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INTERVIEW

Overseas

THE STRUTS

2020年11月号掲載

THE STRUTS

Member:Luke Spiller(Vo) Adam Slack(Gt)

Interviewer:増田 勇一

信号が青になったらすぐに動き出すよ。すでにラインの後ろで助走の準備をしてるから


-話を戻しますけど、プロデューサーのJon Levineも、まさかアルバムを作ることになるとは思わずにあなた方を自宅に招いたわけですよね?

Luke:そう。当初はその作業がアルバム制作になるなんて、誰も想定してなかった。ただ全員一致してたのは、とにかく何かやりたいってことだけ。Jonもそうで、彼は週に6日は曲を書いたりレコーディングしたりプロデュースしたりしてる人で。相手はポップ系のアーティストばかりなんだけどね。俺はたまに彼と会って話をしていて、特に今年の初めなんかは、彼が自宅でパーティーを開くというんで、俺が出向いてふたりでゲストのためにピアノを弾いたり歌ったり......。そういうのが彼は大好きなんだ。とにかくプレイするのが大好きな人なんだよ。しかもピアノがめっちゃうまくて、本格的なジャズの人なんだ。だから一緒にレコーディングをするにあたって重要視したかったのは、彼にも手伝ってもらうこと。俺から彼に直接言ったんだ。"君にも俺たちと一緒に演奏してもらうようにしなきゃ。一緒に弾きながら思いついたことをアレンジするのを手伝ってほしいし、ピアノやハモンド・オルガンも入れたいし、それをぜひやってほしい。バンドと一緒にリアルタイムで"とね。だから、曲の構成という部分では、彼の存在が大いなるゲーム・チェンジャーになった。グループ外から意見を言ってくれるのみならず、一緒になって曲と暮らし、曲を育ててくれたんだ。それがまた、全体に勢いを与えることになったんだよ。

-しかし、自宅にバンドを泊められるというのもすごいなと思います。

Adam:だよね。みんなでルームシェアして、俺とベースのJed(Jed Elliott)は空気で膨らませるマットレスをベッドにして、数年前の生活に逆戻りって感じだった(笑)。でも楽しかったよ。起きたらすぐ作業を始めて、1日中クリエイティヴに過ごす。セッティングしたままだから、ドラムのところにもマイクが立ててあってすぐ叩けるし、"まずはスタジオで音を出してみよう。何かできるかもしれないし"みたいに1日を始めることができた。

Luke:俺が思うのは、今回のことが間違いなく今後のプロジェクトの雛形になるはずだってこと。絶対そうなってくるよ。自分たちにも、ファンにも、レーベル側に向けても証明できたと思うんだ。THE STRUTSを最小限の人間とひとつ屋根の下に放り込んで、9日とか10日とか放っておけば、それだけですごくいいものを持って帰ってくるぞ、ということをね(笑)。少なくとももう1回は、こういうやり方でやることで前進できるはずだと俺は思ってる。それくらい新鮮な体験だった。だからもう一度は同じような手法でやってみたい。10日間と限定する必要はないから、12日間貰ってもいいけど(笑)。

-さて、今作にはDEF LEPPARDのJoe ElliottとPhil Collenも参加していますよね。

Luke:実を言うとね、最初に考えていたのは彼らふたりをフィーチャーした形で、GIRLバージョンの「Do You Love Me」をやることだった。

Adam:あ、そうそう。当初はそうだったね。

Luke:Philは昔、GIRLのギタリストだったわけだからね。だから「Do You Love Me」を一緒にやれたら、ストーリーが一巡する感じになってクールなんじゃないかと考えて、実際、曲を送ってみたんだ。でも、彼らからは丁重に断れてしまった。"違う曲をやりたい"と言われたんだ。そこで改めて考え直して"じゃあ、これは?"と(「I Hate How Much I Want You」を)提案してみたら、先方からの回答は"イエス、もちろん!"だった。

-「Do You Love Me」はそもそもKISSの曲だし、GIRLのバージョンはそのカバーだったわけですけど、あなた方はGIRLの持ち曲として取り上げようとしてたんですね? とはいえ、あのバンドはあなた方が生まれた頃にはとっくに解散していたはず。

Luke:うん。俺はGIRLについてはマネージャーに話を聞いて知ったんだ。彼は歩くロックンロール百科事典みたいな人でね。俺とAdamはLA滞在中、しょっちゅうジャムっていて、そのための参考音源みたいなプレイリストを作ってあるんだけど、その中に彼から教わったGIRL版の「Do You Love Me」も入ってたんで、ビデオもチェックしたし、曲のアティテュードがすごく気に入ってたんだ。そんな経緯があったあとでオリジナルのKISSバージョンを聴いて......正直言うと俺、GIRL版のほうが好きだな、と思っちゃった(笑)。あくまで俺視点での話だけど、KISS版はOK、GIRL版はグレイトって感じ。で、"これを俺たちがやったらすごいことになるんじゃね?"みたいな話になったわけ。まぁ俺に言わせれば、この曲のTHE STRUTS版はこれまでのすべてのバージョンを凌ぐものだから。

Adam:お前、それPhilの前でも言える(笑)?

