Japanese
サキヲ
2020年12月号掲載
Member:SAKIWO(Vo) TSUYOSHI(Gt)
サウンド・プロデューサー/ドラマー:TOSHI NAGAI
Interviewer:山口 哲生
ヴォーカルのSAKIWOを中心に結成されたロック・バンド、サキヲ。4人が高鳴らすのは、力強く、ギラギラと煌びやかに輝く、ド直球ともいえるロック・サウンドだ。薄暗い影やもやのかかる時代に、真っ向勝負を仕掛けるかの如くぶちかますパワフルな楽曲群は、名だたるロック・アーティスト/バンドのライヴやレコーディングを手掛けているドラマー、TOSHI NAGAIがサウンド・プロデュースを担当。今年頭から一丸となって制作していた楽曲の中から選んだ渾身の3曲を、12月に3週連続で配信することとなった。初登場となる今回のインタビューには、バンドからSAKIWOとTSUYOSHIのふたりと、TOSHI NAGAIも同席。ロックを愛し、ロックの可能性を信じて疑わないバンドが思う、ロックとは何か。
"ロックっていうとバンドだな"と思った理由が、今ならわかる
-結成の経緯からお話をお聞きしきたいんですが、SAKIWOさんとTSUYOSHIさんが初めて出会ったのはいつ頃になるんですか?
SAKIWO:初めて会ったのはもう10年前ぐらいですね。共通の知り合いがいるんですけど、自分がバンドをやりたいと思って相談したことがきっかけになって、今のメンバーが集まった感じでした。
-SAKIWOさんとしては、昔からバンドがずっとやりたかったんですか?
SAKIWO:歌はすごく好きではあったんですけど、ある日突然、ロックがやりたいと思った瞬間があったんですよ。それで"ロックっていうとバンドだな"と思って、相談した感じではあったんですけど。
-なぜまたある日突然思ったんでしょうか。
SAKIWO:いろいろと溜まっていたんですかね(笑)。自分の思い通りにならないこととか、大人から言われるいろんなこととか、悔しさや、もどかしさみたいなものがあって。それを吐き出したいと思ったときに、ロックをやりたいと。
-ロックをやりたいと思ってから、音楽的な趣味嗜好って結構変わりました?
SAKIWO:そうですね。それまではJ-POPばっかりだったんですけど、今のメンバーは音楽に詳しいので、いろんなものを教えてもらって、洋楽に興味を持ち始めたりとか。そこが一番変わったかなと思います。それまでは歌詞が何を言っているのかわからないから、洋楽を少し敬遠していたところもあったんですけど、その楽しさを教えてくれたのはメンバーだったので。
-教えてもらったものの中で特に印象深かったアーティストというと?
SAKIWO:曲を聴いてというよりは、このライヴ映像がすごくかっこいいというので見せてもらったのが、THE ROLLING STONESだったんですけど。すごく派手なセットでMick(Jagger/Vo)が踊り狂っていて、お客さんが熱狂しているあの光景を見たときに、自分の中で音楽をやる規模のサイズ感が一気に変わった気がしました。スタジアム・ロックっていうんですかね。それを知った瞬間に、すごい......! と思って。
-昔の音楽をいろいろ教えてもらうことが多かったとか?
SAKIWO:そこは今も勉強中という感じなんですけど、今音楽をやるうえでも先人が築いてきたものってすごく大切だと思いますし、ベーシックとして持っておく必要性はすごく感じているので、昔の曲も聴きますね。あとは、(※Skream!11月号の表紙を見て)それこそTHE STRUTSとかもそうですけど、パフォーマンスをメインで感じ取っているところが大きいのかもしれないです。煌びやかなものにすごく惹かれますね。
-TSUYOSHIさんとしては、当時のSAKIWOさんが何かしら沸々と抱えているものがある印象はありました?
