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Jack White

2012年04月号掲載

Jack White

新谷 洋子

いよいよ、という言葉は本来こういう時に使うべきなんだろう。THE WHITE STRIPESが解散を発表してから1年余り、“Jack White”の名を冠した初のアルバムが送り出されようとしている。多作な人だけに、サイド・プロジェクトのTHE RACONTEURSとTHE DEAD WEATHERを含めると、我々は毎年のようにJackが関わったアルバムを耳にしてきたことになるが、今回はTHE DEAD WEATHERのセカンド『Sea Of Cowards』以来2年以上の時間が空いた。とはいえ、もちろん何もせずにいたわけじゃない。彼は6年前に移り住んだナッシュヴィルの町に、自ら主宰するレーベルのオフィス、スタジオ、ショップ、ライヴハウスなどを擁する本拠地“Third Man”を設立。その運営を軌道に乗せると共に、プロデューサーとして実にフレキシブルなスタンスで、様々なアーティストたちとセッションを行ない、アナログ・シングルを中心に切れ目なく作品をリリースしてきた。そして『Blunderbuss』と題されたソロ・デビュー作は、まさにこのような活動が可能にしたものだと彼は語る。

「本当にすごく自然に起きたことなんだ。“さあ、ソロ・アルバムを作るぞ”と決めてかかったわけじゃない。ずっとThird Manレーベル用に色んなレコーディングをしていて、その時々にスタジオに来てくれていたミュージシャンに、“ちょっと試してみたいアイデアがあるから、帰る前にそっちでもプレイしてくれないかな”と頼んで、少しずつ曲を作った。最初に生まれたのは「Missing Pieces」だったかな。Daru Johnsonがドラムを叩いているが、たまたま彼が来ていたから、ほかのミュージシャンも集めて、みんなでワン・テイクで録音したのさ。それがプロセスの始まりで、だんだんアルバムを構成するに充分な数の音源が揃ってきて、じゃあちゃんと形にしようかって気持ちになったんだ。」

従ってソロといっても、独りでギターを弾きまくりながら歌う姿を想像していたなら、肩透かしを食らうだろう。本作はJackがThird Manを通じて築いて人脈を駆使し、大勢のミュージシャンを巻き込んで、従来とは異なるバンド・アンサンブルを掘り下げたアルバム。中にはTHE DEAD WEATHER / THE RACONTEURSのJack Lawrenceや、AUTOLUXのCarla Azarといった見覚えのある名前も混じっているが、大半はナッシュヴィルのルーツ音楽シーンで活躍する新旧のプレイヤーたちだ。そもそも、独りでプレイするよりも断然コラボレーションで本領を発揮するタイプのミュージシャンだと、彼は自分を分析する。

「ある意味、僕はどのプロジェクトにもプロデューサーとして臨んでいるように思うんだ。もしくは“監督”だね。一本の映画を監督しつつ、自ら主演もしている感じかな。そんな立場から僕は曲を形作り、バンド・メンバーを集めて、視覚的要素や作品を貫く美意識、トーンなんかを含めて全てを統括する。これまでもそうだったし、このアルバムも然り。だから完全に独りでやるなんて考えたことがないし、自分には必要だとも思っていないんだ。」

ギターにしても、大半の曲ではアコギを手にしており、ソロはごくポイントを抑えて弾くのみ。

「そう、考えてみると、多くの曲で僕は何も楽器を弾いてなかったりする。ただ歌ってるだけ(笑)。ほかのプレイヤーに“こんな感じで”と伝えて、あとはプロダクションとレコーディング作業に専念して、そしてヴォーカルを録る。僕のギター・プレイの大ファンっていう人たちは、全曲でソロを弾いてもらいたいと望んでいたかもしれないけれど、僕はそんな風に曲を書いたことがないからね」。

また、キーボードやペダル・スティールやフィドル等々いつになく多彩なパートを含んでいるために、ブルースやロカビリーからカントリー、ソウルまで、網羅するスタイルの幅は当然広がっており、Jackは異なる音楽的キャラを演じ分けている。興味深いのは、曲ごとに全員女性だったり、全員男性だったり、性別で参加ミュージシャンの編成を変えている点だろう。それも、サウンドの表情が変化に富んでいることと無関係じゃない。

「アルバムを作りながら色々新しいテクニックを取り入れて実験したんだが、これもそのひとつだった。“6人の女性と同じ部屋で一緒にプレイするのは、6人の男性とプレイするのとどう違うんだろうか?”とね。実際やってみると、全然違ったよ(笑)。音に対する反応も異なるし、弾き方ももちろん異なっていて、本当に面白かった。それに僕は長年女性とも男性とも音楽作りをしてきて、一切差別はしていない。自分から異なるものを引き出してくれるしね。それを利用するんだ! 誰かと自分の間に敵対心が生じたなら、それも利用する。セクシュアルな緊張感が生まれたなら、それも利用する。何だろうと曲に、ライヴ・パフォーマンスに、目一杯活かすのさ。」

そんなプロデューサーとしてのアプローチに対して、ソング・ライターとしてのJackはどのように本作に臨んだのか? ご存知のように、THE RACONTEURSはBrendan Bensonとの曲作りを主眼のひとつに位置付けたバンドであり、THE DEAD WEATHERでは4人のメンバーが対等な関係でコラボしているわけで、全方面を自ら指揮して作り上げた今回の曲群は、やはり成り立ちが違う。

「その点についてはTHE WHITE STRIPESの例を引いて説明しよう。あのバンドでのMegと僕は言わば、Jack Whiteというソング・ライターの曲をカヴァーしていたんだ。例えば僕がピアノで書いた曲をエレクトリックなアレンジでカヴァーすることで、THE WHITE STRIPESの曲に変わっていったんだよ。そういう意味で、今回の曲も僕という人間の中から生まれている。でも僕は常に、どこか新しい場所に行こうとしているんだ。究極的に僕は、Robert Johnsonとかブルース・シンガーたちが歌ってきたことと同じ題材を歌っているに過ぎないけれど、それを、どうすれば自分が必要とするやり方で表現できるだろうかと、いつも考えてる。同じストーリーを常に違う方法で書こうとするのは簡単じゃない。でもうまくいくこともあるんだよ。時々、だけれどね(笑)。」

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