Japanese
浪漫革命
2019年03月号掲載
Member:藤澤 信次郎(Vo)
Interviewer:TAISHI IWAMI
浪漫革命の前身は、大学の音楽サークルで結成されたコピー・バンドだった。楽しい学生生活には限りがあり、引退、就職活動、卒業といった現実が近づき、音楽を続けるか否かの岐路が迫ってくる。そこで、まだまだ仲間と先を見ていきたいとオリジナル曲に挑戦。愉快でファンキーな音楽性が話題となり、わずか2年のほどの間に様々な著名フェスやサーキット・イベントなどの舞台を踏んだ。ここに完成した1stフル・アルバム『NEW ISLAND ROMANCE』は、そんな彼らの青春物語であり成長記録であり、そこに宿る熱が多くの人に伝わるであろう力を持った作品だ。今回はバンドを代表してヴォーカルの藤澤信次郎にインタビュー。自らの自信も無知も憧れも夢も、屈託なく話す姿が印象的な時間となった。
-浪漫革命は京都を拠点に活動されています。京都には個性的なライヴハウスやクラブがいくつかあって、独自の音楽文化を発信しているパワーのある街ですよね。みなさんもどこかしらの場所やシーンとの関わりが強いのでしょうか。
いえ。そもそも音楽にのめり込むようになったのが最近なんです。高校のころはただなんとなくいい歌を聴いてるだけでした。楽器の役割すらわかってなかった。大学に入って軽音サークルでのコピー・バンドを経て結成した浪漫革命が、初めてのオリジナル曲を演奏するバンドなんです。なので、お世話になっているライヴハウスや好きなクラブ・イベントはありますが、その中で活躍しているバンドかというと、そうでもないです。
-今回のアルバム『NEW ISLAND ROMANCE』の豊かな音楽性からすると、とても意外です。
よくわからないけど音楽は好きだったから、とりあえず軽音サークルに入りました。そこで出会った人たちの影響で、ソウルやジャズ、ファンクを好きになって、みんなでいろんな音楽をコピーしてたんです。それが楽しくて仕方がなかったんですけど、気がついたら引退していて、卒業が間近に見えて、現実に引き戻されました。そこで先のことを考えたときに、"もっと音楽をやりたい"という気持ちが強かったんでメンバーと話をして、それならオリジナル曲を作って本格的にやってみようっていうことになったんです。ちょうどそのころ、僕が好きな日本のバンド、Yogee New WavesやSuchmosが大きな会場でやりだすようになっていったんですよね。
-2016年あたりですね。彼らの持つ歌心や横ノリのグルーヴは、音楽シーンに新しい波を作りましたよね。
それがすごく励みになったというか、僕らも頑張ろうと思えたきっかけになりました。
-曲は藤澤さんを中心に作っていくんですか?
いえ、基本的に全員で作っていきます。誰かと誰かがイメージを固めて、そこに残りのみんなが入って曲にしていくパターンが多いです。
-藤澤さん以外のメンバーの音楽遍歴についても聞かせてもらえますか?
奏太君(大池奏太/Gt/Cho)は同級生で、もともとギターは弾けたんですけどリスナーとしては僕と似たような感じで、いろんな音楽を積極的に聴くようになったのは遅かったです。藤Pさん(藤本卓馬/Ba/MC)とTOY(Dr)さんは、僕と奏太君がサークルを移ったときに出会った先輩なんですけど、僕らがJAMIROQUAIや山下達郎のコピーをやってるのを聴いて"いいね。そういうのやってみたい"って言ってくれて一緒にやるようになったんです。ふたりも同じく当時はそこまで深くはなかったと思います。後輩の潤君(後藤潤一/Gt)が一番いろいろ知ってたかも。
-2017年の初ライヴからすぐに、公募枠とはいえ"SUMMER SONIC"や"RISING SUN ROCK FESTIVAL"のステージに立たれていたので、サークルの中の選抜チーム的な存在かと思っていました。
全然そんなことないです。僕はすぐに自信をなくしがちだし、すごい人たちをみると"ファンクやってます"とか"ロックです"って大きな声で言えない。でもプロフェッショナルってどういうことかは難しいですけど、そういう意識はありますし、5人が集まって出す音に誇りは持ってます。
-先ほど好きだとおっしゃったSuchmos、Yogee New Wavesといった世代の近い国内のバンドから受けた刺激や、JAMIROQUAI、山下達郎、ほかにはTHE BEATLESやTHE BEACH BOYSなど、幅広い年代やジャンルの音楽をうまく消化してアウトプットしている印象があったんですけど、それについてはどうですか?
