Japanese
ReN
Skream! マガジン 2018年01月号掲載
2017.12.15 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 秦 理絵
満員の新代田FEVERで"もっと大きな会場でもReNは十分に歌を届けられる"と思ったのは、ちょうど半年前だった。あれから6ヶ月でキャパ300から900へと3倍の広さの会場に。恵比寿LIQUIDROOMも見事ソールド・アウトさせたReNは、その場所で全国13ヶ所を回った"「LIFE SAVER」ONE MAN TOUR"のファイナルを迎えた。足元にループ・マシーンを置くほか、ステージには楽器も大がかりなセットも何もない。ひとりの人間が身ひとつで900人を熱狂させるその光景は、言い様のないカタルシスを生むものだった。
ライヴは最新アルバム『LIFE SAVER』のタイトル・トラック「Life Saver」から幕を開けた。ReNの人生を大きく変えたEd Sheeranに大きな影響を受けたこの曲は、アコギの低音域が淡々と刻むリズムに、ReN自身が誰かのライフセーバーになりたいという決意を刻んだ楽曲だ。ギター1本と自分自身の歌声を多重録音しながら積み重ねていくのがReNのステージ・スタイル。曲が進むにつれて、ひとつひとつの音が目の前で緻密に折り重なっていく昂揚感は、完成されたCD音源を聴くのとはまったく違う感動がある。一度、ReNに"これをそのまま音源にできないのか?"と聞いたことがあるのだが、答えはノーだった。ライヴでのやり方はどうしてもイントロが長くなり、音源化すると冗長に聴こえてしまうのだという。まさにReNのライヴは、ライヴでしか味わえない刹那的なものなのだ。
ステージを濃いブルーに染めて内なる衝動を淡々と歌う「Stars」から、その衝動をメラメラと燃え上がらせるような「DREAM」へ繋いだ流れは圧巻だった。過度な脚色は一切なく、極限まで削ぎ落とした音楽だからこそ、特にライヴではReNの楽曲に刻まれた自身の生き方がまざまざと浮き彫りになる。レーサーになるという道を怪我によって挫折し、ドン底のなか自分自身を救った音楽に生きる活路を見出したという異色の経歴であるがゆえに、その歌には音楽への純真さと、音楽をもって新たな人生を切り拓こうとする情熱が強く根づいている。
MCでは激動の1年を振り返って"背伸びしないと上れない階段もあったけど、東京に帰ってくるときにちゃんとレベルアップしなきゃと思って、ツアーを回ってきた"と語ったReN。ここで今年1月からAbemaTVで放送されるドラマ"#声だけ天使"の主題歌として書き下ろした新曲「Aurora」を初めて披露。軽やかなコーラスに乗せたキャッチーなメロディがReNの新境地となる楽曲だ。ラスト・ソングは「Lights」。"みんなが明日から頑張ろうと思える空間を作っていきたい"という真摯な想いとともに、幾重にも声を重ねたコーラス・ワークが"We are the lights"というフレーズを紡ぐ。そこで描く光は決して太陽のような眩しい光ではないが、月明かりのような包容力を持つ優しい光の歌だった。
アンコールでは「Be My Girl」や「PASSION」など3曲を届けたが、やはりこの日も長いこと歓声が鳴り止まなかった。そして、お客さんの熱い想いに応えたダブル・アンコールへ。"もう次で最後だよ。ひとりでやってるんだからね(笑)"と言うと、「Your Song」で今度こそ本当にライヴは幕を閉じた。この日のライヴでは、"今回のツアーでは改めて音楽の力を信じることができた"というReNの言葉も印象的だった。そのかけがえのない経験は、やがてReNの糧になる。ギター1本で世界を変えようとする若きシンガー・ソングライターの果てなき旅路はまだまだ始まったばかりだ。
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