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INTERVIEW

Japanese

広瀬大地

2021年07月号掲載

広瀬大地

インタビュアー:山口 智男

ギタリストとして参加してきたバンド活動を経て、19年に、シンガー・ソングライター/マルチ・インストゥルメンタリストとして、ソロ・キャリアをスタートさせた広瀬大地が2ndアルバム『Embarking』をリリースする。前作『One and Only』同様に、子供の頃から聴いていたファンクの影響を日本語のポップスとして、いかに表現するかというテーマに挑戦しながら、今回は時代の音を見据え、'80s色濃いポップ・アルバムに。作詞作曲のみならず、楽器の演奏もほぼすべて自らこなすなど、マルチな才能を持つ新進アーティストが自らのポップ哲学を語る。

-『Embarking』は、広瀬さんがきっとこういう音楽を聴いてきたんじゃないかということがなんとなく想像できる、飾らない作風にとても好感が持てますね。

ありがとうございます。好きなものを詰め込んだアルバムになっていると思います。

-そんな広瀬さんは音×AiRのギタリスト、Shout it Outのサポート・ギタリストを経験したのち、いったん音楽から離れたものの、音楽への情熱を捨てきれずに19年にソロとして活動を再開したわけですが。

18年ぐらいにまた音楽をやろうと思って、最初は作曲家になろうと考えたんですけど、1年くらい活動したときに"自分の声で届けるほうが面白そうだな"と思い始めて。もともと、ギタリストとしてバンドをやってきたので、自分の歌でというこだわりはそんなになかったんですけど、自分の好きな音楽を作りながら楽曲提供って形になると、"これ、自分で歌ったら面白くなりそう"ということが何度かあって、だったら自分で歌ってみようと思ったんです。

-ではソロのシンガー・ソングライターで、マルチ・プレイヤーで、自分で曲もトラックも作ってというスタイルは、自然の流れだったんですね。

昔からいろいろな楽器を演奏するのが好きだったんですよ。それもひとつの個性になるだろうなと思いました。

-バンドで、ということは全然考えなかったんですか?

これまでの経験からバンドよりもひとりでやるほうがうまくいくだろうって(笑)。協調性がないのかもしれないですね(笑)。

-8歳のとき、お兄さんが拾ってきたアコースティック・ギターを弾き始めたことが、楽器を始めたきっかけだったそうですね?

そうです。兄貴は全然興味を示さず、"これやるよ"って貰ったんですよ。弾けるようになったら面白いだろうなと思ってたら、大学生の頃ちょっとギターを弾いていた父親から、"「Summertime Blues」(Eddie Cochran)なら簡単だよ。(コードは)AとDとEしか出てこないから"って言われて、それだったらできるかもってやってみたら30分ぐらいで弾けたんです。それで楽しいってなっちゃったんですよ。

-その頃にはもう音楽は好きだったんですか?

そうですね。父親の影響だと思います。ライヴハウスに毎週のように行ったり、家でもCDを聴いたりしている父親だったんですよ。だから、自然と耳にしていました。

-広瀬さんがフェイバリットに挙げているEric ClaptonやLenny Kravitzは、お父さんの影響だったんですね。

Lenny Kravitzはもうちょっとあとで、最初はClapton(Eric Clapton)とTHE BEATLESでした。

-そのあと、エレキ・ギターも弾き始めたわけですね。

いつ弾き始めたのかはっきり覚えてないんですけど、兄貴が先に買ってもらったのかな。結局、兄貴も弾き始めたんですよ(笑)。で、僕も中学1年のときだったかな。自分のエレキを買ってもらいました。

-そこから徐々にバンド活動も始めていったわけですね。

中学校で出会ったメンバーと、そのあと音×AiRを始めるんですけど、休みの日に集まって、音を出してみたいなことをやり始めたんです。そのときはTHE BEATLESの曲をやってました。

-それから、年齢が上がるにつれ、聴く音楽の幅も広がっていったんでしょうか?

めちゃめちゃ広がりました。家に聴ききれないぐらいCDがあったので、それを漁ることももちろん、同世代の友達が聴いている音楽も聴くようになりましたね。

-その中で影響を受けた、あるいは記憶に残っているというアーティスト、バンドというと?

Clapton、THE BEATLESの後にLenny Kravitzが来るのかな。そこからファンクなものをいろいろ聴くようになりました。

-ギター以外の楽器はどんなきっかけで弾き始めたんでしょうか?

まずはベースなんですけど、兄貴と兄貴の友達と3ピースでやろうってことになったんですよ。そのバンドではスピッツの曲をやった記憶があるんですけど、兄貴が"俺がギターを弾くから、お前はベースな"って(笑)。そんなバンドあるあるなきっかけで弾き始めました。ドラムは、友達とスタジオで入るようになったとき、これもバンドあるあるだと思うんですけど、休憩のとき、ドラムの席に座るみたいな(笑)。そのうちにドラムを叩くのが楽しくなっちゃったんです。そのあと、バンドで曲を作るようになって、最初はみんなで作ってたんですけど、次第にDAWを使って作るようになっていったなかで、鍵盤を弾けたほうがいいよねとなってピアノを弾き始めました。15~6歳のときですね。

-広瀬さんの音楽からは80年代の洋楽の影響が窺えますが、それは子供の頃、聴いてきた音楽からのものなんですか?

