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INTERVIEW

Japanese

飯田カヅキ×判治宏隆

2019年11月号掲載

飯田カヅキ×判治宏隆

Member:飯田 カヅキ(Vo/Cho/A.Gt) 判治 宏隆(Vo/Cho/E.Gt)

Interviewer:石角 友香

映画が好きだとかは特に言わずとも、価値観として、お互いが知っているような景色を頭の中で見て弾いているのかもしれない


-飯田さんがこのバンドで書きたい歌詞はstrange world's endのときと変わらないんですか?

飯田:書きたいことはたぶん変わってると思いますね。strange world's endのほうはもっと自分に近いというか、直接的な表現をしてるんですけど、こっちでは違う形のものをやりたいと考えています。音楽的には例えば、元ネタとなる曲が生まれたときは、どっちにしようと思って作ってるわけではないんですけど、歌詞に関しては違いがあって、strange(strange world's end)は直接的というか、自分があって周りに景色がある感じなんです。でも、こっちのほうはその景色の中に自分が入っていく感覚っていうんですかね。そういう歌詞の書き方をするようにしてます。映画的な作り方をしてるというか、こういう世界だなというのを書いて、登場人物、そのストーリーを考えます。ただ、言ってることに関しては変わってなくて、そこが自分の表現の根幹なのかなっていうところです。

-映画的っていう部分で言うと、実際の映画のシーンから生まれた曲なんかはありますか?

飯田:実際のシーンから生まれた曲はないんですけど、そういうシーンが浮かぶことはありますね。「深海の雨」は映画"アビス"だったり。深海に潜水艇が沈んで、その最後の生き残ったひとりの歌で。深海で生き残って、もうあとは死を待ってる状態なんですけど、そこで目に映ったものを書こうと思ったんです。他の曲もそういう作り方だったりしますね。

判治:映画好きっていうのは共通してたので、飲みに行ったときも映画の話ばっかするんですけど、海をやったから、次は空行くか? とか、そういうことはやるかもしれないですね。ただ、既存の映画から想像して曲にっていうのはないんですけど、ネタにできるじゃないですか。曲作りのヒントというか。青っぽい曲作ったから、次は赤っぽい曲とか、タイムループものとか。「深海の雨」は、俺は単純に最初"タイタニック"のイメージなのかな? と思ったんです。それでちょっと水っぽい、雨っぽいフレーズなのかなとか考えて。

飯田:たぶん同じ景色が共有できるというところが一番大きいのかなと。例えば、映画が好きだとかいうことは何も言わずとも、価値観として、お互いが知っているような景色を頭の中で見ながら弾いているのかな? と思いますね。

-「エイプリル」なんかはエレキ・ギターの単音だけで情景として伝わるものがありますね。

判治:ありがとうございます。このバンドにはリズムで作る展開がないし、風景というか、歌が終わりました、次にインスト部分で盛り上がります、Aメロからサビになりました、みたいなところでコード進行が変わらなかったりするので、そこで"変わった"印象をつけるのにはやっぱり工夫したんですね。それと、アドリブっぽいフレーズじゃなくて、フレーズっぽいフレーズというか、歌えるようなフレーズをつけたんです。ギター・ソロ以外は感情っぽくないというか、わりと無機質にしたくて。このバンドではダークじゃなくて、冷たい感触みたいなところを心掛けましたね。アコースティックとエレキ・ギターだと、ともすればブルージーとか、おじさんっぽくなりかねないんですが、古くならないほうがこのバンドはかっこいいと思ってるので、できるだけそうするには無機質にしようと思ってます。あと、スタジオでは音楽的な会議の仕方として、この数はこうしようとか、そういう進め方をしてますし、できるふたりなんじゃないかなと。ふたりとも作曲者なので、歌の邪魔にならないようにとか、何も言わなくても、そういうことはちゃんと考えてるっていうのは強みでもあるし、誘ってもらった理由なのかなとも思います。

-判治さんの作詞作曲曲の「歩けるか」が最後に入ってますが、お互いにバンドのフロントマンだということで、さすがにおふたりの曲は全然タイプが違うなと再認識しました。

判治:自分ではかなり飯田君に寄せて作ったところがある曲ですね。展開がすごく少ないし、ループしてる循環コードだし。

-でも歌詞のテイストは違いますね。判治さんの歌詞は一人称で書かれているし。

判治:自分では「歩けるか」は今まで自分で作った曲の中でも珍しいというか、俯瞰で見ていて映画の登場人物っぽい話でもあるなと思ったので、飯田×判治に持ってったというか。それで採用しましたけど、実は裏ストーリーとして個人の体験もあったので、自分としては珍しくパーソナルで、ストレートに出てきた感じはします。

飯田:逆にパーソナルなほうが出てきたんだね。俺はパーソナルじゃないほうから持ってきたから、お互い別の視点から持ってきた曲が採用されました。

ミニ・アルバムのタイトルが"場面=Scene"ですね。このタイトルは結果的に?

飯田:"Scene"はもともと作ってる段階から"そんな感じかな?"と思って。例えば、これがシングルだったら"Cut"とか、アルバムだったら"Cinema"ぐらいの、そういったイメージはありましたね。

-飯田さんは、strangeと飯田×判治で曲を振り分けてるわけじゃないとおっしゃってましたが、結果的に表現として違う部分とは?

飯田:今回の作品で思ったところで言うと、自分の作ってるものには暗さというのが必ず出るんですね。自分が持っているものなんでしょうけど。で、今回の作品を客観的に見た場合、飯田×判治の音楽には暗さを反映させてるわけではなくて、どっちかというと重さというのを考えてると思います。重さっていうのはポジティヴだろうがネガティヴだろうが、表現に出てくるので、作っているものに重さが出ていることによって、ちゃんと地に足のついたものができたかなと感じますね。編成的にもアコースティックとかだと、バンド・サウンドを薄めたようなサウンドに思われがちなんですけど、これに関してはもうこの編成で成立するように作ってるので、物足りなさというものはなく、すべて出てると思います。例えば、このバンドで逆にフル・バンド・セットのライヴ・アレンジを考えるほうが難しいよね(笑)? これで成立できてるんで。

-例えば、どんな人やどんなシチュエーションで聴かれたいですか?

飯田:ストーリー的には重さはあるけど、さらっと聴こうと思えば聴けますから、部屋で、ひとりで聴いてもらうのもありがたいんですけど、街で歩きながらでもわりと流せるのかなと思います。ヘッドフォンにも合う。歩いてる道とかで何かがサクッと刺さったら、それがその人にとっての"場面"だと思ってもらえたらいいのかなと。