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INTERVIEW

Japanese

DOLL PARTS

 

DOLL PARTS

Member:ARISA(Vo/Gt)

Interviewer:山口 哲生

DOLL PARTSが、前作から2年ぶりとなるフル・アルバム『B.O.G "Bragging out garbage"』を完成させた。"Bragging out garbage=ゴミを自慢する"というタイトルを掲げた本作を制作し始める直前、メンバー全員が"風向きが変わった"ことを感じたそう。そんなバンドの現状を威風堂々と高鳴らす、凶暴で豪快で繊細で、強い意志が漲りまくったロック・アルバムに仕上がった。大充実の一枚について、ヴォーカル・ギターのARISAに話を訊く。

-アルバム『B.O.G "Bragging out garbage"』をリリースされましたが、全国発売に先駆けて行った東名阪でのレコ発ライヴはいかがでしたか?

初めてライヴに来てくださる方がわりと結構たくさんいて。というのも、アルバムの1曲目に入っている「支配」のミュージック・ビデオが結構回っていて、それを観た方が来てくださったり、あとは久しぶりに来てくれた方もいたりして、CDもめちゃくちゃ売れて大成功だったんじゃないかなと(笑)。そういう感触はありますね。

-間違いなくライヴが良かったからCDが売れたっていうことですもんね。

そうだったら嬉しいですけど(笑)。

-いや、絶対にそうですよ。

そのときは先行リリースということでライヴでしか買えなかったんですけど、CDを1枚買って、良かったから人に渡したいってことで2枚目を買ってくださる方もいて。結構いいスタートを切れたんじゃないかなって思ってます。

-セットリストはアルバムの新曲がメインだったんですか?

そうですね。『B.O.G "Bragging out garbage"』に入れるために作った新曲を結構多めに入れて、なおかつライヴで盛り上がる曲を少しずつ入れていくみたいな感じでやらせてもらいました。

-その状況だと、最初の段階ではお客さんは様子見の状態になると思うんですが、それでも歌っていてこれはちゃんと届いてるな、響いてるなという感覚がありました?

はい。というのも、ライヴの動画をアップしてくださっているファンの方がいて、4月に東京でやったリリース・ワンマン([DOLL PARTS "New album release"2 Consecutive Months One-Man Live‼︎])のときに、(撮影OKで)新曲もアップして大丈夫ですよっていうことで、その動画がSNS上でわりと流れていたので。CDがまだ手元にない人も結構ノってくださって、わりと馴染んでたんじゃないかなって。

-理想的ですね。そんなアルバム『B.O.G "Bragging out garbage"』についてお聞きしていきたいんですが、まず、タイトルについて。Bragging out garbageは、"ゴミを自慢する"みたいな意味ですけども。

まず、メンバー内で"Bragging out garbage"というタイトルで行こうやって話になったんです。"こんなゴミみたいな音楽、最高だろ!"みたいなニュアンスなんですけど、単純にそこはかっこいいねっていう理由なだけで(笑)。でも、意味を持たせたいよねという話にもなって。それで頭の文字を取って"B.O.G"を付けたんですけど、ファンの方やライヴを観に来てくれた人が、"DOLL PARTSの沼にハマった"とか"罠にハマった"、"泥沼に落とされた"とか(笑)、そういう感じの表現をしてくださることが結構多いんです。"Bog"は沼という意味だったのもあって、タイトルはそれで決まった感じでしたね。

-すごくきれいにハマりましたね。

そうなんです(笑)。私も歌詞で泥沼とか罠ハマる、落ちるとか、そんなワードをよく使うので、ファンと共有できるタイトルというか。そんなタイトルにもしたいという話をしていたので、うまくハマったかなって感じはありますね。

-前作(2023年リリースの1stフル・アルバム『DOPE』)よりも全体通して純粋にパワーアップしている印象を受けました。今作はどういう1枚にしようと考えていましたか?