Luke:ふふっ(笑)。断っておくけど、俺たちは結局、巨匠たちの肩にとまらせてもらってるに過ぎないわけで、すでにめっちゃいいバージョンが存在する曲をさらに良くするのは簡単なことなんだよ(笑)。とにかく、あの曲が俺たちのやってきたことと見事に符号したというのもあるし、あれが入ることによってグラム・ロック的観点からもちゃんと筋が通るアルバムになった。それってすごく大事なことだと思うんだ。いかにもグラムな音だもんね。シンプルでキャッチーで、俺たちらしさが溢れてる。いい選曲だったと思う。

-今回はTom Morello(RAGE AGAINST THE MACHINE etc.)の参加も見逃せません。Adam、「Wild Child」での彼のプレイについてはどう感じましたか?

Adam:あの曲での彼のプレイは、まさに完璧だと思う。世界有数のユニークなプレイヤーだし、何よりもまず、あんなに多彩な音がギターから出てくるっていうのが俺には驚きだ。彼とはステージで共演したこともあって、その様を目の当たりにできたのはすごく嬉しかった。あの曲は俺が家でリフを書きながら、実はARCTIC MONKEYSの「R U Mine?」っぽいリフを狙ってたんだけど(笑)、めっちゃヘヴィなのができちゃったから、"これをウチで使うことはないな。このバンドにはヘヴィすぎる"と思ってて。だけどそれをスタジオで弾いてみたら、曲になってしまったんだ。途中、すごくRAGE AGAINST THE MACHINEっぽい"ダダーンダダーン♪"みたいなところがあって、"これは!"と思い立ち、Lukeが彼の電話番号を知っていたから連絡してみて......。そんな形で話が進んでいったんだ。今回の曲の中で彼に入ってもらうとしたら、やっぱり「Wild Child」しかないよね。作っていても楽しい曲だった。そこにTomの尋常じゃないソロが入ったことで、とんでもないことになったよ。やっぱりこれも俺には夢が叶ったような出来事で、彼が俺たちの曲で弾いてくれているなんて、自分の頬をつねりたくなるよ(笑)。

-こうしてアルバムを聴いていると、すぐにでもあなた方のライヴが観たくなりますよ。今はそれ自体が難しい状況は続いているわけですけど。

Luke:リスナーをそういう気分にさせるのがまさにTHE STRUTSらしいところなんだよ。この夏にはドライブイン形式のライヴも経験してきたけど、やっぱり本物のライヴには敵わないし俺たちも何よりそれを求めてる。ただ、どんな状況にあろうと、ツアーに出てショーをやる術をなんとか見つけ出すバンドがいるとしたら、それは絶対に俺たちTHE STRUTSなはず。だから信号が青になったらすぐに動き出すよ。俺の口から保証してもいいと思う。誰よりも先に飛び出せるようにすでにラインの後ろで助走の準備をしてるから。

Adam:日本公演の予定もあるしね。このままうまく進んでいけば4月には会えるはずだし。

-日本でも今後のライヴ開催についてはまだ不確かな部分が多いと言わざるを得ない状況ではありますが、現状、今年行われるはずだったジャパン・ツアーの振替公演が来年4月に控えています。再会を心待ちにしているファンに向けてメッセージをいただけますか?

Adam:どうもありがとう。我慢して待っていてくれていたことに感謝しているよ。必ずまた行くからね。そして、このアルバムを俺たちと同様、愛してくれると嬉しいな。

Luke:まずは何よりも、みんなが新しいアルバムを気に入ってくれますように、と願いたいね。なぜなら、このアルバムはファンのために書いたもので、それはもちろん世界中のファンのことを指してるわけだけど、中でも日本のファンは俺たちがこれまで出会ってきた内でも一番情熱的でユニークな人たちだし、このレコードのユニークさも理解して楽しんでもらえるはずだと思うからだよ。俺たちは作っていて楽しかった。すごく楽しかったよ。だから、みんなにも楽しんでほしい。また会えるのを楽しみにしているよ!