TSUYOSHI:ありましたね。最初はどういうことがやりたいのか探り探りではあったんですけど、熱量がすごくて。それこそTHE ROLLING STONESの映像の話も、マーティン・スコセッシが撮った映画("Shine A Light")を教えたんですね。それを食い入るように観て、彼女の口から出てきた言葉が、"THE ROLLING STONESと東京ドームで対バンしたい"で。そこに熱のすごさを感じました。あと、THE STRUTSはイギリスまでみんなで観に行ったんですよ。
SAKIWO:私、日本で観るよりも先にイギリスで見たんですよ(笑)。
-すごいですね、その状況(笑)。
SAKIWO:本当に贅沢な時間でしたね。映像で観たときからパワーが半端なかったんですけど、やっぱり生で観ると、オーディエンスを動かす力っていうのかな。意識せずにこっちが踊らされているみたいな。そこはやっぱりすごいなと思いましたし、現地の人たちの音楽の聴き方、楽しみ方みたいなものも空気で伝わってきて。オープニング・アクトも多かったんですけど、楽しいと思ったものにはみんな素直に反応していたし、出てくるバンドによっての反応もたくさん感じられたのは、すごく大きかったなと思いますね。
-現地じゃないとわからないことって多いですよね。今日の取材には、バンドのサウンド・プロデュースを務められるTOSHI NAGAIさんにも同席していただいていますが、おふたりと初めて会ったのはいつ頃でした?
TSUYOSHI:2年前ぐらいとかですね。
NAGAI:"いいバンドがいるので"っていう話でライヴハウスに連れていかれて、そのときにライヴを観たのが最初ですね。そのあとにちょっと食事をしながら話しましたけど、ステージと客席で出会ったのが初です。
-ライヴを拝見されたときにどんな印象を受けました?
NAGAI:若手の子に誘われてライヴによく行くんですけど、才能があるからどうとかよりも、原石としてちゃんとしているかどうかをいつも見るんですよ。上辺がすごくカッコ良かったりして、ウケているんだろうなとは思うけど、これは中身がないなとか。そういうときはアドバイスとかするんですけど。このバンドの場合は、まだまだ荒削りなんだけど、ひとりひとりを見ていくと原石には見えたんです。磨く前のダイヤモンドみたいな感じで、まだまだ全然曇ってはいるけど、そこにプロがうまく関わっていくことで光り出すんじゃないかなって。それを、連れて行ってもらった人に話しましたね。"見込みはあるよ"って。
-そのきっかけから今回に至ったと。
NAGAI:最初はお手伝いみたいな感じだったんですよ。ちょっと話すだけでも変わると思うからというので、リハーサルに行ったりして。それからレコーディングすることになったときに、プロデュースをという話になりました。だから、すごく自然な流れではありましたね。
-SAKIWOさんは、初めてTOSHIさんと会ったときの印象というと?
SAKIWO:(フロアに)TOSHIさんがいるのがすぐにわかったんですよ。普通とは逆で、私たちがステージからTOSHIさんを見るっていう。
TSUYOSHI:こっちとしては、ステージにいるTOSHIさんを見続けてきているからね。
SAKIWO:そうそう。そういう状況だったのに、オーラがすごくて(笑)。
NAGAI:こっそり観てたんだけどね(笑)。
SAKIWO:いや、こっそりになってなかったです。勝手に(オーラが)出ちゃってるっていう(笑)。でも、お話させてもらうと本当に気さくで、いろんなことを柔らかく教えてくださって。TOSHIさんって、ずっと変わらないんですよ。ずっとフラットな感じという言い方をすると、もしかしたら失礼になってしまうかもしれないんですけど、常に変わらなくて。その姿勢にもプロの方の意識の高さを常に感じるというか。本当に横にいるだけで勉強させてもらっている感じですね。
-TOSHIさんとしては、フラットでいることは常に心掛けていらっしゃったりするんですか?
