌の時点では"am I 2"という名前だったので、それもあって「am I」(2017年リリースのアルバム『BUBBLE』収録曲)のアンサー・ソングとして歌っていました。個人的な歌のポイントとして、歌をしゃくるのが自分の悪い癖で矯正中だったんですけど、「遮塔の東」では"しゃくっていいよ"と指示が出されたんです。いい感じにしゃくることができたのは良かったと思います。

-アイドルの儚さとありましたが、2020年はよく共演してたグループでもいろいろあったじゃないですか?

なでしこ:そうですね......。アイドルの儚さとかもですし、アイドル・シーンだけじゃないですけど、2020年を表している楽曲だなと思って。私も感情移入という意味では、「遮塔の東」が一番ですね。

-さて、本作の初回限定盤にはインディーズ時代の曲の"Re-vocal Edition"が収録されています。選曲についてはいわゆるアンセムを選んだのかなと思いますが、トラックリストを眺めたときに感じたことはありますか?

まに:納得の、という感じですね。自分で選ぶとしてもわりとこうなるんじゃないかというくらい、ヤナミューのインディーズ時代のいいところや、いろんな面がギュッと詰まった選曲だなと思います。

なでしこ:初期の『BUBBLE』、『MIRRORS』からの曲が多めなんですけど、再録はいつかしたいという気持ちが前からあって。『BUBBLE』、『MIRRORS』は、歌い方とか表現以前に声質が違うんです。だから再録できて良かったと思いますし、手応えも感じた音源になりました。

一花:私も初期と比べて声色がかなり変わっていて。というのも慢性の副鼻腔炎の手術をしたことがあって、初期のころはもう鼻詰まりまくりみたいな感じだったんです。そこは顕著に違うんじゃないかなと。

-つかささんは加入前の曲のレコーディングなので、再録に対する感覚が違うかもしれませんが、どうですか?

つかさ:「am I」、「HOLY GRAiL」、「Nostalgia」、「ラング」とかは、ライヴでできていないんですけど、レコーディングで初めて歌って、音源化できてすごく嬉しかったですね。ずっと歌いたかったので。好きな曲を歌えるって嬉しいじゃないですか? だから完成版を聴いたときも感動しました。もともとみんなの声が入ったものを聴いて練習していたので、全然上から目線とかじゃなく、みんなの声が変わっていて感動したし、ファン目線で聴いて、いいリレコだなと思いました。

-ライヴでいうと、1月11日にVeats Shibuyaでワンマン・ライヴ"ヤなことそっとミュート presents Beyond The Blue"がありますね。

なでしこ:タイトルがまず"Beyond The Blue"なので、アルバムの新曲の披露もあると思います。この間、久々に有観客でライヴをして感覚は戻った感じがしたんですけど、個人的に反省点もあったので、それを踏まえたうえで1月11日はさらにいいものにしたいです。2021年の初ライヴにもなるので"今年はいいものになるだろうな"と感じてもらいたいですし、それこそ"Beyond The Blue"という言葉にも、そういった意味があるなと感じています。そういうふうに思ってもらえるようなライヴになればいいなと。

-それが楽しみです。ところで、2021年はどんな年にしたいですか?

まに:人生に向き合いたいなと思います。

-2020年は活動が制限されたぶん、人生に向き合う時間があったというアーティストは多かった印象ですけど。

一花:2020年を経て、という感じですね。2020年があったからこそ、2021年はもっと考えなきゃなという気持ちがあります。

なでしこ:未来のことも見据えて、いろいろ考えていきたいですね。