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INTERVIEW

Japanese

the Canadian Club

2016年07月号掲載

the Canadian Club

Member:志津 利弘(Vo/Gt) 桂川 知也(Dr/Vo/Pf)

Interviewer:松井 恵梨菜

岐阜県の中津川という街に、老若男女に響く歌で地元に愛されているバンドがいる。現在2人体制で活動中のthe Canadian Clubは、"長野マラソン"のテーマ・ソング、中津川の市制60周年記念ソングを手掛けるなど、その活動はライヴハウスだけに留まらず、多くの人の生活に寄り添う。そんな彼らが、7月6日に約5年ぶりとなるニュー・アルバム『City』をリリース。誰もが持つ故郷の風景を喚起させる、心の琴線に触れるピアノ・サウンド、温もりのあるツイン・ヴォーカルのハーモニーが詰まった5年分のバンドの想いの結晶に、ぜひ触れてみてほしい。

-まず、2ndアルバムの完成、おめでとうございます! 2011年にリリースされたミニ・アルバム『cocoon』以来5年ぶりとなりますが、これだけ期間が空いた理由は何でしょうか? また、久しぶりのリリースが決まった今の気持ちもお聞かせください。

志津:ありがとうございます! いや~長かったですね(笑)。5年ぶりのリリースですが、この期間止まっていたわけではなく、ずっと活動はしていました。"長野マラソン"の公式テーマ・ソングを担当させていただいたり、ライヴ会場限定のCDを発売したり......すごく充実した5年間だったと思います。ただ、メンバーの脱退があったり、大きな挫折があったり......これからのバンドのスタイルを模索していたこともあり、ちょっと時間がかかったという感じですね。ようやくリスタートできるなという気持ちです。

-結成は2004年と活動歴は結構長いようですね。もともとどんな経緯で結成されたバンドなのでしょうか?

志津:そうですね。あれは10年以上前......僕と桂川が同じ自動車学校に通っていたというのがきっかけです。先生が一緒で、免許取得までずっと桂川と一緒だったんです。そのうち仲良くなって、好きな音楽が一緒で......ライヴハウスで偶然出会ったりしてるうちに自然とバンドを組んでいたという。

-"the Canadian Club"というバンド名の由来も教えてください。

志津:結成して何年かは違うバンド名で、やってた曲も今とは違う感じだったんです。あるとき、そのバンド名がスラングだということを海外出身のお客さんから教えてもらって、これはまずいなと......。そのときにいたメンバーがカナダのウイスキーに"Canadian Club"というお酒があると教えてくれて、"それかっこいいじゃん"と思ったんです。お酒って世界中で愛されていますし、地酒もある。僕らもそんなふうに、お酒のようにいつまでも愛されるバンドになりたいっていう思いもあります。

-岐阜県中津川市の市制60周年記念ソングを手掛けられていたり、FM岐阜でレギュラー番組を担当されていたりと地元での活動がとても活発で、地域密着型バンドのような印象を受けました。音楽で地元を盛り上げたい、地元の名を全国に広めたいという思いがあってのことでしょうか?

志津:まさにそのとおりです。とにかく地元にこだわって活動をしたかったんですね。地元の中津川市は世界初の野外音楽フェスと言われている"全日本フォークジャンボリー"開催地ですし、今は"中津川 THE SOLAR BUDOKAN"(※野外フェス)も毎年開催されています。音楽とはすごく縁のある土地で、音楽をやっている方も多いんですね。なので、僕らが地元を中心に活動を始めたのもすごく自然なことでした。地元の方にすごく応援していただいて今の僕らがあるので、期待に応えるためにも、音楽活動を通して少しでも地元の名前を知ってもらって、街が盛り上がれば......それもバンドの目指すひとつの方向性です。究極は、"岐阜と言えばthe Canadian Club"と呼ばれるバンドになることですね。

-地元にちなんだテーマ・ソングとなると、聴き手は老若男女、幅広いと思います。そのことを考えたうえで楽曲制作されているのでしょうか?