NAGAI:心掛けているわけではないけど、長年やってきて、このステージのために自分を変えるみたいなことが面倒になってきたんですよ。例えば、1ヶ月後に東京ドームでライヴがあるから、そこに向かって体調管理を始めて......というのがめんどくさくて(笑)。だから歩くように、ご飯を食べるように、空気を吸うようにドラムを叩いてそのまま東京ドームに立つというか。常に自然にしていれば、気負って緊張することもないし、常にそれができる状態でいるから、"明日東京ドームで叩いてください"って言われたら、すぐやれますっていう。それで常にフラットでいられるようになったんですかね。
-それはずっとそうしてこないとできないことですよね。
NAGAI:そういう思考になったって感じですかね。遊んでいても、仕事をしていても、身体が疲れるのは一緒じゃないですか。でも、遊んでいるときは楽しいから精神的に疲れを感じないけど、仕事だと"疲れた"って言ってしまう。ドラムを叩くこともそれと一緒だなと思って。それを常に自然なこととして自分の中に取り込んでおけば、"来月東京ドームだ......"みたいに、ナーバスにもならなくていいし。でも、僕が出会ったミュージシャンはほとんどそうですよ。特にGLAYとかは、本当に自然体で自由にやってきたメンバーだし、だからこそ、あれだけ大きなことができていると思いますね。
SAKIWO:こういう話を常にたくさん話していただけるので、自分が人間的に成長したような気持ちに、勝手になっちゃう感じがあるんですよ(笑)。
TSUYOSHI:これまで何人かプロデューサーの方々とお会いしたんですけど、やっぱりどうしても構えてしまうところがあって。でも、TOSHIさんはさっき話してくださったように、"自然でいい"と。曲を書くのも自然でいいし、歌詞も無理にいいものを書こうと思わなくていい、自然に書けばいんだよってサラっと言ってくれるんですよ。じゃあそうしてみようかなって自分も思えるし、それがやっぱりTOSHIさんのマジックですね。
-一緒に作業していくにあたって、サキヲというバンドとしてどんな音楽をやるのか、みたいな話し合いはされたんですか?
SAKIWO:"ロック・バンドであること"というのは絶対的に軸にはあったんですけど、今年の頭ぐらいからずっと制作を続けていたんですよ。そのときは、特に何かにとらわれることなく、とにかくいろんな曲を作っていて。
TSUYOSHI:コロナウイルスのことが始まる前ぐらいから、楽曲の制作のためにみんなで一軒家みたいなスタジオに集まって作業していたんですけど、本当は短いスパンで楽曲を作って、すぐにアクションを起こす予定だったんですよ。でも、こういう状況になったことで、メンバーといろんなことを共有する時間が長くなったんですよね。そうなったときに、例えば自分たちのスマホに入っている音楽をみんなで聴いたり、みんなでご飯を食べながらYouTubeを観たりして、"この曲どう?"みたいなことを、TOSHIさんも含めて本当にたくさん話してたんです。
-どんな映像や曲を観たり聴いたりしたんですか?
SAKIWO:これがもう数えきれないぐらいたくさんありすぎて(笑)。
TSUYOSHI:TOSHIさんもいろんな映像を教えてくれて、途中からはTOSHIさんの過去の映像で、みんなで氷室(京介)さんやGLAYを観て。
NAGAI:お酒が回ってくるとね(笑)。
TSUYOSHI:邦楽/洋楽とか、ロックがどうとかも全然関係なかったですね。ジャズを教えてもらったりもしましたし。
NAGAI:メンバーが好きな最近の音楽を聴かせてもらうと、その原点を知っている世代なので、それを教えてあげて。こういうルーツがあって、こういう流れがあって今はこういうふうになってきているんだよ、とか。
-めちゃくちゃ楽しそうですね、その時間。
SAKIWO:めちゃめちゃ勉強になりましたよ(笑)。
TSUYOSHI:楽しいから、話が全然尽きなくて。そういう話をしていた中から、自分たちの中にあるものを、そのまま素直に出していこうと。だから、どういう音楽をやっていこうかという話し合いをして作っていくというよりは、みんなで"これいいよね"、"あれもいいよね"というのを、どんどん詰め込んでいった感じだったんですよね。意図的に何かを作るというよりは、自分たちがいいと思うものが必然的に集まっていく感じ。
NAGAI:僕としては、この4人のオリジナリティがまだ出ていないと思ったんですよ。これまで何かの形にはめようとしてやってきたのかもしれないけど、それは本物なの? 自分のやりたいことと合ってる? っていうところまで探っていって。そこからレコーディングするにあたって、例えば僕が言ったようにギターを弾けなかったりするんですよ。でも、弾けないなかで出てきたフレーズに個性がすごくあったから、そこを引き出そうと。
-なるほど。
NAGAI:楽器も音楽も、僕はただのツールだと思うんです。アプリと一緒で、それを扱う人がどうなのかが大事であって。それに、その人は世界にひとりだけで、このメンバーの組み合わせも世界にひとつなわけだから、オンリー・ワンの音楽が絶対にできるはずなんですよ。そこに僕のアイディアも入れながら、どう化学反応させていくのかというのは、すごく面白かったです。
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