Japanese
BiS
Skream! マガジン 2020年03月号掲載
2020.02.03 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 宮﨑 大樹 Photo by sotobayashi kenta
BiSH、GANG PARADE、EMPiRE、BiS、CARRY LOOSEらを擁するプロダクションであるWACK。この事務所に所属するアーティストは、とにかくストイックな印象がある。その中でも、BiSについてはそういったイメージが特に強い。それを象徴するのは、褒められることに対して"絶対信じちゃいけないって思ってます"とインタビュー内で語ったネオ・トゥリーズの言葉だ。一見してネガティヴにも捉えられかねない発言だが、その言葉は、目指している遥かなる高みと自分たち自身を比べて感じたギャップであり、現状に満足しない向上心の裏返しなのだろうと分析している。
そんなBiSが8ヶ所9公演を回った["LIVE DAM Ai"presents STAND BY BiS]。このツアーは、全員が万全の状態でできたのが初日のみだったらしく、体調面でかなりの苦労をしてきた旅のようだった。ただでさえ辛口な自己採点をしている彼女たちにとっては、今回のツアーでは苦渋を味わうことも多かったのだろう。そういう経緯もあってか、ツアー・ファイナルとして行われたLIQUIDROOM公演は、これまでのBiSの最高到達点を超えていこうとする、並々ならぬ気迫を感じさせた一夜となった。
開演直前に、LIQUIDROOMの楽屋の様子がフロアに生中継(?)の映像として届けられると、楽屋を飛び出した4人は、"楽しみ!"、"もうすぐ!"と次々に口にし、はやる気持ちを抑えながらステージへと向かっていく。円陣を組んだ彼女たちによる"いくぞー! ニャンニャーン!"の掛け声に触発されて、即日ソールド・アウトを達成するほどにひとりひとりの熱量が高い研究員(※BiSファン)も大歓声で応えた。紗幕に映るメンバーに沸き立つ研究員をよそに、紗幕が落ちると、そこは無人のステージだった(どうやら楽屋を出た映像も含め、事前に準備されたライヴ演出だった模様)。虚を突かれた研究員をよそにBiSが何事もなくステージに現れると、一気に沸点に達したステージに1曲目として投下されたのは「LET'S GO どうも」。今日のためにしっかり仕上げてきたことがひとりひとりの歌声から、はっきりと伝わってくる。"今日のBiSはやってくれるはずだ"、そう確信した瞬間だった。序盤から凄まじい熱量をフロアにまき散らしながら勢い良く突っ走っていくと、空気を一変させたのは「LAUGH AT ME」。シンプルな白い照明に照らされながら、じっくりと歌声を聴かせていく。かと思えば、続く「1,2,3!!!」ではダークな雰囲気を醸し出す。曲によって多種多様な表情を使い分けていくその姿は、エネルギッシュでパワフルなパフォーマンスだけが彼女たちの武器なのではなく、丁寧に魅せていく術を併せ持っていることを証明しているかのようだった。
中盤のMCでは、"私たちBiSは、半年間活動してきて、これまでたくさんの選択を迫られることがありました。そういう選択が間違ってるかもわからない、というようなことも、たくさんありました。でも、こうやってBiSとして活動してきて、たくさんのいろんな人たちと関わってきて、「選択を間違ったとしても、あとから間違ってないことにすればいい」と気がつきました。私たちは、間違うことはあっても、間違えてないことにしていきます"(トギー)と、独特な言い回しで一生懸命に言葉を伝える場面も。会場からは笑いが起きつつも、研究員は温かい拍手でその決意を受け止めていたのが印象的だった。
そうして「SPiLLED MiLK」からライヴ終盤へ突入し「kAsAbutA」、「LOVELY LOVELY」と繋げていく。キラーチューン中のキラーチューン「STUPiD」から「FOR ME」と猛攻を掛けると、攻め手を緩めることなくラスト・スパートへ。視界が奪われるほど大量のスモークの中で歌い上げた「テレフォン」を経て、最後は「thousand crickets」で研究員と共に連続スクワットで残りのエネルギーを出し尽くした。そんなBiSの姿を見ていて感じたのは"ライヴが強すぎる"ということ。BiSの音楽と、メンバーのパフォーマンスは、ライヴハウスから大型の野外フェスまで、どこでも勝負できるライヴ力とでも言うべきポテンシャルを感じさせた。
アンコールの大合唱に応えて登場したメンバー4人は、真剣な表情を見せながらひとりずつMCで言葉を届けていく。個性のバラバラな4人ゆえに、用いる言葉や方向性は違っているが、そこからはBiSの共通意識が伝わってきた。それは、BiSに入って生まれた自身の変化に向き合い、受け入れ、これからもBiSとして生きるという意志。そして、トギーが挙げたBiSにとって宿命の地である"武道館"、"横浜アリーナ"のステージに立ち、ワンマン規模としても、研究員にとっても大きな存在になっていく、という決意にも感じた。そんな未来を照らすように、彼女たちの道を切り拓くように、最後は、「BASKET BOX」と「BiS-どうやらゾンビのおでまし-」をパフォーマンス。すべてを出し切り、歌とダンスで熱狂の夜を締めくくった。
本公演の開演前に、WACKの代表、渡辺淳之介氏が注意事項とともに語った言葉がある。"僕たちがいい曲を出して、いいライヴをしてって思っていたんですけど、LIQUIDROOMに改めて久しぶりに来て、第1期のBiSを思い出しました。僕が一番大事にしてたのって研究員だったなと思って。なので、みなさんと一緒にライヴを作っていく感覚を、今日は改めてみんなと共有したいなと思っています。一緒に楽しみましょう!"。その言葉通り、この日のLIQUIDROOM公演は、BiSと研究員が終始一体感を持って駆け抜け、最高を更新したライヴだったように思う。さらに言えば、"BiSはBiS自身と研究員を大切に思い、そんなBiSのことを研究員も大切に思っている"、そういったお互いの想いを確認し合う、崇高なコミュニケーションのようなライヴでもあった。
冒頭に記した通り、褒められても"絶対信じちゃいけない"と思っているネオ・トゥリーズへ、そしてイトー・ムセンシティ部、チャントモンキー、トギーを含めたBiSの4人の心へいつか届くまで、"最高に熱いライヴをありがとう"と何度でも声を大にして言いたい。
[Setlist]
1. LET'S GO どうも
2. FOOL PROOF
3. KiSS MY ASS
4. TRAP
5. SURRENDER
6. LAUGH AT ME
7. 1,2,3!!!
8. FUCKiNG OUT
9. DEAD or A LiME
10. BiS3
11. teacher teacher teacher
12. 少年の歌13. this is not a love song
14. absolutely meeeeee!!
15. SPiLLED MiLK
16. kAsAbutA
17. LOVELY LOVELY
18. STUPiD
19. FOR ME
20. テレフォン
21. thousand crickets
En1. BASKET BOX
En2. BiS-どうやらゾンビのおでまし-
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