桂川:そうですね。もともと歌、メロディを大事にしているバンドなので、そういうことは常に意識しています。良いメロディはジャンル、世代を問わず愛されるものですし、特に日本人はメロディックな音楽が好きですからね。

-2013年に"中津川 THE SOLAR BUDOKAN"に出演されていますね。

志津:出演者が超豪華なので、とにかく緊張しました(笑)。2013年は初開催の年だったんですが、"こんなにもすごいフェスが地元で開催されるなんて!"という感動もありました。ただ出るだけではなく何か残してやろうという思いもありましたが、結果的に、最初に言った"大きな挫折"を味わうことになるんです。でも、ここでの経験がなければ今の僕らはいないかもしれません。また目指すべき場所のひとつです。

-4年連続で長野マラソンのテーマ・ソングを担当されているとのことですが、最初はどんな経緯でオファーがあったのでしょうか?

志津:本当にありがたいです。毎年たくさんのドラマがあって、ランナーのみなさんや運営のみなさんには本当にパワーをもらっています。最高の大会です。きっかけは、僕らのミュージック・ビデオを制作してくれているPIONEERFILMZという映像クルーが長野に拠点をおいていて、その代表の内田君から大会テーマ・ソングに僕らの曲を使いたいというオファーをもらったんです。それから、スタート地点でのライヴや32km地点でのライヴを企画してくれて......公式映像にも曲を使ってもらって、本当に感謝しかないです。

-実際に、今年4月に開催された長野マラソン当日も会場でライヴをされたそうですね。the Canadian Clubの音楽がランナーを励ますと同時に、ランナーの姿を見て励まされる部分もあるのではないかと思いますが、いかがでしたか?

志津:スタート地点で"いってらっしゃい!"と送り出して、32km地点では全ランナーが通過するまで歌を届けます。2016年は風、雨、高い気温と天候や気候がめまぐるしく変わる大会だったので、ランナーのみなさんにとってはすごくつらいコンディションだったと思いますが、32km地点でたくさんの方がハイタッチをしてくれたり手を上げてくれたり、あと10kmという本当にキツイ場所でランナーのみなさんは僕らを迎えてくれる。本当はこちらが迎える側なのに、迎えてくれるんです。これはもう言葉になりませんよね。あと長野マラソンは前日に受付があるんですが、その会場で僕らもランナーのみなさんと会える機会をもらっていて、毎年ブースに来てくれる人が増えて、"公式テーマ・ソングを聴いて練習してきました"とか、"またあの場所にいますか?"とか......本当に嬉しいですよ。この長野マラソンに関わるまでマラソンはひとりで頑張るものだと思ってたんですが、実際は違うんですね。ランナー同士、運営スタッフ、ボランティア、沿道の声の全部がひとつのチーム。そんな中の一員になれて本当に嬉しく思います。

-今作『City』にも、今年の長野マラソンのテーマ・ソングとなったTrack.4「one way」が収められています。マラソンのテーマ・ソングということで、どんなことを考えて楽曲を制作されたのでしょうか?

志津:作詞に関してはこの4年分の長野マラソンへの思いが詰まっていて、実際にランナーのみなさんのたくさんのドラマを間近で見て、感じたことを書いています。何にでも言えることだと思うんですが、形のあるものだけが正しいわけじゃないと思うんですね。そこにかける思いとか、言葉とか......トロフィーやメダルが獲れなくても自分に挑戦することで生まれる気持ちが大切だということを長野マラソンで教えてもらったので、それを書きたかったんです。曲調は"走るリズムで"というのをいつも意識していて、今回はギターと歌だけで静かに幕を開けて......マラソンがスタートするときの高揚感、緊張感を表現しました。

-それでは今作『City』についてもっとうかがっていきたいと思います。アルバム・タイトルの"City"が指すのは単純にバンドの地元である中津川かなと思ったのですが、いかがでしょうか? タイトルを決めた理由、そこに込めた思いなどを教えてください。

志津:このCDを手に取ってくれた人にも必ず故郷があって、住んでる街があって。その街に響かせたいと思ってもらえるCDにしたいというのが、タイトルを"City"にした一番の理由です。僕の住んでいる街の商店街には音楽が流れていて、それがいつもの風景をちょっと違って見せてくれるんじゃないかと。このアルバムもそうなってほしいと思いますね。