Japanese
FOUR GET ME A NOTS
Skream! マガジン 2013年06月号掲載
2013.05.02 @渋谷CLUB QUATTRO
Writer 吉羽 さおり
3月16日に地元・千葉からスタートし、全国を巡ったニュー・アルバム『BLINKS』のリリース・ツアーが、渋谷CLUB QUATTROで最終日を迎えた。『BLINKS』は、文句なしにライヴで映えて盛り上がる、高揚感とエネルギーに満ちた作品。それだけにこのステージへの観客の期待感やテンションも、相当に高い。FOUR GET ME A NOTSの3人は、そんな観客の急くような手拍子と歓声のなか登場した。
オープニングは、『BLINKS』の1曲目でもある「Walk together」。物語のはじまりを予感させるような高橋智恵による印象的なギター・イントロから、一気にビートを加速させてフロアに熱い渦を巻き起こす。少々荒っぽいくらいに、気迫がつんのめった感じでアンサンブルをぶっ飛ばしていくが、その前のめりさが痛快な抜けを呼んでいる。続く「Arrow」、そして「By your hands」と、アルバムと同じ流れで連打していった曲も怒涛のパワーで、フロアに音をねじ込んでいった。モッシュ、ダイヴ、突き上げるコブシに、手拍子と笑顔が、会場に広がっていった。
“BLINKS TOUR FINALへようこそ”。高橋の第一声に、かわいい!という野太い声があがる。髪を振り乱してギターを豪快にかきむしる高橋だが、MCとなると照れ臭そうに話をする。本人曰く、喋るのは緊張するということだけれど、長年ステージに立っても、どんなに作品を作っても素直さ、真っ直ぐさは変わらないんだなと改めて感じる。この、ちょっと不器用だけれど正直な思い、胸にある熱い思いを高い温度のままでパッケージしたのが『BLINKS』という作品である。阿部貴之(Dr/Vo)は“僕らの最高傑作ができた”と語り、石坪泰知(Vo/Ba)は“今回は3人が今まででいちばん楽しめたツアーだった。それをここで思い切り出したい”と告げた。3人のノリや、音から滲む明るく開放的な空気が、そういった言葉を裏打ちしていく。新旧入り混じった中盤は、ぐっと引きしまったプレイで、会場の温度を上げていった。
またこの日は、ファイナル公演ということでスペシャル・ゲストが登場。大きな歓声に迎えられたのは、Northern19の笠原健太郎(Vo/Gt)。FOUR GET ME A NOTSがまだ“ファイナル御飯”と名乗っていたときからの仲という、言わば盟友の登場だ。そして笠原がアコースティック・ギターとして加わり、このツアーで初めて披露するという「Lifework」が、じっくりと演奏された。せっかくなのでもう1曲ということで、アルバム中もっともハード・ロッキンな「Independence」では、高橋とのツイン・ギターがうなりをあげる。ド直球で男臭く、汗臭いサウンドも、意外に似合う。やりきった感で、すがすがしい笑顔を見せたプレイ後のメンバーたちの表情はなんとも楽しげだった。
そして、後半へ。泣きのメロディと、男女ツイン・ヴォーカルの哀愁味とエモーションが会場を駆け抜け、シンガロングやダイヴがひっきりなしに巻き起こっていく。ライヴが進むに連れて、無邪気に音と戯れる感覚から、頼もしく大歓声を指揮していく存在感へと、何倍にもタフになっていくのが見てとれる。これが、彼らが充実したツアーを重ねてきたというなによりの証なんだろう。“自分のやりたいようにやるという人生はイヤ。大切な人に、なにかを残したいんだ”。石坪がそう語って、最後にプレイされたのはアルバムのリード曲にもなった「Left behind」だった。石坪自身の体験を通して生まれたこの曲は、後に続く者にしっかりとバトンを繋げていくこと、受け継いだものを引き継いでいくことが、歌に織り込まれた。パワフルで、はじけるような笑顔で包まれたこの空間もまた、続いていく日の糧に、あるいはこれから先の種になっていったらいい。そんな思いを感じた。最高傑作ができた、というそのバンドの自負と、前向きな力を全身に浴びたツアー・ファイナルだった。
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