私の中にロック像があって、思想とかいろんなものも持ってはいるんですけど、アルバムはあんまりテーマを決めて作りたくないっていうのがあって。それはなぜかというと、そのテーマの枠から出られなくなっちゃうようなイメージが自分の中であったんです。だからそういったものは決めずに、そのとき生まれるもの、そのとき自分が出せる全てを出し切るイメージで作っていたところがあって。

-なるほど。

前作の『DOPE』もテーマとかは決めずにワーッと作ったんですよ。そこからツアーだったり、自主企画で結構大きいライヴハウスでやらしてもらったり、今回のアルバムを作るまでにいろいろな経験をたくさん積ませてもらっていて。そのなかで成長した部分といいいますか、ライヴをやるときの熱量みたいなものがメンバー全員上がってきているので、そういったところを全部出せたアルバムなんじゃないかなって自分では思ってます。

-今の自分が作りたいもの、歌いたいことがそのまま出てきているという。

メンバーの間でもアルバムを作るにあたって、"うちら、今こういう曲をやったら最高になるんじゃない?"とか、ライヴを重ねていくことでそんな話をする機会もたくさん出てきて。それで、"今最高のアルバム出したら、うちらヤバいんじゃないの?"みたいなところからアルバム制作が始まった感じでしたね。

-"今こういう曲をやったら最高になるんじゃない?"って話になって作った曲はどの曲ですか?

それこそ「支配」、あとは「My place」はそこを結構意識して作った感じがあって。うちはベースレスのバンドではあるんですけど、「支配」はベースが結構印象的な曲で。ちょっとPJ Harveyみたいな感じというか、ベースラインが特徴的なものにしたいってところから始まったんですけど、今回のアルバムに入っている新曲は、私がこんな曲をやりたいと主張したものが多かったんです。そしたらメンバーのKOTARO(Dr)も"それいいね"みたいな感じで共感してくれて、やりたい方向性が全く一緒だったというか。それもあって、曲作りはわりとスムーズにいきました。

-「支配」はMVも撮影されていますが、この曲でMVを撮ろうというのも事前に決めて作られたんですか?

MVに関しては、もともとは「わたしの正体」にしようって決まっていて、打ち合わせも1回終わっていたんですけど、私がやっぱりこっちにしよう! って変えちゃったんですよ(笑)。というのも、「わたしの正体」はライヴで盛り上がるような曲だし、メロディ的にもいろんな層の人に刺さるんじゃないかなってイメージはあったんですけど、今回のアルバムに関してはちょっと尖ったものというか、今までのアルバムや楽曲よりも、もうちょっとニッチな感じにしたい気持ちがあったんですよね。だからミュージック・ビデオも、みんなに分かりやすい曲よりは、「支配」は私の中でちょっとニッチな感覚があったので、こっちで勝負しようやって切り替えました。そしたらみんなわりとハマってました(笑)。

-あと「支配」は、ARISAさんがちょっとガナり気味に歌っているところもあって。あそこすごくいいですね。

あまり意識して歌ってないんですけど、今回の新曲に関しては、プロデューサーでサポート・ギターもしてくれているCOZZiが歌を録ってくれて、信頼感もあるんで、思ったままに、エネルギーのままに歌うというか。それを録ったものなので、もしかしたら今までにない自分の声みたいなものが録れたかもしれないです。今までは1曲の中で映画みたいな流れで歌っていくというか、歌詞を表現するにあたってそんな歌い方をすることがあったんですけど、今回はそれを意識せずワーッと行く感じで録ったので、ちょっとガナる部分とか、新しい部分が出てきたかもしれないですね。

-「支配」の歌詞に関しては、まずサウンドから作ってそこに当てはめていく流れでした?

