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INTERVIEW

Japanese

柴山一幸

2015年06月号掲載

柴山一幸

Interviewer:吉羽 さおり

-ルーツ的なお話もありましたが、ライナーノーツで、VAMPIRE WEEKENDの名前も出ていたので、こういうところも聴いているんだなと思ったんですが、今の音楽もいろいろ刺激になっていますか。

そうですね。あとは、MUTEMATHとか。

-え、MUTEMATHですか?

音が今っぽいじゃないですか。実はミックスで、結局そうはならなかったんですけど、エンジニアと"あのMUTEMATHの今っぽい感じが欲しいね"とは言っていたんだよね。最終的にちょっと自分の曲だと合わない部分もあったので、前のアルバムと中間くらいのところで落ち着いたんだけど。MUTEMATHは音はシンプルだけどすごくかっこいい。あれは多分ドラムが――生では聴いたことがないんだけど、YouTubeを観る限りドラムの出音がちょっと違うんですよね。コンプをかけてるとかそういうレベルじゃなくて、出音が相当アタッキーで強いから、もうあの感じにできてる。あのドラムがあるから、ああいう音像になるんだと思うんですよね。

-ちょっと意外なバンド名が出てきて驚きました(笑)。

ロック、いいですよね。開放的になれるじゃないですか。

-柴山さんの音楽は、開放というのとはまた違ったベクトルで、密室感みたいなものもあると思いますが(笑)。

(笑)前作の『君とオンガク』がわりと開放感があったんですよね。リスナーとコミュニケーションをしようっていうのがあったんですけど。今回はメンバーが違って。それまで2枚連続で同じメンバーだったんですけど、いろいろと音楽性の違いもあって、今回は新しい......と言っても昔からの友達なんですけど、新しいメンバーでやったので。なので、気分的にちょっと落ち込んだりとか、人間関係がっていうのがあったので、また閉じちゃったんですよね(笑)。そういう気分は出ちゃうじゃないですか。この前は結構開放的で、このままいくのかと思ったら戻っちゃって。また箱庭感出ちゃったなみたいな(笑)。

-自然のなりゆきだったんですね。でも、おひとりで作ったらもっと密な箱庭感があったかもしれませんが、バンド・サウンドが活かされていることでメンバーの方が窓を開けていると思いますよ(笑)。

酸素を入れてくれたんだね(笑)。

-歌詞の面でも、そのときの気分は反映されているんですか?

「カプセルラブ」は引きこもりの曲なんですよね。僕は、ユニットバスで本を読んだりとか、音楽聴いていると、すごい落ち着くんですよね。あの狭い空間で。これがロケットになってこのまま移動できて、でもひとりじゃ寂しいからコミュニケーションは誰かとしたいっていうふうに、20歳くらいのときには何度も思っていたんですよね。でもそれがネットの普及とともにできるようになってきたんですよね。今の引きこもりの人たち、30代の人もいっぱいいると思うんですけど、気持ちはよくわかるし、自分も実家だったらそうなるかもしれない。もちろん、いいとは思ってないけど、その感じっていうのは、1歩自分が間違ったらそうなってしまうと感じるところはあるんですよ。「カプセルラブ」なんかは、誰とも会わなくてもハッピー・バースデーを愛する人に言えて、この守られた狭い空間のなかで自分の思考をどこにでも飛ばせるっていう、ある意味自分の理想的な世界を歌ったというかね(笑)。

-なるほど。今回、アルバムに向けてはこの10曲以外にもいろいろ作っていたんですか。

他にも作りましたね。アイディアだけ出してボツになったものもあるから、最後までアレンジがいったのはこの10曲だったかな。

-そういったアイディアの種は、後々曲になっていくんですか。

ええと、2013年の復活作が『I'll be there』で、去年リリースしたアルバムが『君とオンガク』で、今回の『YELLING』なんですけど。復活第1作のときはずっと休んでいたから、"10年で10枚作る"っていろんなところで言ったんですよ。で、今回3作目じゃないですか。正直さすがにもう、心の状態とかお金とか、2年はできないかなって(笑)。でも最後にベスト・アルバム出せば大丈夫かなとか。今回のアルバムはいろんなものがすり減ったんですよね、春先だから自律神経も乱れるじゃないですか(笑)。だから今、曲を作るっていうのはまったく言えないんですよね。このままやめちゃいたいくらい。いや、やめないですけど(笑)。

-作家活動をされていた時期もありましたが、もともとご自身では、多作な方だと思いますか?

自慢してもいいですか、僕、多作なんです(笑)。やってないときもずっと曲を作ってたんです、発表する場がなくても。曲は作ろうと思えば、いくらでも作れる自信はありますね。新しい言葉を生むとか、言葉とか感情とかをさかさまにして、さかさまなんだけどそれがすごく意味の通るものになったときとか、そういうパズルみたいな遊びが、やっぱり楽しいし好きなんですよね。カプセルのなかでね(笑)。