Japanese
ザ50回転ズ / THE TOKYO / BALLOND'OR / The Chain Ups(O.A.)
Skream! マガジン 2019年08月号掲載
2019.06.28 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 稲垣 遥
"初っ端から我々まで、この世のものとは思えないほどの時代遅れ!"――トリを務めたザ50回転ズのダニー(Gt/Vo)が愛を持ってそう形容したが、下北沢LIVEHOLIC 4周年イベントの20日目は、今の時代や流行を気にせず、自らの鳴らす音楽に信念を持ったバンドが集結した一夜だった。

O.A.のThe Chain Upsは、Tシャツにサスペンダーの衣装でも醸し出している通り、少しレトロで、親しみやすいポップ/ロックを鳴らす5人組だ。"最強のオープニング・アクトとして呼ばれて来ました"と言うフロントマン、ヒロツネのお調子者なキャラクターも手伝い、和やかな空気を作り出していく。また紅一点 キョーカの柔らかなドラムや、リバーヴがかかったキーボードが際立つ丸みを帯びたサウンドを奏で、しっかりと会場を温めた。

奇声や雄叫びを上げながら登場したBALLOND'OR。「Strawberry Rider」から轟音とフル・スピードでスタートダッシュを切る、その無鉄砲っぷりに一瞬圧倒されたが、MJM(Vo/Gt)から、バンドが異端すぎてお祝いのイベントに呼ばれたことがなかったので出演できて嬉しいという言葉や、共演のザ50回転ズを聴いて衝撃を受けたという話が語られると、その素直な想いが観客にも響いたようだった。続く「ブリングリング」は、ジャンキーで攻撃的なラップ・パートからポップなメロディのサビに振り切れるトリッキーなナンバーながら、フロアが揺れていく。ハードさとポップさという一見相容れない要素をごった煮にしたサウンド。気がつけばNIKE(Gt)は演奏しながらとは思えないほど踊っているし、AKAHIGE(Dr)はニヤニヤしながらリズムを刻み、†NANCY†(Syn/Ba/Vo)はオーディエンスを煽りながらシャウトし、MJMは上裸でメンバーにぶつかりながら歌い踊り、客席へ飛び込んでいく光景を見て自由すぎて笑ってしまった。そんなふうに気持ち良く笑えたのは、彼らの少年のような純粋さ故だろう。4人が嵐のように去ったあと、筆者はクセになる魅力にとりつかれていた。

続いては、ジャパニーズ・ロックンロールの初期衝動を炸裂させる5人組、THE TOKYO。揃いのスカジャンに身を包み、嶋 大輔「男の勲章」のカバーでサウンド・チェックする。"楽しいフリだなんて/子供にゃできない"など歌詞に哀愁も漂う、大人の金曜日にぴったりの「不埒なフライデー」から本編を始めた。見開いた大きな瞳でひとりひとりの目を見て歌うフロントマン コダマアツシは、「ダンシングブルース」でターンをキメるなど、カッコをつけることも忘れない。ツイスト・ナンバー「あそぼうよ」では、ドラマー以外の4人が前に出て右から左へ観客を打ち抜いていくパフォーマンスも楽しく、フロア後方まで手が上がっていく。そして一転、テンポをグッと落とし、青い証明に照らされスタートした「雨街BLUES」も、また粋。低く掠れた、声量のあるヴォーカルだからこそ、男臭いブルースがストレートに胸に響くのだ。ラストはモータウン調の「落陽」。息ぴったりのリズム隊が支え、ギタリストふたりが前に出ると歓声が沸き大盛り上がり。最後はコダマアツシが"俺たちがTHE TOKYO。東京の、ロック・バンドだ"と拳を前へ突き出してハイキックし、ステージをあとにした。

いよいよ登場したザ50回転ズ。サウンド・チェックの流れで、セットリストにはないCHUCK BERRYの「Johnny B. Goode」を演奏。しかも曲中、各パートの見せ場と煽っておきながら、ダニーがギターで前に出るという笑いも交えたパフォーマンスには、本編前から舌を巻いた。そして「たまにはラブソングを」から本編をスタートすると、ギターの速弾きで魅せる曲や、3人のコーラスが響くツイスト・ナンバーなど、ダニーとドリー(Ba/Vo)で交互にヴォーカルをとる形でライヴを進めていく。"雨はもうやんだぜ"(「レッツゴー3匹!!」)、"生まれた時代が少しだけ遅すぎた"(「夢見るタイムトラベラー」)など、この日にマッチした歌詞の数々にも昂ぶる。待ってましたと言わんばかりの熱気の中、さりげなくロマンチックな夏の日のナンバー「11時55分」では、先ほどまで騒がしかったフロアも一様にうっとり聴き入っていたのも印象的だったし、これをサラリとできてしまうのも、結成15周年を迎える彼らが愛される由縁だ。冒頭で記した台詞のように一見自虐的な言葉も、変わらないロックンロール・バンドとしての矜持が確かに窺えるからこそ、聴く者を勇気づけてくれた。さらに、その後のグルーヴは圧巻。ノンストップで突っ走る3人に呼応して、フロア前方の観客が増えていき、両手を上げて楽しんでいる人も。そのままラスト「おさらばブギウギ」で文字通り手を振ったあと、鳴り止まない拍手に再度登場し、アンコールに選んだのは、RCサクセション「雨あがりの夜空に」。最初から最後まで、熱くも温かい3人にしかできない磐石のロックンロールでこの場に集まった人を肯定し、懐の深さを見せつけていった。
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