Overseas
RA RA RIOT
2016年02月号掲載
Member:Wes Miles(Vo/Key)
-レコーディング場所も、『The Rhumb Line』と同じ、Ryanが所有するワシントン州のスタジオを使っています。前作は同様にプロデューサーのDennis Herringの本拠地であるミシシッピで録音していますし、慣れた環境から自分たちを切り離すことを好むようですね。
ああ、そうすることで得るものが、いつもたくさんあったと思う。まあ、常にそういう状態に身を置いていると、自分たちらしさを失ってしまう可能性もあるよね。今回アルバムのオープニングに「Water」を配置した理由も、そこに関係がある。あの曲はRostamとLAでレコーディングしたんだけど、LAだから友人が大勢いたし、知っている人たちの顔を見ながら作ることができて、地元ではないにしても、あまり隔絶した感じがなかった。ただすごく開放的なフィーリングに満ちていた。それに、VOXというスタジオですごく頼りになるエンジニアにも出会えて、いろいろと新しいことを試すことができたんだ。今回は感情的な振り幅が欲しかったし、そのためにはある程度自分たちを普段の環境から切り離して、じっくりとアレンジを練って、曲を完成させる必要があったんじゃないかな。それに、Rostamと作った2曲については、環境が重要な役割を担ったと思うよ。
-サウンド・プロダクション面で何か最初から頭にあったアイディアはあるんでしょうか? ドラムの音の奥行きだったり、ドラマ性やスケール感、アンセミックな曲調などにおいて、80年代のポップ・ロックの影響が強く感じられたのですが......。
うん。さっきも似たようなことを言ったけど、今回はもっと振り幅のあるアルバムにしたかったんだ。より幅広い表現を網羅したかった。幅広いフィーリングを取り入れて。『Beta Love』は何といっても非常にテーマが限定された、極めてコンセプチュアルな作品だった。それゆえに強い繋がりを感じた人もいるわけだけど、と同時に、テーマが限定的で具体的だっただけに関心を持てなかったという人も大勢いる。だから本作では視野を広げて、且つ、よりぬくもりのあるアルバムにしたかった。『Beta Love』には、ちょっと人の神経を逆なでするようなところがあったからね。そういう狂騒的な部分は多少引き継いでいるけど、ぬくもりを与えることで、親近感を抱きやすいアルバムになったと思う。人と人の絆を感じられるんじゃないかな。少なくとも僕自身がこのアルバムを聴いていると、制作過程で僕らを支えてくれた人たち、これから聴いてくれるだろう人たち、僕がこれらの曲を宛てた人たちとの繋がりを実感できるんだ。ひとつ具体例を挙げるとすると、Rostamと僕はU2の『Achtung Baby』(1991年リリースの7thアルバム)の大ファンなものだから、「Water」を作ったときにはあのアルバムをすごく意識していた。あれはU2のキャリアにおいて最もエレクトロニックな作品......というか、少なくともあの時点では間違いなく1番エレクトロニックな作品で、ふたりとも、いつかあの音を掘り下げたいと思っていたのさ。「Water」はそういう意味で、『Achtung Baby』の世界へ、あのフィーリングへ、思い切り飛び込んだ曲だよ。それに僕のヴォーカルもこれまでと違う。Rostamはどういうわけか、いつも僕からすごくスペシャルなものを引き出してくれるような気がするんだ。うまく説明できないんだけど、今回のヴォーカル・パフォーマンスをすごく誇りに感じている。今までで最高の出来だと思うよ。そういう面でも、聴き手との繋がりを確立しやすいアルバムなんじゃないかな。
-たしかに、他にTrack.6「Call Me Out」なんかでも、かつてなくヴォーカルに自信が漲っていますよね。全体的に前面に押し出された印象があります。
ありがとう! 僕自身もそう感じるよ。特に、アルバム制作中に30歳の誕生日を迎えたものだから、この年になって、シンガーとして自分にとって最高のパフォーマンスを実現させられたってことに、すごく興奮しているんだ。大きな開放感を味わったよ。
-また、あなたたちのトレードマークであるストリングスに代表されるアコースティックな面と、前作で切り開いたエレクトロニックな面が、今回はちょうどいいバランスを見出しているのでは?
ああ、そう思うよ。『Beta Love』を作り終えた時点で、"じゃあまた1stのころの路線に戻ろうか"って展開もあり得た。でも、僕らはこれまでに作ったすべてのアルバムから多くを学んだと思うし、何らかの形で聴き手がこれらのアルバムに繋がりを感じてくれたのであれば、それを放棄したくはない。たとえ浸透するまでに時間がかかったり、中には理解できなかった人がいたとしても。『Beta Love』がまさにそうで、あのアルバムに深い思い入れを抱く人たちがいて、そういう意味では大成功だったと思うし、僕らもそのことに興奮させられたし、一連の体験を大切にしたい。でも他方では、今も引き続きバンドとして成長していることを実感したかった。過去に逆戻りしたくはなかった。すでにやったことをただ繰り返したくなかった。いろんな積み重ねの上に新しいことをしたいという気持ちが、僕らを駆り立てていたんだ。
-曲作りにプロデューサーたちを積極的に関与させたのも、新しい試みですね。
うん。ほら、若いころって、そういうことに頑ななこだわりがあって、"誰にも僕の曲には触れさせない!"って思ったりする。"あまりにも思い入れがありすぎる"とか言ってね。そういうふうに強く感じることも、若いころは大切だと思うんだ。僕らの場合も、自分たちの力だけでいろんなタイプの曲をいくらでも書けるし、このアルバムにも5人だけで書いた曲や、5人の中の誰かが書いた曲がある。でも僕らは多様なアルバムを目指していた。それは僕らにとって、これまでも常に重要な優先事項だった。で、できるだけ幅広いフィーリングを網羅したいのであれば、多様な影響源と、大勢の作り手を巻き込むのが得策なんだ。自分たちには見えないことを、客観的な視線で提案してくれるからね。それって面白いものだよ。なぜって、なんだかんだ言って僕らは、いろんなこだわりに縛られている。"う~ん、そこは変えたくないな"と思ってしまう。でも外部の人たちを巻き込めば、そういったこだわりを手放すことを強いられる。決定権を他の人に委ねることになる。すごく不安な気持ちにさせられるけど、僕らのようにコラボレーターたちを信頼していれば、最終的な見返りは本当に大きい。例えば「Water」がそうだね。ついさっきもこの曲を練習していたんだけど、Rostamがいなかったら絶対に生まれ得なかった曲だから、こうして曲が存在すること自体が本当に嬉しいんだ。誰かとコラボすることによって、思いもよらなかった曲が生まれるというのは、とてもスペシャルな体験だよ。
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