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THE RENTALS

2010年06月号掲載

THE RENTALS

Writer 道明 利友

THE RENTALSといえば、日本のファンにとって記憶に新しいのはおそらくASIAN KUNG-FU GENERATIONのメンバーの熱望で実現した“NANO-MUGEN FES.”への出演だろう。アジカンのメンバーを以前取材したときに、その思い出を本当に嬉しそうに話していたのも、個人的には印象深い。

「俺、普通にWEEZERのファンだったからね。で……。なんだか知らないけど、Matt Sharpと楽屋で一時間ぐらいいてさ(笑)。英語そんな話せないのに。でもMatt、すごい優しくて」(後藤 正文)

そんな微笑ましいシーンが繰り広げられていた2006年の横浜アリーナでのステージで、THE RENTALSの魅力にあらためて触れたファンを、さらに喜ばせそうな注目のアイテムが登場だ。THE RENTALSの楽曲を数々のミュージシャンがカバーした、今回のトリビュートアルバム。まず驚くのは、なんといってもその顔ぶれ! 1990年代から現在にかけての音楽シーンを面白くしてくれている、オルタナティブな精鋭が集結しているのがスゴい。この面々に少なからぬ影響を何かしら与えたということからも、THE RENTALSの音楽性がいかに個性的かが分かる。

その幕開けを飾る1曲は、YEAH YEAH YEAHSの「THE LOVE I’M SEARCHING FOR」。アコースティックギターの調べと、KAREN Oのどこか寂しげなムードをまとった歌声に胸をギュッとつかまれたかと思えば、THE RENTALSと同じムーグ・シンセを駆使することからも本家への敬愛を感じさせるのは、MOTION CITY SOUNDTRACK。彼らがカバーした「WAITING」は、THE RENTALSを結成する前にマットが在籍したWEEZERのパワー・ポップ感に通じそうなものをうかがえたりするのが面白い。
TEGAN AND SARAは、THE RENTALSのツアーに参加経験もあるなど、特に親交が深そうな2人組。最近では、ダンスミュージックシーンのビッグネーム・DJ Tiëstoのアルバム『Kaleidoscope』でフィーチャーされたり、多方面からの注目も熱い才女によるカバー「THE MAN WITH TWO BRAINS」は、やわらかな音色に包まれながら響く美しいコーラスワークに惹き込まれる。そして、アルバム中盤で注目したいのがCOPELANDによる1曲、「GETTING BY」。THE RENTALSとアジカンが“NANO-MUGEN FES.”でセッションしたのが、まさにこの曲だ。“ピアノ・エモ”と評される彼らのスタイルで、切なくも、スケール感たっぷりな1曲に生まれ変わった「GETTING BY」。惜しくも解散を発表、日本にも最後の来日をした彼らのこの素晴らしきアンサンブルが聴けなくなってしまうのが、たまらなく悲しい……(涙)。
さらに、彼らに関しては余計な説明は一切不要と思われるアイルランドの英雄・ASHも登場!「PLEASE LET THAT BE YOU」で見せたスタイルは、あくまでもメロディーはキャッチー、それでいてギターはヘヴィ。メイン・ストリームな音楽シーンにもその魅力をアピールするロック・サウンドを堪能させてくれる。その他にもTOKYO POLICE CLUB、MORNINGWOOD、ABERFELDY、THE HELIO SEQUENCE 、そしてOZMAと、オルタナ系&インディーロック系好き注目必至な面々と並び立つ日本代表は、もちろんASIAN KUNG-FU GENERATION!彼らのカバー「HELLO HELLO」は、アジカンらしい耳に残る独特なツイン・ギターサウンドを軸に、THE RENTALSのオリジナルメンバーRachel Hadenをゲストに招いてゴッチとのツイン・ヴォーカルを聴かせてくれる、じつにプレミアムな作品だ。

と、ボリューム満載の本編が幕を閉じても油断は禁物(笑)。THE RENTALSにゴッチがヴォーカルとして加わったボーナストラック「A ROSE IS A ROSE (Japanese Version)」という、さらなるプレミアムが待っている。ファミコン的ピコピコサウンド、プリティな子供のコーラス隊に重なる日本語の歌詞、etc……。可愛らしい雰囲気に思わず笑顔になってしまいつつ、細部まで凝られた音作りはやっぱりTHE RENTALSだなと感心するしかない。キャッチーで、ポップで、一筋縄じゃいかない刺激もたっぷりなTHE RENTALSの世界。そこから広がった音楽の輪を、音楽を心から愛する全てのミュージック・フリークに楽しんでもらいたい。


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