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INTERVIEW

Japanese

クウチュウ戦

2015年05月号掲載

クウチュウ戦

メンバー:リヨ(Vo/Gt)

インタビュアー:天野 史彬

-さっき、このアルバムは音楽の中で音楽について歌っているって言いましたけど、それってつまり、リヨさんにとっては理想の中で理想を歌うっていうことなんですよね。それは、作品を聴いてもすごく感じました。

うん......そうかもしれないですね。意図はしていなかったけど、言われてみたら、そうだったのかもしれないなって思います。このアルバムは、本当に転換期なんですよ。『コンパクト』でガラッと変わった、みたいな。人に聴かれたい、寄り添いたいと思いだした、それがもうリヨ史に残る大事件(笑)。"よし、今からやるぞ!"っていう、その最初の6曲なんですよね。

-でもじゃあ、この6曲を完成させるにあたって、産みの苦しみみたいなものはありませんでしたか? だって、今までは人に寄り添いたいと思っていなかったわけですから。

なかったです。逆にこっちのほうが自然な気がしました。『プログレ』って、今でも内容は好きだし、初期衝動だと思っているんですけど、でも、右利きなのに左手で絵を描いていた感覚なんですよね。たとえば『コンパクト』の1曲目の「追跡されてる」って、今回のMVにもなってて、推し曲じゃないですか。3分だし。でも、あれが1番一瞬でできたんですよ。産みの苦しみは、この6曲に関してはほぼないですね。すごく自然。『プログレ』は、難しいことをしようとしていた分、あっちのほうが産みの苦しみはありましたね。本当は、僕はもともとこっち側の人間なんですよ。だから苦しみはなかったし、むしろすごく気持ちよかったです。

-なるほど。「追跡されてる」の歌詞って面白いですよね。これはどういう想いで書いたんですか?

なんか、追跡されてるっぽくないですか?(笑) AmazonとかGoogleとかで広告が勝手に出るじゃないですか、自分の好きそうなものとか。あと、Twitterとか見ちゃう感じとか......インターネットに対して圧迫感を感じるわけですよ。まぁ、インターネットに限らずですけどね。被害妄想の世界なんですけど、"どいつもこいつも怪しいぞ"みたいな(笑)。

-たとえばリヨさんの好きなSFの世界って、"機械VS人間"みたいな構図を描くものも一時期多かったと思うんですよ。そういうものがリヨさんの中の世界観として出てきている部分はあると思いますか?

なんかさっきから、すごい質問しますよね(笑)。う~ん......別に機械に対して悲観視しているわけではないけど、人間が機械みたいになっちゃうのは違うと思う。要はエモーションですよね。"感じろ感じろ感じろ!"って言いたい。感じるから人間じゃないですか。ロボットがロボットで感じるようになったら面白いですけどね。機械とかテクノロジーに対して悲観的であるわけではないけど、あくまで生身の人間だっていうことを忘れちゃいけないっていうか。なんか今って、変にドライじゃないですか。たとえば、スマホ中毒が社会問題になってるじゃないですか。あれって、画面上でしかコミュニケーションをとらないわけですよね。目でしか情報を得てないんですよ。それがもう人間らしくない。五感で感じるのが人間じゃないですか。感覚の配合比率が著しく視覚だけに偏っている。匂いだってあるし、触ることで感じるものだってあるし、味だってある......そういうのがなくなっていく感覚に対して、ドライだって言いたいんでしょうね。"もっと五感で感じろ!"って。

-たとえば、「MUSIC TRAVELER」で歌われる"懐かしいこと 蘇らせたり"とか、「アモーレ」にある"生まれる前に 聴いたことあるよな/素敵な メロディー"みたいなラインから思い浮かぶ、過去に想いを馳せる感覚も、音楽だからこそ、人間だからこそ感じることができるものなのかなって思うんですけど、これもリヨさんにとっては重要ですか?

あぁ、それはあります。ネガティヴな意味じゃなくてポジティヴな意味で、すごい懐古主義的なんですよね。昔を懐かしむことがすごく好きなんですよ。母親のチャリの後ろに乗って幼稚園まで送っていってもらったこととか、父親が家に帰ってきて、父親の胸に飛びついていったときのスーツの匂いとか......昔を懐かしむのがすごく好きなんです。趣味みたいなものなんですよね。それが自然と出てきているのかもしれないです。音楽って、それを聴いていたときのことを思い出しますよね。十何年も前の雪の日に買ったCDをある夏の日に聴いて、"あのとき、あんなに寒かったな。あんな匂いしたな"っていうことを思いだしたり......ふっと蘇ってきますよね。それって音楽の面白いところだと思いますね。

-やっぱり、人と音楽の間で生まれるエモーションや魔法をすごく信じている方ですよね、リヨさんは。

そうなんですかねぇ......(笑)。

-この先、音楽でどんな理想を作りたいと思いますか?

これをどんどんエスカレートさせていきたいですね。これをもっと極端に、大胆に。でも、寄り添い続けますっていう感じですね。

-歌うテーマとしても"音楽"はずっと存在し続けると思いますか?

歌詞にっていうことですよね? でも本当に、今回は偶然なんですよね(笑)。最近の曲ではあんまりないですね。多岐に渡ってます。

-僕が思うのは、リヨさんの書くラヴ・ソングが聴きたいなって。

あぁ、ありますあります。すごく純粋なラヴ・ソングもありますよ。すごい曲、いっぱいできてますからね。楽しみにしててください(笑)。