そうですね。一発目に頭に浮かんだのがヘビというか、絡め取るイメージが浮かんできて、そこから書いたんですけど。いつもは2、3日とか、早いと1日で歌詞って書けちゃうんですけど、新曲の内の3曲は、これでいいのかな......という感じで何回も書き直してましたね。

-その3曲は「支配」と、あとはどの曲なんです?

「My place」と「わたしの正体」ですね。今回のアルバムは今までと違う側面を見せたいというか、経験を得てこんなふうになったのをバンドとして提示したかったので、歌詞を書いているうちに、これでいいのか? もっといけるんじゃないか? ってところがちょっと出てきちゃって。歌詞を書き直すっていうのは初めてのことではあったんですけど、最終的には上手く収まったんじゃないかなって思ってます。

-お話に出た「My place」と「わたしの正体」は、ARISAさんご自身のことが強く出ている歌詞ですよね。

本当にそうですね。これまで自分の経験を書くことはあったんですけど、今自分が思っていることや、気持ちみたいなものを書く機会が少なかったんですよね。でも、「My place」に関しては......DOLL PARTSって、ジャンル分けされるとわりと難しい立ち位置にいる感覚があって。ただライヴをやっていくうちに、パフォーマンスとか楽曲もそうですけど、皆さんが、"グランジっぽい感じだね"とか"オルタナだね"とか言ってくださるようになって。「My place」のサウンドに関しては、今のDOLL PARTSはこうですよって、バンドとして上手く提示できた曲なんじゃないかなと感じているんですけど、そういう曲に対して、私が今思っていることを乗せたいと思ったんです。 出だしの"缶ビールのゴミの群れに"という歌詞も、自分はステージに立っているとき以外は結構ひっちゃかめっちゃかなやつだし(笑)、大した人間でもないんですけど、ステージに立っているときはめちゃくちゃ声を張って歌えるし、"この音、届け!"みたいな。そういう気持ちを素直に書けたので自分の中では特別な1曲になったなと思います。

-逆に、昔は素直に気持ちを出せなかったところもあったんですか?

まぁ、言っちゃったらあれなんですけど、ちょっとかっこつけて歌詞を書いてた部分はあるかもしれない(笑)。歌詞に対して汚い言葉を使いたくない気持ちが自分の中にあったので、さっき言ったみたいに映画的というか。展開があって面白いもの、最後まで読んでくれたら分かるものが好きだったので、あんまり自分のことを書く機会がなかったんです。最初の頃は自分の思想を書くことが多かったんですけど、いろんなことを経験させてもらえるようになってからは、ファンとか、人に対して曲を書けるようになって。そこからは歌詞の内容がちょっと変わってきたかもしれないですね。

-もう1曲、歌詞を何度も書き直したという「わたしの正体」は、とてつもなくストレートで、もう何も隠さずに言いますぐらいの感じで。

冒頭でもう分かりますもんね(笑)。そこで完結しちゃう。

-(笑)たしかにそれぐらいのパンチはあるし、分かりやすいというのも良くない言い方かもしれないんですけど。

曲のテーマに関してはずっとあったんです。書こうと思ったきっかけとしては、"ルイーズ・ブルジョワ展(:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ)"に行ったときに、それこそ冒頭で書いているような、女性が男性に対して思うことや感じていることを自分の中にインプットして、そこを全部曝け出したいなと思って。歌詞を書き直したのは、自分が伝えたいことをもうちょっと分かりやすく書けるんじゃないかなと思って、もっと具体的な形に書き直していったんですよね。だから、分かりやすいって言ってもらえたのはすごく嬉しくて。

-でも、まさか迷いながら書いていたとは思わなかったです。むしろ世の中ムカつく! って勢い良くそのまま書いたのかなと思っていたので。

それはめっちゃ嬉しい。ありがとうございます。狙った通りですね(笑)。結構アップテンポな曲だし、ライヴで盛り上がるような曲にはなっているんですけど、歌詞もちゃんと伝えたいなと思って、頭に残りやすいワードを考えながら書いてました。