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INTERVIEW

Japanese

ボンジュール鈴木

2020年01月号掲載

ボンジュール鈴木

Interviewer:吉羽 さおり

-今回も、ファンタジックでポップなサウンドからは想像できないけれど、歌詞をひもといていくとディープな世界をかき分けていく歌詞になってますね。

子供のときからそういうものにキュンとしてしまっていて。子供の頃、自分でリボンとかを結んで動けないごっことかもしてたり。

-今考えてみるとかなり(笑)。

アブナイですよね。母親にすっごく怒られたことがありました(笑)。

-フランス文化や文学の流れを汲んだ、日本のアンダーグラウンドの文化やエログロ的なところも踏み込んだりしたんですか。

実はあまりそういうものは知らないのですが、寺山修司さんの作品は観たほうがいいってお芝居をやっていたお友達に言われたことはあります。自分が触れてきたようなものと少し近い感覚がありました。アニメの世界で言うと、以前アニメ"ユリ熊嵐"という作品でオープニング(2015年リリースの1stシングル表題曲「あの森で待ってる」)を歌わせていただいたんですけど、監督の幾原邦彦さんの作品は、ひと言で言いづらいのですが、観た人の心に生涯残るような独特なものを作っていらっしゃるので、曲として作品の世界観を作るうえで、自分も人の心に残る作品を作れるようになりたいと、いろいろな意味で影響を受けたと思います。

-そういう感覚をこうしてかわいくアウトプットして、しかもそれをリスナーに"かわいい!"って聴いてもらえるのって、ご自身の心境的には"うふふ"っていう感じもあるんですか。

かわいいものをかわいいって思ってくれる方も多いかなって思うんですけど、ダブル・ミーニング的なものを含めたうえで、普段の生活の中で言葉にはしないようにしているけど共感していただけそうなことを、ちょっとずつ入れるようにしているので、いろいろと想像してもらえたらなって思います。

-音や言葉での引っ掛かりはかなり埋め込んだ作品ですかね。

そうですね。でも、日本で売れるものはもっとわかりやすくて、そのままじゃないとダメだっていうのはいろいろな方に言われます。作家のお仕事としてアニメ作品で書かせていただくときは、クライアントさんのオーダーに合わせて、あくまでもアニメの世界観にできる限りの力で寄り添うように、忠実に曲を制作することを心掛けているのですが、自分で発表するものに関してはあまり意識せずに、好きなものをやっています。

-フランス語は今回も結構入っていますよね。

フランス語のセリフに関しては、日本語ではちょっと恥ずかしくて言ったことないような言葉とか、逆にストレートな言葉が多いです。もともといろいろな国の子たちと音楽活動をしていたんですけど。そのときに彼らが悪ノリして私に変な言葉を言わせたりしていたんですよね。ダブル・ミーニングだから、あの子にはわからないだろうっていう感じで言わせていたと思うんですけど、それを私は普通に恥ずかしげもなく言ってたら、やっぱりみんなわかんないんだって感じでニヤニヤしてたので。

-だいぶ意地悪ですね(笑)。ただそういうことがあって、音楽でそういう遊びもできるかもなっていうヒントにもなった? 

そうなんです。そこをボンジュール鈴木として自分で操作してやっていくのが面白いのかなって。やられた分を返していこうというか(笑)。

-今のところ、自身の音楽の受け入れられ方はどう感じていますか?

客観的にはあまりわかっていないんですけど、名前が変だから受け入れられないんですかね(笑)? ちょっと罰ゲームみたいな感じですもんね。名前だけ見たらおじさんなのか? と思われてしまっていることが多いので、MVに出演したり、最近は半分顔出してるのですが。

-なぜこの名前なのかというのはたしかにありました(笑)。

私が付けたわけではありませんでした。今は付けてくださった方たちには少し感謝しています。かわいい曲をかわいくやって、さらにかわいい名前だったら誰も見てくれないって言われてしまって。仕方なく泣きながらだったのですが......。

-この芸人さんのような名前だからこそパッと目を引いて、音楽を聴いてびっくりするような。

覚えていただけるのはありがたいなと思います。恥ずかしいですけど(笑)。この"ボンジュール"というのはネットの回線の意味もあるので、相手と特別な関係がなくても、心で繋がれるよっていうイメージも含まれているんですよね。と優しい友達が後付けで考えてくれました(笑)。

-YouTubeを見ているとコメント欄は海外からの方が多い感じですね。日本のロリータ文化のイメージをフックに聴いてくれるのかなっていうのも思います。

日本のロリータ・カルチャーは、日本特有のものでもあると思うのですが、自分的には、コケティッシュでエロティシズムな時代のヨーロッパのロリータ・カルチャーも取り入れようと思いながら曲作りをしています。また、日本のメロディって素晴らしいな、独特なメロディだなって思うんです。前にいろいろな国の子たちと音楽活動をやっていたときは、エレクトロ・ダンス・ミュージックだったので、洋楽の作り方でやっていたんですけど。そことは脳みそを切り離してコード進行も日本のコード進行を勉強して、こういうふうに盛り上がるようにしてサビで展開するとか、違う角度で考えて作っているものなので、海外の方には、その違和感、異国感の面白さがあると思うんです。そこに時々フランス語が入るから、何? っていう引っ掛かりがあるのかなと考えていて。

-なるほど。思わぬ反響もある感じですね。

海外のアーティストさんから連絡が来るとかもあります。私は完全に洋楽もできないし、完全なJ-POPもわからない、どちらもわからない状態なので、そこはどちらも取り入れていきたいと思っています。J-POPで作っているつもりでも、逆に洋楽を作っているつもりでも、どちらにもなりきれていないと思うので、これからそういう部分を発展させていけたらなと思います。子供の頃から家庭環境が複雑で、しなくていい経験をいくつもしてきたことをプラスに変えていけるのは、作品を作ることでした。もし今嫌な思いをされている方がいたら、その方でしか感じられないものをクリエイティヴなものにぶつけることで、自分を保つことができる気がします。絵や作詞、お仕事、お料理、お勉強とか、いろいろな日常のことでも、何かに集中したり作ったりすることで自分だけの居場所を作って、発散するやり方があるって思うんです。

-今のアウトプットは、自分をどんどん取り戻すというか、浄化している感覚もあるんですか。

浄化してる形ですね。今もそういう感覚は続いていて、何かあったときに鋭い感覚のまま家に帰ってピアノに向かってそれを音にするとか、メロディにするとかというのはすごくあるんです。

-そういう激情をぶつけるからといって、どろどろで黒々としたエモーションのものはできあがらないですよね。

そこはすごく気をつけていて。聴いた方が優しくなれるようなものを作っていきたいんです。歌詞に関してもあまりわかりやすい言葉や耳馴染みのいい言葉ばかりだと、その感覚でしか入り込めないと思うんですけど、ファンタジーで浮遊感があると、私もそう思うなとか、なんとなくの感覚としてつまんでいただけるので、日常で10年も20年も聴いていただける作品や、優しい気持ちになっていただける作品になればと思っています。わかりづらいと売れないって言われちゃいますけど。

-なるほど。

すべての黒いものを、ちょっぴりファンタジーに染めてかわいくする事で、私自身が現実逃避しているのかもしれません。聴いてくださる人を穏やかな空気で包むことができれば、自分が浄化されるような気がして。以前少しだけサイン会をさせていただいたことがあったんですが、"曲に救われました"って言ってくださった方が何人もいらっしゃったのが嬉しくて、本当にやっていて良かったなって心から思いました。聴いてくださった方の心をそっと包むような優しい作品を作れるように、頑張っていきたいと思います。