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RELIENT K

2009年11月号掲載

RELIENT K

Writer 杉浦 薫

RELIENT Kの6枚目のオリジナル・アルバム『Forget And Not Slow Down』がリリースされる。まずはバンドについておさらいしておこう。1997年にオハイオ州、カントにて結成される。美しいメロディとトリッキーな歌詞、圧倒的ライヴ・パフォーマンスが話題を呼び、その活動の初期-中期はメロディック・パンク・バンドとして大きく注目される。セカンド・アルバム『The Anatomy Of The Tongue In Cheek』、グラミー賞ノミネート作となったサード・アルバム『Two Lefts Don’t Make A Right・・・But Three Do』、そして4thとなる『MMHMM』の3作品が、全て全米において50万枚を超えるセールスを記録。前作『Five Score And Seven Years Ago』は全米初登場6位を記録し、発売第一週で6万枚のセールスを上げている。今日までにアルバム累計300万枚をセールスし、ゴールド・ディスクを3枚輩出している。

そして、結成より12年、バンドにとって6枚目のアルバム『Forget And Not Slow Down』が、クリスマスシーズンである12月23日、ここ日本でもリリースされる。

プロデューサーにMark Lee Townsend、ミックスにはNIRVANAやJeff Bucklyなどを手掛けた敏腕、Andy Wallaceを迎えた今作は、RELIENT Kらしい、疾走感に溢れたリズムと、美しい旋律とが織り成すコントラストが素敵な曲が満載の作品となっているのはもちろんであるが、曲の終わりごとに次の曲への伏線が仕込まれていることにより、 “アルバムを通して最後まで聴くことに”に大きな意義を持つ、1曲1曲の繋がり、関連性がこと深いアルバムであるという印象だ。これは作曲者のMattew Thiessenがテネシー州のウィンチェスターの湖畔の家で隠遁生活を送りながら作曲を送ったということに大きいな要因があるのではないだろうか。

「2~3ヶ月間完全に一人きりだった。最高だったよ。何か考え事をしていても誰に邪魔されることもなく6~7時間それについてずっと考えられる。一連の思考をずっと保ってられるんだ。」
何にも邪魔されることのなかった彼の思考の連続性が、そのまま曲という形に現れたのだろう。

このアルバムからは一貫して、晴れ渡り、透き通った空の“青”がイメージされる。そして、その“青”はとても生命力に溢れ、力強く輝いている。 この力強さの意味は何か。それは、このアルバムに一貫している精神性についてMattew Thiessenが語っていることから察する通りだ。 「感情として嫌なことを忘れて先に進むのは簡単ではない。でも時にそれは自分にとっていい風に働くんだ。常に大きな絵を頭の中で描いていなきゃいけない。自分をかわいそうに思い、決していい方向に思案をめぐらせてはいない状態は生産的とは言えない。だから前に進むためには、『どうすればよくなるか?』ってことに集中しなきゃいけない。それがこのアルバムの全体のコンセプトなんだ。」 過ちを後悔し、学んでいくプロセスから一つ先の“乗り越える”ことこそが、『Forget And Not Slow Down』のテーマであり、この漲る力強さの正体。 なかったことにするより、あったことを最終的に肯定したい。肯定するには何よりも“乗り越える”ことが必要なのだ。

こんなテーマを頭に入れながら、『Forget And Not Slow Down』を聴いた時、ある種の神聖さを伴った感動が、あなたに降りかかってくるだろう。 そして、このアルバムの精神性が、サウンドにも素直に現れている。最早パンクという言葉では語りきれない、巧みな曲構成。メジャーコードとマイナーコードを交互に使いつつ、透き通った綺麗な声で、包み込むように、語り掛けてくるような歌。よく晴れた日に、障害物のない広大な地で聞きたいアルバムだ。

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