正直浅いと思います。ジャズやファンクに詳しい人、ロックを好きな人、いろんな人に"これは聴いといた方がいいよ"って言われたものを押さえるくらいで。そんな感じで、あれもこれも聴いてる自分には芯がないような気がして悩んでいたこともありました。友達からも"お前はいったい何が好きなの?"って言われたこともありましたし。他のメンバーも、悩んでたかどうかは知らないんですけど、音楽の聴き方はみんな近いんです。THE BEATLESは大好きだけど全部は聴いてない、とか。そんな感じで、あれもこれもちょっと摘んでは作ってみたいってなっちゃってるから、人から見たらまとまってないのかもしれないけど、僕らとしてはまとまってると思ってますし、それが個性になっていればいいなって思います。
-かと言って、"楽しけりゃいい"みたいな、知識や技術から逃げてる感じはまったくしないです。ちゃんと文化への感謝とそれを追求する精神はあるんじゃないかと。
そうですね。そこで性格とか人間性が出るじゃないですか。今できる範囲でやりたいことをやるわけだから。背伸びしてる感じや自信過剰な部分やそれらとは逆の謙虚な気持ち、いろんな感情が混在してるからこそ、面白いんだと思います。
-バンドとしての理想像はありますか?
各々、今のスキルや努力量ではなれないくらいのところに理想はあります。でも、そういうジャンルとか音楽性よりも、音楽で暮らしていけるだけのバンドになりたいという気持ちの方が強いです。
-その気持ちは音楽にどう作用していますか?
食べていくということは売れなきゃダメ。となると、どこかに括られた方が早いような気もするんですけど、そういうことはあまり考えないようにしています。いろんな音楽が好きだってことからはブレたくないんで。だから、他のメンバーが作ってきた"僕が好きじゃないサウンド"を消化して曲ができあがっていくことも楽しんでます。"さすがにこれはないんじゃない?"と思うこともあるんですけど、まずちゃんと咀嚼してから意見を言う。向こうが"じゃあこれでどうだ"って出し直してくるのを待つ、みたいな雰囲気はみんなお互いにありますね。
-音楽だけで食べていくにも、いろんなケースがあるじゃないですか。その中で、Suchmosや、最近だとKing Gnuのようなスピード感を望む気持ちはありますか?
SuchmosやKing Gnuのような状況には夢がありますし、彼らのように抜きん出ることはなくとも、ミュージシャンとして生活できている人たちも素晴らしいと思います。でも僕らの場合は、ある程度のスピード感が必要なんです。この5人でやっていきたいとなると、現実的な生活の問題もあるので。今回のアルバムは、僕の中で初めてそういうことを意識しました。人生を変えようって。いい作品であることは大前提。プラス"これを出したらめちゃくちゃ売れるんじゃないか"って思えるものを作りたかったんです。
-その意識はどこから生まれたのでしょう。
心斎橋SUNHALLに、Suchmosのライヴを初めて観に行ったんです。
-『LOVE & VICE』をリリースしたときのシークレット・ギグ(2016年1月27日に開催)ですね。私も観ました。
そのときに"こういう音楽が売れたらすげぇな"って思いました。そしたら実際にすごい勢いで登っていった。SuchmosもKing Gnuも演奏が上手いし、いろんな世代やジャンルを越えて好かれるだけの音楽的な懐もあるじゃないですか。そこに強いプライドも感じるし、本当にカッコいい。でも、そこまで上手くなくてもいいものは作れるし、それが音楽の、バンドの魅力でもある。上手くなったらなおいいけど、今の僕らにとって大切なのは、熱量とか努力とか試行錯誤とか、そういうことをちゃんと詰め込めるかどうかだと思ってます。
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