それにはふたつあって、ひとつは昔からQuincy Jonesのサウンド、Michael Jackson、THE BROTHERS JOHNSONが好きだったからだと思います。ギターは"打倒Nile Rodgers(CHIC)"と思いながらカッティングを弾いているんですけど(笑)、もうひとつはやっぱり今の流行り......と言ってしまうと、流行に乗ったみたいに聞こえちゃうかもしれないけど、アートとポピュラリティのバランスが大事だと僕は考えていて。もちろん、Claptonみたいなギター・ソロを弾きたいんですけど、それを聴きたい人が少ないんだったら、それを今やるのは違うと思うんですよ。それよりも去年ぐらいから、'80sの流れはさらに大きなものになってきていると思うので――2020年だけを見ても、Dua Lipaとか、THE WEEKNDとか、Justin Bieberの『Justice』(2021年3月リリース)もそうでしたよね。そういうのを聴いていると、ある程度、そこにはいかないといけないんだろうって。

-その時代ごとに人々が聴きたがっている音を、いかに自分の音楽に落とし込むか。それも曲を作るうえでのテーマのひとつだ、と?

作りたいものを作っているだけではダメだと思うんですよ。単純に、いいものだったら売れるということではないと僕は考えています。商業ベースで考えるなら、いいものであって、且つ需要があるものじゃないと。やっぱり需要と供給ですから、需要のあるところに乗らないといけないという思いはあります。

-そのうえで広瀬さんが音楽を作るとき、ここだけは譲れない自分ならではの個性はなんだと考えていますか?

それで言ったらリズムになってくるのかな。日本という市場において、本当にポピュラリティを追求するんだったら、もっと歌謡曲の要素を取り入れるべきだろうし、もっとメロディアスなメロディにするべきだろうし。僕の音楽って繰り返しが多い。もっと展開して、表情豊かにするのもいいと思うんですけど、そこはあくまでも自分の好きな音楽ベースで行かないと。もともと、バンドをやっていたときにはもっとポピュラリティをって傾向はあって、売れるものを作らなきゃいけないと思っていたんですけど、それをやると子供の頃からずっとJ-POPを聴いてきました、J-POPで育ってきましたって人には、その要素では勝てないと思うんですよ。だったら、自分の好きな音楽の要素も入れていかないと。そういう意味では、やっぱり僕の個性はリズムに表れていると思います。

-たしかに繰り返しが多い曲の作り方は、展開が多い昨今の日本のポピュラー・ミュージックとはひと味違いますね。

あれはあれで美しいと思うんですけど、僕がそれをやっても勝てない気がする。自分が歌ウマじゃないっていうのもあると思います。最初にヴォーカルという選択をしなかった時点で、子供の頃からヴォーカルでいくぞって人と勝負しても勝てない。それなら自分の個性を生かさなきゃいけないだろうって。

-歌ウマじゃないとおっしゃいましたが、これみよがしじゃない等身大という印象の歌には、広瀬さんの人柄が伝わる魅力があると思います。ところで、今回アルバムに収録されている「Take It Easy」を、昨年6月にシングルとして配信リリースしていますが、そのときすでに今回のアルバムのことは視野に入れていたんでしょうか?

まったく視野に入っていなかったかというと、そんなことはなく、20年4月に1stアルバムの『One and Only』をリリースしたときには、すでに"次はどうするか?"という考えは頭の中にあって。「Take It Easy」を作ったのは、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった頃だったんですよ。そのあと、『One and Only』をリリースしたときが最初の緊急事態宣言期間で、CDショップも全部空いていないという(苦笑)。予定していたライヴももちろん中止になりました。実は、そのライヴに合わせて、東京に拠点を移そうと思ってたんですけど、それも断念して大阪で鬱屈としていたんです。そのなかで、今しか歌えないことを歌いたいと思って、アルバムのことをそんなに考えずに作ったのが「Take It Easy」で。あのときというか、今もですけど、政府と飲食店みたいにお互いがお互いの正義を持って、求めているだけなのに、お互いに叩き合っている。そういう状況を歌にしたかったんです。

-"突然現れた 見たことない/強大な敵を前に僕ら仲間割れ"と歌っていますね。

で、アルバムの収録曲でいうと、1曲目の「Embarking」がその次にできたんですよ。そのときこのアルバムの構成が見えたような気がして。"あぁ、そうか、そこからの旅立ちなのか。前のアルバムから次の世界への、旅立ちを歌わなきゃいけないのか"みたいなことを思いました。だから、「Take It Easy」の時点でそんなには見えてないんですけど、意識してなくはなかったかな。

-そうか。「Embarking」からスタートしているんですね。

オープニングのシンセも含め、'80sの方向でいこうかなとサウンド・イメージも「Embarking」で結構固まって。それが去年の夏ぐらいですね。

-アルバムの方向性が決まってから、「Embarking」を作ったのかなと思ったら、逆だったんですね。

「Embarking」はピアノを弾きながら1分ぐらいでできたものを、ほぼそのまま使っているんです。この曲が連れていってくれたみたいなところは結構ありますね。