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LIVE REPORT

Japanese

LEGO BIG MORL

Skream! マガジン 2021年10月号掲載

2021.08.21 @渋谷CLUB QUATTRO

Reported by 秦 理絵 Photo by 西槇太一

"まさかの連続の人生の中で、15年、LEGO BIG MORLが続いてることが僕らの財産です。そんな僕らについて来てくれてるみなさんは宝物です"。7月から、全国6ヶ所8公演で開催してきた15周年ツアー"LEGO BIG MORL 15th Anniversary Tour 「十五輪」"のセミファイナル会場(※振替日程を除く)となった渋谷CLUB QUATTRO公演で、タナカヒロキ(Gt)は、そんなふうにバンドの歩みを振り返った。

メンバーの脱退、事故、事務所からの独立、現在のコロナ禍。長く活動を続けるバンドの多くがそうであるように、レゴ(LEGO BIG MORL)の15年間も決して平坦ではなかった。そんな日々を越えて辿り着いたこの日の15周年ライヴは、"アニバーサリー"という名は冠しているが、"祝う"というよりもむしろ、通過点のようなライヴだったように思う。積み重ねてきた時間の尊さを噛み締め、決して間違いではなかったことを確かめ合いながら、次の10年に向けての道筋を切り拓く、そんな地に足が着いたライヴだった。

"久しぶりに来たぜ、渋谷!"という、カナタタケヒロ(Vo/Gt)の気合が込もった言葉から、ライヴは「取捨選択」で穏やかに幕を開けた。生の演奏とエレクトロな音像がダイナミックに重なり合うなかで紡がれる美しいメロディ。問い掛けるのは、何を残し、何を手放して、この人生を歩んでいくのかということだ。続けて、カナタが指でフロアを挑発するような動きを見せた、鋭利なアップナンバー「火のない所の煙が僕さ」へ。"この時間だけはみんなと幸せになりたいから。楽しんでいこう"というカナタの言葉を合図に、ヤマモトシンタロウの荒々しいベースが炸裂した「Wait?」では、狭いステージ上でヤマモトとタナカがぶつかりながら演奏する激しいアクションも目を引いた。

昨年9月に発表された最新アルバム『気配』は、新型コロナの影響でツアーを開催することができなかった。その穴埋めのように、この日のライヴは、冒頭の「取捨選択」をはじめ、『気配』の曲を中心に新旧楽曲を織り交ぜたセットリストで進んだ。オルタナティヴな初期曲から、やがてダンス・ミュージックと融合してく中期以降へ。その真ん中に、いつも極上の歌があり続けたレゴの歩みがぎゅっと凝縮されたライヴだった。

"今日は調子がいいです。大船に乗ったつもりでリズムにのってください"というタナカのMCを挟み、軽やかにアップリフティングするバンド・サウンドでダンス空間を作り上げた「Call me」。レゴ節のメロディが映える「ⅩⅩⅩ(turkey)」では、"ここまでの自分だけは今更裏切れない"というフレーズを歌うとき、カナタが自分の胸をそっと叩く姿が印象的だった。この曲も含めて、レゴが3人体制になって初めて発表したアルバム『気配』の曲は過去を肯定し、この先をいかに生きるかを刻んだ、節目の意味合いも帯びた1枚になっていた。だからこそ、15周年のステージで披露されることが似合う曲ばかりだったし、10周年のときに発表し、バンドの足跡を生々しく描いた「傷」を、久々に披露したこともあって、この日の彼らのライヴからは、バンドを背負い続けるという意思を、言葉ではなく、音楽を通して伝えてくれるような瞬間が何度もあった。

ヤマモトがベースを弾く抑制の効いたサウンドに始まり、やがて加わるバンド・サウンドの爆発力が高揚感を生んだ「Spark in the end」。ステージが温かい光で包まれるなか、切ない起伏を描く極上のメロディに、大きな喪失を綴ったバラード「あなたがいればいいのに」と、クライマックスは息を呑む名演が続いた。カナタがフロアを5分割して、"後ろ、真ん中、 前、 右、 左"と呼び掛けて突入した泥臭いガレージ・ロック「正常な狂気」からは、サポート・ドラムの吉田昇吾(UNCHAIN)と共に作り上げるフィジカルなグルーヴが、フロアの熱量をぐんぐん上げていった。そんななか、ジャンルレスなアプローチで、ハイカロリーな演奏を聴かせる「潔癖症」や「天使くんと悪魔ちゃん」では、バンドの地力を存分に発揮する。たとえ声を出せないというコロナ禍の制約があろうと、ライヴハウスに立ったロック・バンドがやるべきことはただひとつ。今をかけがえのない瞬間にするために全力を注ぐだけだ。そんなライヴ・バンドとしてのレゴの矜持が強く滲み出た熱演だった。

"この場所に大きな虹を掛けられたら、未来を一緒に歩いていけると思います"。カナタの言葉で繋いだ開放感あふれる「RAINBOW」では、いよいよライヴのフィナーレに向かいつつある感傷を孕みながら、メンバー紹介を兼ねたソロ回しで沸かせた。ステージ際まで歩み出て、お客さんの表情を見渡すタナカの表情もとてもいい。

本編最後のMCでは、冒頭に書いたとおり、タナカが15周年を振り返る言葉と共に、"この空間を15年間かけて作ってこられたのだと思ったら、感慨深いものがありました"と、噛み締めるように伝えた。ラスト・ナンバーは「HOW TO」。包容力のあるフォーキーなサウンドの中で、いかに生きて、いかに死んでいくかを語り掛けるように歌うナンバー。心のままに、自由に歌ってきたいと、そんな想いも託した1曲を終えて、カナタは"また一緒に僕たちの音楽と共に歩んでゆきましょう!"と、本編を締めくくった。

アンコールでは、このライヴの4日後となる8月25日にリリースすることを発表した新曲「愛を食べた」を、"プレゼント"と言って初披露した。ピンク色の照明。軽やかなファルセット・ヴォーカルがはずむポップな愛の歌は、聴き手をその渦に巻き込むような大きな求心力を持っていた。ラストは、本編の「傷」と同じく、10周年のときに発表した「Blue Birds Story」で、3人がドラム・セットの前でジャーンと向き合って終演。まだ見ぬ"新しい ストーリー"の幕開けを予感させるその楽曲は、今の彼らにもよく似合っていた。

最後にアンコールの印象的なシーンのことを書いておく。ゆるい物販紹介を終えて、タナカが、"みんなを無事に送り届けて......"と真面目に話そうとした途中で、ヤマモトがうっかりシンセをピーンと鳴らしてしまい、それがあまりにも絶妙のタイミングだったため、会場が笑いに包まれる場面があった。そのとき、"最高や! 15年やってきて良かった(笑)"と、ナチュラルに漏らしたカナタの脈絡のない言葉に、なんだか無性にぐっときてしまったのだ。バンドも、ひいては人生も、こういう一瞬のためにあるような気がする。大切な人とくだらないことでバカみたいに笑い合えたら、きっとそれでいいんだと。今のLEGO BIG MORLは、そういうことを自然体でやれる、かっこいいロック・バンドになっている。

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